それぞれのお買い物 2
二つ目のグループは空ちゃん、凛、結奈の三人で、始めは結奈と凛が僕について来ようとしていたが。
「結菜お姉さま、凛お姉さま、ちょっと、こっちに来ていただいてもいいですか?」
僕と少し距離を取った空ちゃんが凛と結奈を手招きしながら呼んでいる。
「空ちゃん、どうしたの~?」
「ん? どうしたんです?」
「私からお姉さま方お二人に提案があるのですが……」
そう言って、空ちゃんが二人を呼んで僕に聞こえないように耳元で何かを囁く。……すると、次第に二人の表情は段々真剣な顔になっていき話を聞いた後、凛と結奈はお互いの顔を見て頷き、何かを決心していたようだ。
「それじゃあ、お姉さま方は私について来ていただけますね」
「勿論ついて行くの~」
「……アニキについて行きたい気持ちもありますが、あたしは空さんに付いて行きます。あんな話を聞いたらなおさら」
「よかった~。お二人が私の話に賛同してくれて。私は嬉しいです。」
空ちゃんは僕に視線を向けてニヤリと笑みを浮かべる。僕はそんな空ちゃんの笑みを見て少し悪寒がした。
「にししっ、それじゃあ、碧お兄ちゃんまた後でね。行きましょうか、お姉さま方」
(……空ちゃん、絶対に何か企んでいるよ)
僕はそんな事を思いながらジーと空ちゃんを見つめながら何を企んでいるのか疑っていると、結奈が楽しそうに笑いながら僕に近寄って来る。
「アニキ、ちょっと行ってきます! 終わったらすぐにそちらに行きますから! ほら、早く行きましょうよ」
「ん! 早く行かないと無くなっちゃうの~」
「ちょっと、慌てないでよくださいよ、お姉さま方。アレは直ぐに無くなりませんから落ち着いて~」
凛と結奈の二人が空ちゃんのそれぞれの両手を掴んで慌ただしく連れていかれ、残った僕と千香はそんな三人の様子を見て可笑しそうに小さく笑った。
僕は楽しそうにはしゃいでいる結奈を見て呟く。
「……よかった。結奈をデパートに誘って、とても楽しそうだ」
「そうッスね~、結奈ちんが楽しそうで。碧君、結奈ちんを誘ってよかったッスね」
千香が僕の隣に立ち、遠くに見えている三人の後姿を見ながらポケットから携帯を取り出し、はしゃいでいる後姿の三人の写真を撮りながら僕に話す。
「うん、結奈が楽しそうで良かったんだけど……。空ちゃんがニヤついて何か企んでいるからそれが気になって……」
「大丈夫ッスよ、私もここに来る途中で空ちゃんから話を聞いたけど、碧っちを喜ばせようとしてるだけッスから安心するッス。それで? 碧君は何を買いに来たッスか?」
残された僕と千香の三つ目のグループは、僕の背中には未だに少しずつ大きくなっていくハーピィーの卵を背中に背負っており、ゆっくりと歩きながら目的の商品がある階に行くためにエレベーターに乗り込み、僕は目的の商品が売っている階のエレベーターボタンを押す。
千香はみんなとデパートに向かっている途中で空ちゃんから誘いを受けていたが、ハーピィーの卵を背負っている僕が心配で誘いを断ったようだ。
「今日買うのはね~。これだよ」
千香に尋ねられた僕は、ポケットに綺麗に折り畳んで仕舞っていたチラシを千香に見えるように広げて見せ、僕はチラシの隅に小さく載っている商品に指を指す。すると、千香はチラシを覗き込み、目的の商品を見た千香が意外な表情をして僕に話す。
「ハンモックッスか? 碧っちの事だからてっきり家事関係の物だと思ったッスけど……」
「昔、小学生の時に見たドラマで、ハンモックに寝ながら本を読むシーンを見た時から欲しいと思っていたんだ。けど、そんなお金の余裕は無かったし、冒険者学校に入る為にレベルを上げることに執着して忘れていたんだけど、このチラシの載っているハンモックを見て、そのことを思い出して買おうと思ったんだ」
「そうなんっすね……あれ? 碧っち、ハンモックを買うだけなら行くときに言っていた、早く行かないと無くなる商品って何なんッスか?」
「それはね~、着いたみたいだ」
千香が僕に尋ねるている時にエレベーターが目的の階に到着して扉が開き、僕たちはエレベーターから降りると、エレベーター近くの広場で僕が今日楽しみにしていた販売イベントが開催されていた、それは……。
「一攫千金!宝石チャレンジ? 碧っち、この大量にある石ころの中から宝石を見つけるんッスか?」
千香が販売台に積まれている様々な大きさの石から小さな石を掴んで眺めながら僕に話す。
「そうだよ。宝石が欲しいわけじゃないけど、チラシを見てたら挑戦してみたくなっちゃって。一個千円だし三個くらい買ってみようかなって」
僕は千香にそう言って周囲を見渡して見てみると。石が積まれた販売台は全部で六台あり、色んな年代の人々が悩みながら石を手に取って吟味している。すると、ちょうど一人の大学生くらいの男性が大量の石を購入しており、販売台の近くにある石を切って宝石が入っているかの確認をしてくれる専門のスタッフに石を渡して、スタッフが専門の機材で渡された石を次々と石を二つに割って確認していくと、スタッフが台に置いてあるハンドルベルを振って盛大に祝福する。
「お兄さんおめでとう! ルビーが三つ入っていたよ」
「よっしゃーーー!! 買ってよかったぜ!!」
男性はガッツポーズを決めて嬉しそうに叫んでいて、それを見ていた周囲の人々が我先に石を選び始める。
「……さて、僕も石を選びますか」
「面白そうだから、私も一つだけ買ってみるッス」
僕は近くの販売台に行き石を選び始めると、千香も一緒になって石を選び始めた。
「ん~、これにしようかな」
「私はこれにするッス。これを選べと私の女の勘が囁いているッス」
僕は野球ボールサイズの大きさの石を三つ選んで、千香はピンポン玉サイズの石を一つだけ選び石を購入して専門のスタッフに石を割って中身を確認してもらうと、スタッフがハンドベルを鳴らして僕たちを祝う。
「お~!! すごいね、お二人さん!! 購入した全部に宝石が入っていたよ。まずは石を三つ購入してくれたお客様は小さいルビー二つにトパーズが一つだ! そして、凄いのは一つだけ買ったお客様だ! 何と! 小さいがダイヤモンドが入っていたよ。今日一番の大当たりだ! おめでとう!」
「よかったね、千香。ダイヤモンドだって、千香?」
「…………」
まさか、自分が買った石からダイヤモンドが出てくるとは思わず、千香は口を開けて放心していた。