表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
98/169

宴会に現れた赤鬼 1

「お~……、これはすごい」


 結奈に案内され宴会の会場になっている大部屋に入って僕が見た光景は、部屋の左右に均等に大きな机が幾つも横にくっつけられて並べられたいわゆる宴会スタイルになっており獅子蕪木組の組員の人たちが先に座って待っていて。僕たちの顔を見るなり、笑顔でむかえてくれている。


 そんな豪華な料理の数々を見て僕は驚き、後に入ってきた凛が目の前の料理に釘付けになり、口元に少しよだれを垂らしてそわそわしている。


「凛、落ち着くッス。すぐに食べられるんだから我慢するッス」


 そんな凛を見ていた千香が凛の腕を掴んで落ち着かせる。


「千香に言われなくても大丈夫なの~。それぐらい我慢できるの~」


 凛が千香にそう言っているが、未だに料理を見つめていて説得力に欠けていた。僕はそんな凛を見て笑っていると、辰則さんが呼びかけてきた。


「お~い、碧の坊主たちはこっちに座ってくれ」


 部屋の奥に一つだけある大きな机に腰を下ろして座っていた辰則さんが、僕を手招きをして呼んでいたので、僕たちは辰則さんがいる席に座ったのだが、案内していた結奈がいないことに気付き、辰則さんに尋ねると、結奈はまだ最後の準備があるようで先に始めて欲しいと言われたそうだ。こうして、空ちゃんたちも僕の近くの席に腰を下ろし、辰則さんが僕たち全員が席に座ったことを確認すると笑いながら自分の酒の入ったグラスを掲げて。


「がっはっはっはっ! では、これより獅子蕪木組を救ってくれた碧の坊主たちに感謝を祝してカンパーイ」


「「「カンパーイ」」」


 こうして辰則さん音頭で宴会が始まり、僕たちは目の前にある料理に舌鼓を打ちつつ、獅子蕪木組の組員の人たちの談笑をBGMにしながら宴会を楽しむのであった。



 宴会が始まり数十分が経過したころ。部屋の入り口の襖が開き、夕焼けのような赤い色の着物を着た結奈が姿を現した。


「アニキ、みんな、お待たせしました。着替えに手間取っちゃって」


 その結奈を見た組員の人たちは口笛を吹いたり『お嬢! 似合ってますよ』っと野次が飛び交って盛り上がっている中、僕たちの前に来て、結奈は着物の両端の裾を持って広げて僕たちに見せる。


「えへへ、どうですかアニキ? に、似合ってますか?」


 結奈は手で髪の毛をいじりながら恥ずかしそうに僕に尋ねた。それを見ていた辰則さんはニヤニヤしながら、机の下から足を延ばして僕の方を軽く突き、結奈を褒めるように催促している。そして、いつの間にか空ちゃんたちや組員の人たちが、僕と結奈のために静かにしており、全員が注目する中で、僕は立ち上がり、結奈と向かい合った。


「うん、結奈似合ってるよ。綺麗な着物姿だね」


「そ、そうですか。アニキにそう言ってもらえると、勇気を出して着物を着たかいがあったってもんです。で、では食べましょうか」


 僕に褒められて嬉しそうな結奈は、恥ずかしさを誤魔化すためか、僕の隣に空いていた席に座り、いそいそと食事を食べ始めた。その様子に組員たちから『アニキに褒められてよかったですね、お嬢!』と野次が飛んできた。そんな組員たちに対して、僕の隣から結奈が小さな声で「あいつら、後で覚えてろよ……」と呟いたのは内緒だ。


 そうして、楽しい宴会の料理を食べ終わって満足した僕らに、辰則さんが笑いながら話を切り出した。


「……さて、飯も食ったことだし、碧の坊主たちにそろそろわしら獅子蕪木組を救ってくれたお礼の話をしないとな……こんなでけぇ恩が出来ちまったんだ。碧の坊主には結菜を「親父!! その話はあたしがアニキに後で話すって言っただろうが!! うるせぇ、結奈! おめぇがいつまでたっても話さねぇからわしが背中を押してやろうとしただけだろうが!」


 辰則さんが僕に何かを言いかけたとき、隣に座っていた結奈が拳で辰則さんの顔を思いっきり殴り、言い合いが始まった。すると、突然二人の背後に黒いスケルトンが現れて、二人の頭上に拳骨を落とすと。頭の中に女性の声が聞こえて来た。


『おいこら子孫ども!! なに命の恩人の前で無様な姿を晒してるんだい!! みっともねぇぞ!!』


 突然、現れた黒いスケルトンに僕たちは驚いていると。黒いスケルトンが僕たちに謝罪してきた。


『悪いなお客人。あたしの子孫が騒がしくってよ。今大人しくさせるからよ』


 黒いスケルトンを見て、ただならぬ強者のオーラを感じた僕は、失礼のないように恐る恐る尋ねた。


「……いや、別に気にしていませんけど、貴方は誰なんでしょうか?」


『……あたしか、あたしわな』


 黒いスケルトンが僕にそう言うと、いきなり黒い炎が黒いスケルトンを全身を包み込み、やがて炎が止むと、結奈の容姿に似た大人の女性が姿を現した。


『あたしの名前は獅子蕪木梅花。かつて戦国の世に『赤鬼』と恐れられた女さ』


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ