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妄想の帝国

妄想の帝国 その99 国際博覧会大後片付け

作者: 天城冴

国際博覧会を強行開催したニホン国オーサカン地域、そのあとには延々続くお片付けがまっていた…

「も、もう駄目だああ、ハシゲン、マツイダのばかあああ」

「や、やばい府知事が見学に来るんだぞ!そんなことを叫ぶなよ、バンバさん。しかし、ま、まだ続くのか、これ」

胡麻塩頭の声の大きい壮年男性をなだめる、若い男性。

ここは、ニホン国のオーサカン市の地域の埋め立て地。広大なその土地にはいくつかの巨大建物がポツン、ポツンと立っていた。緩やかな楕円形ドームで窓がほとんどないものや、本体に対し不相応に大きな装飾のついた屋根がついたバランスが悪いもの、中でも木製リングといわれていたものは、ところどころ、木材が崩れ落ちている。ほとんどの建物が手入れがされておらず、壁がはがれ、細かい装飾が抜け落ちていた。木製リングはいまや、不格好なストーンヘンジのようだ。ただし、下は草原ではなく、干からびた埋め立て地、あちこちにゴミが散乱している。

 先ほどの二人だけでなく、大勢の男女が散らばって、ゴミやがれきを集めて運んでいる。だが、皆手つきがおぼつかず、こういった土木作業に慣れていないようだった。中にはフラフラと倒れ掛かるものも出ていた。

 そんな彼らの様子を離れてみていたのは

「こ、ここを全部片づけなければいけないなんて、い、いくらオーサカンの府民、市民をかき集めたって無理だろう」

府知事ヨシイダとその秘書。二人ともヘルメットをかぶっているが、作業している者たちとは違いスーツ姿。しかし、作業者と同様、げっそりとやつれた様子である。

「し、しかし府知事、それが外国カジノ資本・ドランプが出した条件ですので。ここをすっきり、さっぱり奇麗にしないとカジノができないと」

「そ、それはわかるが、こ、こんなゴミの山を」

「その、府知事、それは前から言われていたことです、オーサカン国際博覧会は絶対

大赤字、いや、開催されるかも危ういってイギリスの賭けの対象になってましたし」

「そりゃ、いろいろ言ってた奴らもいたが、その経済効果もあるし、にゅ、入場券はなんとか売れたし…」

「売れたのではなく、企業献金代わりに引き取った企業があっただけで。社員に買い取らせようとして、労働基準監督署に訴えられたり、SNSで公表されたり、果ては転売が続出。労働組合で無理やり福利厚生として配ろうとしても断れる始末でして」

「それは知っているが、その府市民の子供たちを動員、いや招待したのが」

「記録的猛暑が続き、埋め立て地の気温は40度近くになったため、直前中止が続出。中には、それが切っ掛けで、オーサカンから引っ越したケースも。オーサカン大脱出とか、SNSのトレンドになる始末でしたし」

「だ、大学生も呼びかけたろ、ボランティアが主だが、普通に入場券を買って入ったものは」

「ごく少数です。ボランティアというか、大学側に呼びかけたのが、さらに不味かったです。個人の意思は、学問とは関係ないことを強制するとはと、国際人権団体に訴えられ、その府立大学ですら、取り下げました。何しろ外国大学、研究機関からも大クレーム、そんな大学からは留学どころか、研究者の交流、共同研究なども断ると事実上の国際的研究からの締め出しになるところでしたので。私立の大学は拠点を他府県に移すところも」

「し、しかし、ガケイグループの科学大学をチバン県から移してもらっただろ、それで」

「あの故アベノ総理の肝いりのあれですが、赤字続きで効率にしてくれってチバン県に泣きついていたそうで。オーサカンに来るのに、オーサカン市に無理やりに市立にするようにしたせいで、赤字がさらに増えました。その、学生の質もいまいちで、ボランティアでも、受付やら何やらの仕事を教えるのに職員の手がかかって、余計な手間が増えたと正規職員からは大不評。さらに博覧会の注意書きがわからなかったのか、パビリオンの展示物を触ったり、持ち出そうとしたりで、企業や外国の出店国から相当クレームがつきまして、中には損害賠償も」

「そ、それじゃあ、かえって、大損じゃないか」

「はあ、ただでさえ、予算オーバー。府民一人当たりの借金がさらに増大。各種税金、保険料も上がったせいで、その」

「ああ、わかってる、オーサカンの府市民が相当流出したといいたのだろう。残ったのは引っ越す費用もないものか、わがオーサカン・メイジの党の関係者だけだといいたのだろう」

「ちょっと、違います。金のないものはマイマイナンバーカードを売って、国外に逃げ出したものも、カードさえあればニホン国オーサカ府民になれるらしく」

「そ、そんな馬鹿な!…あのカード偽造し放題のトンデモだったが、そんな簡単に売り買い、第一写真は」

「写真だけ偽造すればいいので、本格的に偽造より楽だそうです。その、この問題は国会でも取り上げられ、そのジコウ党のゴウノ議員一族が完全に排除される切っ掛け…」

「そういえば、そうだった。博覧会の後始末で気が付かなかった、他にもいろいろ」

「はあ、アンダチ議員やらオドキダ議員やらの国会での不適切質問のしりぬぐいやらで、まあ、アンダチさんらは責任とってここで働いてますけど。オドキダさんもほぼ自動運転のトラックを動かしてますから」

「そうなんだよ、わがメイジの党議員や秘書や、関係者一同、家族までここに駆り出されているんだ。わ、私も妻にお願いしたら、罵倒され離婚されそうに」

「ご安心ください、知事。奥様の情報はSNSそのほかに筒抜け、だいたい奥様が長年裏で知事を操りもとい助言していたことは周知の事実、今更逃げるのか、お前らもうまい汁吸ったくせに、姻族含めても責任とれとご実家まで見張られている始末。離婚したくても、無理です。だいたい言い出しっぺの元代表ハシゲンさんの娘の彼氏まで特定されて駆り出されてますから」

「俺たちには逃げ道はないということか。…い、いや、だいたい開催から後処理までにでた赤字はニホン国民も負担するはずでは」

「ですから、ジコウ党、メイジの党ともに大打撃を受けてしまったから、無理です。それに北陸大地震の復興が大博覧会を無理に強行したおかげで遅れたほか、いろいろ他県、特に近県の不興を買いまくっていますから、博覧会の借金を肩代わりをさせようものならその、今以上の大打撃です。なにしろただでさえ、異常気象と円安で食料他の価格が上がっているのに、オーサカンへ運ばれる食糧他必需品がすべて高くなっているんです、安いと売ってもらえないんですよ」

「そ、そこをなんとか、府議会とか」

「府議会は正常に機能していないことはおわかりでしょう。だいたいマイマイナンバーカードの不正売買のおかげで、誰が本当の府民かわからず、選挙も難しいんです」

「くうう、とんでもないことばかりだ、一体どうしろというんだ!」

「その、いっそオーサカンを買い取ってもらうというのは。隣国そのほか、もちろんカジノの大元ドランプからも申し出があります。まあ、瓦礫の山をある程度片付けですが、少なくともこれが終われば、元に戻れる可能性も」

「う。うーん、ほ、他にほうほうがいないのあk」

(フフフ、さすがは見掛け倒し、メディアだのみのバカ知事だ。秘書が変わったこともわかっていないようだな、周りのことなんてほとんど奴隷としか考えていないんだろう。メイジの党をヨイショするしか能のないメディアも寄生虫モドキのヨジモト芸人らも我が組織が抑え、すでにマイマイナンバーカードでの入れ替わりは済んでいる。ニホン国乗っ取りがこうも簡単に行くとは。オーサカン府民いやメイジの信者がアホで助かった)

ニセ秘書の勧めに、思わずうなずきかける府知事。その後ろには以前の威勢のよさはどへやら、疲労困憊メイジの党の関係者らがのろのろと瓦礫の山を片付けている。


まあ、なんとか会を開いて起死回生とかの夢はほどほどに。今更、そんなことしてもというのと、花の博覧会のために桜を切るという本末転倒みたいなのは、どうかと思いますよねえ

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