表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
84/170

吸血毒ダニ駆除&救助作戦 3

「すぅ~、すぅ~」


獅子蕪木結奈さんは自分に寄生していた吸血毒ダニの激痛から解放され、今は安らかに眠っている。


『……ああ、主様。吸血毒ダニからの激痛から解放されて、私は嬉しゅうございます。灰城様、本当にありがとうございます』


僕に頭を下げようとしているセバスさんを、僕は手で制して止める。


「いいえ、セバスさん。まだ外にいる数え切れない吸血毒ダニたちの件をどうにかしないと。幸い家の中には吸血毒ダニはいないようですし、セバスさんは結奈さんと一緒に僕が先程治療した大勢が寝込んでいる獅子蕪木組の方たちのいる大部屋に待機していてください。僕が部屋に結界を張って安全な場所にしますから。既に日が隠れて暗くなっている現状で、外にいる小さな吸血毒ダニから守りながらの避難は危険でしょうから」


『本当に、何から何まで感謝いたします』


(獅子蕪木組の方たちは、まだ体力が衰弱した状態だし、今クイーンスライムになっている僕でもこの人数を触手で持ち上げて運ぶのは不可能だしね)


セバスさんは眠っている結奈さんを抱き上げ、僕たちは先程の大部屋に連れて行き、セバスさんたちが部屋に入ったことを確認すると、僕は部屋にすぐに結界を張った。


庭先の方からスライムの娘が未だ外で健闘してくれている戦闘音が聞こえてきて、僕は急いで加勢するべく屋敷の玄関から出て、戦闘音の方に向かっていた。途中、門の入り口でルトが結界を張りながら空ちゃんと凛と一緒にいるのが見え、呼び止められた僕は足を止め、三人の元に向かった。


「母さん、空お姉ちゃんが渡すものがあるって」


「渡すもの?」


「ルトちゃんが急いで冒険者組合から取って来てくれたの~」


「そうだよ、碧お兄ちゃん、これ使って」


空ちゃんから謎の透明な液体の入ったスプレーを僕に手渡してくる。


「スプレー?何の液体が入っているの?」


僕はスプレーの容器の中で揺れている謎の液体を見ながら質問する。先程から何故だかこの液体を見ると視線が離せないでいる。


「それは、周辺の住民の避難が終わった後にルトちゃんに急いで冒険者組合に取って来てもらったんだ、この事態を解決することができる碧お兄ちゃんにしかできないキーアイテムだよ。過去のブルーちゃんの吸血毒ダニの事件から念のために、山形の冒険者組合から送ってもらったんだよ。……ところでちょ~と碧お兄ちゃんに質問があるんだけど、オタマジャクシみたいに数えきれない生物がすぐ近くで群がっている集団を見て恐怖を覚えるほう?」


「何で、そんなこと聞くって、まさか……」


僕は頬を引きつらせながら、今頭の中で一瞬想像してしまった内容であってほしくないと思いながら空ちゃんの話を聞くと、僕の想像通りの代物だった。


「ふっふっふっ、そのまさかだよ、碧お兄ちゃん。このスプレーの中身の液体は、その甘い液体で小さな魔物を自分自身の消化液が溜まっている袋の中に入るように誘導させる、キラープラントという食虫植物型の魔物の消化液だよ。今のクイーンスライムの姿になっている碧お兄ちゃんの触手にかけて、集まってくる吸血毒ダニを一気に殲滅させる。大丈夫~、効果は2時間とちょ~と長いけど、碧お兄ちゃんならやり遂げてくれるって信じてるから……多分」


「碧君、ファイトなの~」


「母さん、頑張って。今のルトたちは応援しかできないけど、ここから母さんを精一杯応援するから」


いつの間にか三人の手にはお子様ランチについている小さな旗そっくりの自作した小さな白い旗を両手に持って振っている。僕はその旗をよく見ると、小さな旗にはデフォルメされた僕の顔のイラストが描かれている。


「はぁ~い、行ってきま~す……」


僕はこれから行う出来事を想像して身を震わせながら、スライムの娘が戦っている場所に向かって行った。


「も~、キリがないよ~。駆除しても駆除しても追いつかないよ~」


スライムの僕の娘は、吸血毒ダニが見えるように街灯の光が照らしている小さな場所で触手を振り回して戦っており、遠くから見ても分かるくらい、まだかなりの数の黒い点が娘の周りに飛び跳ねている。


「加勢に来たよ。お待たせ」


「母、ごめんなさい、ボクが、母が来るまでに殲滅させて頑張ったけど、できなかったよ……」


しょんぼりと僕に報告する娘の頭に一本の触手を載せて、頭を撫でながら僕は娘を褒める。


「何言ってるの、一人で頑張ってくれたから僕は安心して屋敷の中のことに集中できたんだよ。十分頑張ったよ、偉い。後はまかせて、ルトのいる所で休んでて。ここからは一人でやらないといけないから」


僕は触手にスプレーをかける準備をして、娘に笑顔を向けて安心させる。


「分かったよ、母。ルトお姉ちゃんたちのいる所で待ってるね。母、頑張って」


スライムの娘はそう言うと、ルトたちのいる方に向かって行った。


「……よ、よし、では、始めるか」


僕はビビりながら触手にスプレーの中身をかけていくと、かけた部分に吸血毒ダニが触手に瞬く間に隙間なく張り付いて来て、気持ち悪いと思いながら吸血毒ダニを触手の中に取り込んで消化して、その後の効果の切れる2時間までの間、次々と僕の周りに集まり足元にいる吸血毒ダニの集団が黒い絨毯に見えるくらいに隙間なく次々と集まっていく。僕は悲鳴を上げながら必死になって駆除して行き、液体の効果の切れる頃には吸血毒ダニは無事に殲滅することができ、こうして吸血毒ダニの駆除と獅子蕪木組の方たちの救助は無事に解決するのだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ