吸血毒ダニ駆除&救助作戦 2
「そ~れ、溶けちゃえ!!あはは」
新しく誕生した元気なスライムの娘が僕とセバスさんの先頭に立ち、そのゲル状の体から複数の触手を生やして、いたるところで飛び跳ねている吸血毒ダニに向かって触手を伸ばして振り回し、手当たり次第に吸血毒ダニを捕まえてゲル状の触手の中に取り込み、ジュウジュウと音を立てながら次々と溶かしていく。スライムの娘は笑いながら蹂躙していくその姿は、まるでファンタジーゲームの魔王のようだ。
スライムの娘からの蹂躙劇に、吸血毒ダニの集団はスライムの娘のゲル状の肌に飛びついて刺して反撃するが、全く効かず、接触した部分から取り込まれ、あっという間に溶かされていく。まさにスライムの娘の無双状態だった。
僕は、ハーピィーの卵を背負って卵に一定量の魔力を送りながら娘の取りこぼした吸血毒ダニを丁寧に駆除していく。セバスさんに案内されながら屋敷の方に慎重に進んでいた。
『……なんと頼もしい。本当に先程、灰城様がスキルで誕生させたとは思えないほどの活躍ぶりですな』
セバスさんは、目の前で行われている娘の活躍ぶりを見て、顎に手を当てて感心した声で娘を褒めている。
「うん、本当に頼もしい限りだよ。これなら日が落ちるまでには獅子蕪木組の人たちを救出できそうだね。……でも、吸血毒ダニが完全に駆除できるかどうか」
僕たちがここに着いた頃には、もう時間が午後五時半を経過しており、日が落ちて暗くなるまでには吸血毒ダニの完全駆除は無理でも獅子蕪木組の人たちを救出していきたい。
『……そうですな。幾ら灰城様たちが安全に駆除できるとしても、この計り知れない吸血毒ダニの数の駆除は難しいでしょう。まずは確実に人命救助に専念しましょう。さて、到着いたしました。今、玄関の扉を開けますのでしばしお待ちを……』
そう言ってセバスさんが扉を開けてくれる間に、僕は吸血毒ダニが玄関から侵入しないように付近の吸血毒ダニを一掃し、入り口に結界を張って侵入できないようにしておく。セバスさんが玄関の入り口の扉の開錠を終え扉を開けると、僕たちは屋敷に無事に入ることに成功した。
屋敷の中は思ったほど吸血毒ダニの数は少なく、これなら僕一人でも対処できると思った僕は、娘に引き続き外の吸血毒ダニの駆除をお願いする。
『まかせて~、母の頼みなら喜んで~』
そう言って外に向かって行く娘を見送り、僕はセバスさんに案内されて、主様と獅子蕪木組の人たちが寝込んでいる部屋へと向かった。部屋の襖を開けると、広い部屋に大勢のその筋の顔の人たちが布団で横になり、苦しそうにうめき声を上げて寝込んでいるのが見えた。
「それじゃあ、一気に吸血毒ダニを取り除くよ」
僕は部屋の中心に立ち、無数の触手を苦しんでいる人達に伸ばし、触手で吸血毒ダニを取り込み、溶かして体内にある毒を浄化して取り除いていった。やがて、吸血毒ダニの苦痛から解放されて安らかに寝息を立てていった。
『おお~、ありがとうございます。では、最後に我が主をお願いします』
「了解。早く助けてあげなくちゃね」
最後にセバスさんに案内され、セバスさんの主である獅子蕪木結奈さんの部屋に案内された。部屋に入ると、そこには病院で過去に治療した僕の印象に残っていた女の子が、顔を歪ませて苦しんでいた。
(……うん、やっぱり、あの時の病室で治した女の子だ)
初めて病室で会った時は酷くやせ細っていたが、その面影は全くなく、吸血毒ダニに刺されて変色している肌が痛々しい。
「……だ、誰かいるのか、……セバス、それとも親父か」
傍に誰かいることに気づき目を覚ました獅子蕪木結奈さんが、痛みに耐えながら僕とセバスさんを見ようと顔をこちらに向けて目を開けようとする。しかし、やはり吸血毒ダニに刺された箇所が激痛で痛むのか、顔を歪めて額に玉粒の汗をかき、涙を流しながら悲鳴を上げずに必死に耐えているようだ。
『主様、灰城碧様をお連れしましたよ。もう、大丈夫でございます』
セバスさんが傍に駆け寄り、獅子蕪木さんを安心させるように手を握って話しかける。
「獅子蕪木結奈さん、セバスさんの話を聞いて駆けつけたよ」
「……灰城さん、来てくれたんですね、いっつっっ!?~~……こんな姿ですみません」
獅子蕪木さんは痛みに耐えながらうっすらと目を開けて僕の顔を見つめる。
「もう、大丈夫だから安心して。すぐに吸血毒ダニを取り除くから……いままでよく頑張ったね」
「うぅぅ……、ありがどうございまず」
獅子蕪木さんは顔が見えないように腕で顔を隠し、号泣して僕に感謝して涙を流していた。僕はそんな獅子蕪木さんの痛みを取り除くために行動を起こし、彼女の肌に取り付いて寄生している吸血毒ダニに触手を伸ばして次々と取り除いていった。