それぞれのお買い物 1
僕たちは、空ちゃんたちと皆でデパートに買い物に出かけて、いざ、目的のデパートに到着すると、三つのグループに分かれて、別々に行動することに。
まず、一つ目のグループはルト、イクス、翼ちゃんの三人と保護者枠の雛の四人で、チラシに大々的に載っていた『期間限定 懐かしの駄菓子フェア』に行きたいそうなんで、僕は奮発して多めのお小遣いを渡すことにした。いつも家のお手伝いをしてくれるルトたちにちょうどいい機会だ。
「……母さん、お菓子を買いに行くだけなのに一万円もいらないよ」
僕から一万円を受け取ったルトが、もらった一万円札を見て困惑して僕に突き返そうとしてくるが、僕は手で制して止める。
「お菓子のお金だけじゃないよ、ルト。せっかくデパートまで買い物に来たんだから、残ったお金は三人で好きなものを買っていいから」
「ありがとう、母さん! イクス、翼ちゃん、母さんがお菓子を買った残りのお金で好きなもの買っていいって」
ルトの話を聞いたイクスと翼ちゃんの二人は、手を上げて喜びながら僕にお礼を言ってきた。
「やった! 母、ありがとう! 何がいいかな~?」
「碧お兄ちゃん、ありがとう! 翼はみんなで遊べるボードゲームがいいと思う」
イクスと翼ちゃんは早速何を買うか相談しているが、ルトが二人の話を遮って中断させる。
「……イクス、翼ちゃん、二人ともまずはお菓子を買いに行こうよ。何を買うかはその後考えよう。ほら、行こ。母さん、ちょっと行ってくるね」
ルトがイクスと翼ちゃんの二人を連れて目的の場所に向けて歩いていく背中を見ながら僕は思う。
ルトがまだ進化する前だったら、今のイクスと翼ちゃんのように話し出すだろうけど、進化して精神も成長したルトは周囲の人から見れば二人のお姉ちゃんのようだ。ルトが進化する前に僕を呼んでいた時の『おかあちゃん』というセリフが懐かしく思える。
僕がそんな風に一瞬物思いにふけっていると、雛がポンッと軽く僕の肩を叩きながら隣に立ち、笑みを浮かべて話す。
「ふふっ、ああして見ていると、ルトはもうすっかり二人のお姉ちゃんね。それじゃあ碧君、私は三人について行くわ。三人だけでも大丈夫だろうけど、念のためにね」
雛は僕にそう言って手を後ろに組みながら三人の後について行った。