表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
86/169

再び救われたその後~獅子蕪木結奈の一大決心~

「う~ん……。ここは」


(あたしは灰城さんに助けられて眠っちまっていたのか)


目が覚めたあたしは体を起こし、寝惚けながら周りを見渡すと、親父たちや組の連中と一緒に大部屋に寝かされていた。


「……親父、それに組の皆も。よかった~、無事で」


あたしの近くに寝かせられている親父の顔を見ると、大きないびきをかきながら布団を蹴飛ばして寝ていて、あの数え切れないほどの集団で地面をビョンビョン跳ねて肌に張り付いてくる小さな魔物に襲われる前のいつも通りのうるさいいびきを聞いてどこか安心する。すると、部屋の入り口の襖が開き、セバスが部屋に入って来て、体を起こしているあたしに駆け寄って来る。


「おおっ、主様、お目覚めになりましたか。ご気分はいかがでしょうか?」


あたしは布団を蹴飛ばして立ち上がり、その場で回し蹴りや拳を突き出して答える。


「ああ、大丈夫だ。この通り。よっ!はっ!何ともないぜ。でも、なんであたしはこの部屋で寝ていたんだ?」


「私が主様をこの部屋にお運びいたしました。灰城様が念のために、あの魔物たちに襲われないように主様たちを守るために結界を張って守って下さったのです」


「そうだったんだな。それよりもセバス、あのちっちぇ魔物の集団はどうした?灰城さんはまだ戦ってるのか?どうなんだ、答えろセバス!」


あたしは我慢できず、スケルトンであるセバスの腕の骨を掴み、その骨が取れそうなくらい激しく揺らして状況を聞き出すと、体を揺らされているセバスが答える。


「あ、主様、灰城様が無事に解決してくださいましたよ。落ち着いてください。私の腕が取れてしまいます」


「わりぃ、セバス。……そうか」


セバスの話を聞いて、あたしはセバスの腕を掴むのをやめて、その場に力が抜けて座り込んでしまう。


「はい、主様。灰城様は最後まで私たちを見捨てずに助けていただきました。灰城様は、私がすぐにこちらに事情を話して来ていただく際にもすぐに行動してくださいました。……あっ、そういえば」


「……うん?何かあったのか?」


セバスがポンッと自分の手を軽く叩き、何かを思い出したようで。


「灰城様がおっしゃっていましたよ。灰城様が病院で治した時に、主様は唯一印象に残っていたと。良かったですね」


「い、いや、よくねぇよ。確かに覚えてくれていたのは嬉しいけどよ。それって、あたしがガリガリに痩せこけてた時じゃん。恥ずかし~!!」


嬉しそうに報告してくるセバスに、あたしは恥ずかしくなり布団を被ろうとすると、隣で眠っていたはずの親父や組の連中が吹き出して笑っている。


「ぷっ、良かったのう、結奈。覚えてもらえて、よかったじゃね~か。ガリガリのもやしみてーな体の時でも好きな相手の印象に残ってよう」


どうやら親父たちは狸寝入りをしていたようだ。


「親父、聞いてやがったのか。でも、魔力を繋げないとセバスの声は聞こえないはず、……まさか、セバス」


セバスの方にあたしは顔を向けると、頭を下げて謝罪するセバス。


「すみません、主様。私が入って来た時から皆様方は目を覚まして狸寝入りをしていらっしゃったので、主様には内緒でこっそりと私の声が聞こえるようにしておきました」


「何、余計なことをしてやがる、セバス。この!」


あたしはすぐ近くにある枕を掴んでセバスに投げつけるが、綺麗に交わされる。


「……親父、灰城さんに助けてもらったんだ。どうお礼をするつもりなんだ?しかも、今回は私や親父を含めて、組全員を救ってくれたんだ。並大抵のお礼じゃいけない気がする」


「そうだなぁ……、結奈。我が家の家訓を覚えているか?」


「家訓?そんなのあるのかよ。あたしは知らねえぞ」


親父は真剣な顔になってあたしに聞かせる。


「そういえば結奈には言ってなかったな。いいか言うぞ。一つ、『喧嘩を売られたら、相手を地獄の果てまで追いかけて必ず止めをさせ』。一つ、『戦うときは小細工せずに正面突破』。一つ、『家族を裏切る真似はするな』。そして最後に、『受けた恩は絶対に十倍にして返せ』だ。この家訓を作った先祖は『赤鬼』と異名がついた獅子蕪木梅花という人で、戦国時代の時に暴れ回っていたらしい」


「それで、その家訓がなんだよ」


「おい、結奈。ちゃんと聞いてたか?最後に言った『受けた恩は絶対に十倍にして返せ』という家訓があるだろ。それを利用するんだよ。……でも、それを実行するかは結奈の気持ち次第だ」


「……何をする気だよ」


あたしは息を呑みながら親父に聞き返す。


「そりゃ~、灰城の小僧に家訓を理由にわしが強引に『家訓に従って今日から結奈を嫁にやる』って言えばいいじゃないか」


親父の提案にあたしは賛成したい気持ちがあるが、あたしは納得いかない。


あたしは立ち上がって、今部屋にいる全員に聞こえるように拳を突き上げながら叫ぶ。


「いいや、親父。あたしの人生の最大の勝負はあたしがやらなくちゃいけねぇ。その時はあたしが皆が見ている全員の前で愛を勝ち取ってやるぜ!!」


そう、組の全員の前で宣言したあたしは高らかに叫び、灰城さんに告白する決心をして、組の皆の前であたしは自分自身を勇気づけた。


「あたしはやってやるぞ~!!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ