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(フィーリア編)夜逃げする勇者一行1

俺は、宿屋への帰り道を辿っていた。

あの大会でなぜか優勝してしまった俺は表彰式を受けた後、逃げるようにしてあの場をさった。

そう言えば飛ばしてしまった、セシルとブラッドがどうなったか分からないのだが

大丈夫なのだろうか。

そう、思ったとき自分の視界が陰った。

太陽が雲にでも隠れたかと上を見上げると……


「セシルのスペシャルボディプレス!」

「あ……? ガフッ」


体が地面に押し倒された、頭打たなかったのは不幸中の幸いかな?

柔らかい人肌が離れて、視界が回復するとセシルのむくれた顔で俺にまたがっていた。

ほっぺた膨らませて、ハムスターみたいだ。


「セイヤくん!」

「なに?」

「むむ、なんか返事がゆるいかも~」

「いはひっへ」


俺が返事をするとセシルにイキナリほっぺた掴んでぎ~ッと引っ張られる。

……地味に痛い。


「自分が吹き飛んだのは警戒がゆるかったからだろう、あたるのは懸命ではないと思うが……」

「ふらっほ?」


半分以上セシルに遮られた視界の中にブラッドが映った。

二人とも、取り敢えずは無事だったようだな、良かった良かった。


「むー、それとこれはべーつー。セイヤくんに動かれるとこっちは探すの面倒になるのにそれでも動いたセイヤくんへの罰なの」

「そうか……」


ちょっと、そこであっさり引いちゃうのブラッド君!

地味に痛いから、救出を僕は望んでいるんのですが……

しばらく、セシルは俺の頬を好き勝手に弄ると無理やりに立ち上がらせた。

相変わらず頬は引っ張られたままだけど。


「という事で、それでセイヤくん、今日の内にここから逃げ出す事にしたから。早く荷物まとめてね~」

「へっ、いふから、ほんなほとひなっはんは?」

「セイヤくんふわふわ言わずにハッキリ喋ってよ。僕、暗号文の解読能力とかないよ?」


眉ひそめて不機嫌そうな顔をするセシルに今、俺の頬を引っ張っている手を指差す。

半分以上。て言うか全部お前のせいだろと言う心情を表現するように出来るだけ動きを大きくして。

動くたびに頬がジンジンしたけど。


「あぁ、そういえば頬つまんでたね~。ごめんごめん」

「ジンジンするなぁ。でセシルなんで今日逃げる事になったんだ」


ジンジンする頬をさすりながら、聞くとあぁとセシルが口を開いた。


「今更だけど~、あんなに派手に暴れるのって結構問題なんだよね~。だから、面倒ごとが起きないうちにバックレル。分かったー?」

「本当に今更な理由だけど分かった」

「なら、さっさと帰って逃げる準備しよっか」


セシルは俺の手を掴んで走り出す。

ブラッドも無言でついてくる。


○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●


「なんで、真夜中に逃げ出さなきゃいけないんだよ……」

「セイヤくんがオネンネしちゃったからでしょ」

「なんか、引っ掛かる良いかただな……」


セイヤくんにじっとりした視線を向けられたけど、とり合えずそれは無視。

気にしたってしょうがないし、言っちゃったものは元には戻せないし。

そこで一応ついてきているとは思うが後ろを振り返った。

少し距離があったが魔王さんはちゃんとついてきている。

足音も気配も消しているから、たまに居るか居ないか分からなくなっちゃうんだよね魔王さん。たまにこうやって確認しないと。


「て言うかここ入ってくる時の入り口跳ね橋だったよな? あげられてないか?」

「あげられてるだろうね~」

「どうすんだよ?」

「飛んでいけば良いし~」

「あぁ、そうか、フリィを呼び出すんだな?」

「うんそう……」


足を踏み出したとき、カチッと何かがはずれるような音が聞こえ、とっさにセイヤくんの掴んで飛び退く。

瞬間、轟音と共に空間が焼かれ暴力的な風に襲われた。

結界をはり、自分とセイヤくんを保護する。

何秒もしないうちに炎は払われる、恐らく魔王さんが払ったのだろうと判断した。

背中に魔王さんの高圧の魔力を感じた、自分も周囲に集中して戦闘が行えるように準備する。


「なっ、なぁセシル何が起こってるんだ?」

「うん? 引っ掛かると蒸発してしまうような危険な罠が仕掛けられてたかな?」


多少驚いてはいるようだが混乱していないセイヤくんに感心しつつそう答える。

身の上話を聞いたとき、前の世界では一般人だったと聞いていたしね。


「それって……」


ちゃんと頭も働いている事にも感心しながら、セイヤくんが言わんとしていることを肯定する。


「当たり前だけど……」


音もなく前方に二つの影が舞い降りた。

二人だったかと以外に思う。


「命を狙われてるって事かな?」


セイヤくんの顔が翳る。

想像するのと実際に言われるのとでは重さが違うのって本当なんだよなと再認識する。


「うふふ、一日ぶりねぇ、聖将様。煉獄の炎はどうだったかしら? 気に入ってもらえた?」


影の姿があらわになった、やはり一人は一昨日の蛇女とあともう一人は今日初めて会う男。

あれだけの轟音が響いたのに誰も様子を見に来ない事から、また人払いの何かを使っているのかと予測する。


「随分派手だったけど。発動するまでの時間を縮めないとだめかも」

「ですって、今日から試行錯誤しないとぉ」


後ろにいた男に後ろを向いて話しかける。

相手に背中を向けるなんてなめてるのかと思ったがしっかり精神を圧迫してきた。

さっと、セイヤくんを見るがいたって平気そうだ。

相手の二人に大量のつるぎが襲い掛かる。

恐らく魔王さんの攻撃だと思う、セイヤくんも驚いているようだし。


「ふふ、だめよぉ~、それじゃ刺さらないわ」

「止めているのは俺だがな」


確かにつるぎは全て相手には届かなかった。

なにか、黒い霧のようなものに止められている。

それを見て闇の使い手かと判断する。

闇属性の特徴は静かで破壊的な事。

なるほど、殺しには向いている。

つるぎが闇に取り込まれた。


「まぁ、相手も宴を望んでいるようだし始めましょうか……」


無数の闇の刃と共に女がナイフを閃かせながら突っ込んでくる。

闇の刃が光の粒子となって消えた。

セイヤくんがやってくれたのかな?

それでも、女は気にせず真っ直ぐに僕に向かってくる。

狙いは僕、限定という事だろうか。

それなら、少しはやりやすいかも。

1m手前で女が体を沈み込ませる。

そして、飛び掛かる、月光に閃くナイフに自分の顔が映った。

召喚んだ。

鋭い金属音が空気を細かく振るわせる。


「あらぁ、防がれちゃったぁ」


僕を切り裂こうとしたナイフは、目の前に現われた精霊レイに防がれている。

横合いから召喚獣ウルの鋭利な爪が引き裂く。

爪は空を斬り、女はナイフから手を離して百歩ほど後ろに下がっていた。


「でも、不思議ねぇ、なんで貴方の守護者達は私の影響を受けてないのかしら?」


理由は簡単。召喚された瞬間に精神へ干渉を受けるのなら事前に守護の加護を与えておけば良いだけ。

ちょっと準備が必要だから、一昨日は出来なかったけど。

だけど。


「教えるつもりありません」


教える気ないんだけど。

そう言っても女は気味悪く笑っている。

見た目『だけ』(ここ重要)は悪くないのになぁ。

もったいない。


「じゃあ、もう一回行くわよぉ」


新たにナイフを取り出し、斬りかかって来る。

やることがパターンぽい事に違和感を覚えつつもウルとレイに応戦をしてもらう。

レイ達にぶつかるとすっと女がまた身を引く。

追撃を指示すると、ふとカチッと言う音が耳に届いた。

この音って……


「っ!? 下がっ――」



次でフィーリアでの事は決着がつくと思います。

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