諸田と霜多2
諸田「――ッ、何で、お前が」
確かに霜多の心臓を切り裂いたはずだ。
霜多「今、お前が切り裂こうとしたのは工藤の心臓だ。しかし、今一つ届かなかったらしい」
どういう事だ。工藤は先に始末したはず。まさか――
霜多「そうだ。俺には心臓が二つあった。俺生来のものと、『工藤』に託されたものが」
(融合体、いや違う。)
霜多の左腕が奴の胸を突き破る。取り出した『心臓』の奥には真新しい心臓が脈打っていた。
取り出された臓物が枯れかけた刃をつたい、赤黒く染め上げる。
(――『黒刃』か)
黒い破片が月光を照り返しながら宙を舞う。
鋭い眼差しと切先がにこちらに迫る。
重い一太刀が全身に響き渡る。
(――クソッ、が)
一瞬の猛攻が止む。
月に照らされ、その表情ははっきりと見えた。
霜多「気づいているんだろ。お前の『黒刃』に限界が迫っていることを」
再び『黒刃』と『黒刃』が衝突する。
閃光が空を穿つ。
霜多「工藤が仕掛けたトリックは二つあった。一つは『心臓』。もう一つは――」
「心臓の代わりに工藤を動かしていた『機械仕掛け』だ」
黒刃は「使い込まれた」ものの方が、脆い。
機会仕掛けは、その耐久限界を加速させる。
霜多は、幾度となく大切な人間を切り裂いてきた、その禍々しい『黒刃』を見据える。。
芯を捉えた。
夜空に溶け込むほどに純黒であった刃に赤い亀裂が入る。
霜多「工藤の作戦勝ちだ。ざあまみな」
硝子細工の様な破片と「諸田だったもの」が、闇に弾け飛んだ。
なんやて工藤




