スケルトンに導かれ 3
「……それで、獅子蕪木組の人たちは今どんな症状なんですか?」
『症状を伝える前にまず謝罪させていただきます。実は、灰城様に会うために私はわざと他の人たちに話が伝わらないふりをしていました。全ては貴方様に会うための演技でございます』
未だに膝を折り、僕に祈るように頭を下げて謝罪するセバスさんに、僕は困惑していた。
「……演技って、今日僕がスーパーに来るかどうかも分からないじゃん。僕が来なかったらどうしていたの?」
僕が尋ねると、セバスさんのスケルトンの目の部分にある鬼火が一瞬光ったように見えた。セバスさんは腕にかけてある買い物袋からチラシを取り出し、自信満々に僕に見せながら宣言した。。
『いいえ、灰城様はスーパーに絶対に来ると私は確信しておりました。今日このスーパーでは毎週金曜日恒例の激安タイムセールがある日。家事の好きな灰城様が来ないわけありません』
「すご~い、よく母さんの行動を理解してるね、まさにその通りだよ。母さんはタイムセールに目がないもんね。よ!!買い物上手!!」
「いや~、ルト、褒めたって何も出ないよ。よし、明日の晩御飯はルトの好きなオムライスにしようか、フワトロな卵にしてあげる」
おだてられた僕は、明日の晩御飯をルトの大好きなオムライスにしてあげることにした。
「やった~、オムライスだ!!」
ルトはその場で何回もジャンプして嬉しそうに弾む。
『よかったですね、ルト様……って、和んでる場合じゃございませんでした。とにかくスーパーでこうして灰城様を待っていたのでございます。スーパーの従業員の方々には迷惑をかけてしまいましたが、こうして目的を果たすことができました。』
セバスさんは立ち上がり、目元の鬼火を揺らしながら僕を見つめており、表情が表現できないスケルトンでも真剣だという思いが伝わってくる。
『現在、我が主を含めた全員が腹痛を訴えながら床に臥せっております。何が発端で発症したのか原因が分からず、我が主が気絶する寸前に「私を病気から救ってくれた灰城さんなら……」というつぶやきを最後に、今も原因不明の腹痛で苦しんでおられます。どうかお力添えをお貸しください』
「……ん?病気から救った?ってことは僕はその子に会ったことがある?」
『はい、難病に侵されて死ぬ間際だった主の個室の病室に現れ、その場にいた主の父親である組長の罵声にも臆することなく、颯爽と主を治して去って行ったと聞き及んでおります。』
僕は個室の病室と聞いて頭を捻りながら思い出すと、僕が病院で治していった時に、唯一印象に残っていた女の子を思い出す。
「ああ、今思い出したよ。病気が治って直ぐにベッドから起き上がってきた子だったから印象に残ってたよ、……そうか、あの子か」
『思い出していただけましたか、それを聞いてきっと主もお喜びになるでしょう。それで本題に戻るのですが、どうか、主を含めた獅子蕪木組の方たちを助けていただけないでしょうか?』
「勿論助けますよ、ここまで聞いて断るなんて外道な真似はしませんよ。みんな全力で助けます」
僕はそうセバスさんに宣言して、空ちゃんたちに事情を説明して、翼ちゃんが一人で待っている僕の家に雛と千香が向かい留守番をしてもらい、僕、ルト、空ちゃん、凛で病人がいる獅子蕪木組の古風で大きな武家屋敷にやって来たのはいいのだけれど、あまりにも酷い刺激臭がするためハンカチで鼻を塞いでいると、小さな魔物がそこらじゅうで飛び跳ねているのを見つけた。
『こ、これは、どういったことでしょう、私がいる時はこんな風にはなっていなかったのに……』
声の様子からして明らかに狼狽えているセバスさんの腕に小さな魔物が飛びついて来たので、僕はクイーンスライムになって触手を伸ばして僕の触手の体内に閉じ込め、皆に見えるように近くに寄せてみた、すると正体は最近になって遭遇した吸血毒ダニだった。