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吸血毒ダニの事件後の次の日の昼下がり

吸血毒ダニの事件を解決した次の日の昼下がり、僕はソファーに座り、太ももでハーピィーの卵を支えながら、久しぶりにステータスカードを確認しようとしていた。


イクスが図書館に行きたいと言ったので、僕も行こうとしたが、皆に念のため家で安静にするようにと止められてしまった。そして、僕に家事をせずにのんびりして欲しいと言われ、見張り役の空ちゃんを残して行ってしまった。手持ち無沙汰になった僕は、この機会に自分のステータスを確認しようと思ったのだ。


「ふ~、さて、ステータスを確認しようか」


「あ、碧お兄ちゃん、ステータスを確認するの? 私も見たい!」


僕がポケットからステータスカードを取り出して確認しようとすると、それを見ていた空ちゃんが僕に近づいて、ソファーの隣に座った。


そして僕は空ちゃんと一緒にステータスカードを確認してみると。


灰城碧 男


レベル 28


職業  女騎士 魔物女王 聖女 見習い魔女


スキル 甲冑召喚 聖剣召喚 スラッシュ 魔物化 

    眷属作成(スライム作成可能) ヒール ハイヒール

    浄化 結界 ファイヤーボール サンダーボール


称号  男の娘 スライム殺し 耐え忍ぶもの 魔物女王の卵 

    聖女 コスプレ冒険者 保母さん


職業ポイント 58pt



職業 見習い魔女 初級魔法系統のスキルが獲得できる。


見習い魔女は、入学試験の玲次との戦いの最中に、僕に帰ってきた力だ。玲次が最初に『魔法剣士』だったのは、この魔法を扱う僕の職業が偶然にも玲次の『剣士』と奇跡的にかみ合って、『魔法剣士』となっていたからのようだ。


称号 


コスプレ冒険者 多くの人々に認知された証、名前を覚えられやすくなる。


保母さん    子供と積極的に関わり子供たちに慕われた証、子供に物事を教えた時、指導した子供の物覚えが良くなる。



「……はは、コスプレ冒険者。とうとう称号がついちゃった。しかも、効果が名前を覚えられやすくなるだけだって……」


僕は手で顔を隠し顔を上に向けて仰いでいると、空ちゃんが僕に止めを刺す。


「まぁ、碧お兄ちゃんは甲冑をつけて戦ったり、魔物にも変身できるし……否定できないね」


「ぐっ!? 僕はもっと別な呼ばれ方がいいよ」


「例えば?」


空ちゃんに尋ねられて、必死に答えを出す僕。


「……そうだね。『白銀の騎士』とか」


「え~、碧お兄ちゃんにそんなカッコイイ異名は似合わないよ。せめて『妖精騎士』だったら似合いそうだけど、ほら、碧お兄ちゃん背が小さくて可愛いし、それに、見た目がお人形さんみたいだし」


空ちゃんの提案に、僕は目を閉じて周りから妖精騎士と呼ばれる自分を想像する。


(……ん? 妖精騎士、ちょっといいかも、って、いかんいかん)


僕の脳裏に一瞬電流が走り、空ちゃんが僕を持ち上げて気分を良くさせ、僕にいろんなコスプレをさせられる未来が見えるため、顔を横に振って否定する。


すると、僕の反応を見ていた空ちゃんから小さな舌打ちが聞こえる。


「ちっ……。感づかれちゃったか。いいじゃん、ちょっとくらい私の用意した服を着てくれても」


(よ、良かった~、気が付いて、もう少しで餌食になるところだった)


僕は危機を脱してホッとすると再び自分のステータスを確認していく。


「職業ポイントが五八ポイントか……、なんでこんなに」


僕が首をひねって考えていると、空ちゃんが何か思い出したように手を叩く。


「あ~、そうだった。忘れるところだったよ。碧お兄ちゃん、デパートで退治した冒険者いたよね?」


「え~と。確か、豊川冒険者組合所属のBランクの人だったけ? その人がどうしたの?」


僕はあの酔っぱらいを思い出しながら、空ちゃんに話を聞き返す。


「碧お兄ちゃん、最後に聖剣でその人を切って止めを刺したよね。……でも、あの人は体が傷ついてないのにも関わらず悲鳴を上げて気絶したじゃない? だから気になって冒険者専門の病院でその人を精密検査してもらったんだけど、ある事実が分かったの」


「……な、何が分かったの?」


話の途中から真剣に話し出す空ちゃんに僕は息を呑んで聞き返すと、聖剣の衝撃の事実を知る。


「あの人、ステータスが無くなったの、綺麗さっぱり」


「えっ、ステータスが無くなった? ホントに?」


僕は空ちゃんから聞かされた事実に驚きを隠せず、条件反射で立ち上がろうとしたが、太ももでハーピィーの卵を支えていることを思い出して何とか踏ん張った。


「それが、本当なんだよ。あの人、身体能力も一般人並みに落ちたし魔法も使えなくなってるの。これって、あの聖剣に切られたからだと私は思うの」


「じゃあ、このポイントって……」


「うん、あの冒険者のレベル分のポイントじゃないかな。自業自得だよ。子供の楽しみにしていたイベントをぶち壊した罰だよ」


「その子供たちのイベントを僕が必死にやっていたのを見て、腹を抱えて笑っていた人もいたよね。はて? 誰だったっけ?」


「その節は申し訳ございませんでした」


僕が空ちゃんを目を細めてじっと見ていると、観念したのか、空ちゃんはすぐにソファーから立ち上がり、床に座って土下座をすると、僕は空ちゃんを許してソファーに座らせる。


「それで、碧お兄ちゃん。そのポイントで何か取れそう?」


「そうだね、ちょっと待ってよ。え~と」


僕は目を閉じながらどんな職業が取れるか確認してみる。


職業ポイントで職業を獲得する時は、目を閉じて念じると今のポイントで獲得できる職業が浮かんでくるのだ。


僕は浮かんできた職業を空ちゃんに教える。


「今獲得できるのは、『レースクイーン』、『バニーガール』、『女王様』、『見習いメイド』、『見習い巫女』、『ハートの女王』って、最初の三つは絶対取りたくないよ、『ハートの女王』も意味わからないし」


僕の話を聞いた空ちゃんが我慢できずに腹を抱えて笑いながらソファーから転げ落ちる。


「あははっ、『レースクイーン』、『バニーガール』、『女王様』って、いーじゃない碧お兄ちゃん。試しに『バニーガール』取ってみようよ」


「いやだよ、勿体ない。それに、ポイントを貯めておけばいい職業が出てきそうだし、ここは一旦保留かな」


未だに床に寝ころんで僕の話を聞いていた空ちゃんが起き上がり、上目遣いで僕を見つめながらお願いしてくるが、断固拒否する。


「え~。『バニーガール』取ってよ~」


「絶対嫌で~す」


僕はそんな駄々をこねる空ちゃんを相手にして他の皆が帰ってくるまで楽しく過ごした。



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