スケルトンに導かれ 2
僕たちは、晩御飯の買い物途中で顔なじみになったスーパーの従業員のおばちゃんから相談を受けて、薬局のコーナーで困った様子で佇んでいるスケルトンに、僕は恐る恐る近付こうとしていた。
「よし、じゃあ、とりあえず近づいてみようよ、……? 碧お兄ちゃん、どうしたの?」
空ちゃんが興味本位で率先してスケルトンに近づこうとしていたので、僕が空ちゃんの手首を掴んで制止する。
「僕一人だけでスケルトンに近づいて話しかけてみるから、みんなは念のためにここで見てて……ルト?」
僕が一人で行こうとしたら、ルトが僕の前に立ちふさがって進路を塞ぎ、頬を膨らませて抗議する。
「お母さん、もちろん私も行くよ。いつも一人で解決しようとするのはお母さんの悪い癖だよ。これからはお母さん一人で危険なことはさせないから。私はお母さんの娘で眷属なんだよ、わかった?」
ルトは今まで僕が一人で解決しようとしたことに不満を持っていたらしく、いつもとは違う迫力で怒りながら迫ってくる。僕は後ずさりしながら反省の弁を述べる。
「……う、うん、ごめんね、ルト。これからはちゃんと一人で解決しないようにするから」
僕とルトはそんな約束を交わし、改めて二人でスケルトンに近づいていくと、スケルトンは僕たちの存在に気づいてこちらに振り向き、カタカタと歯を鳴らしながら口を動かして話しかけてきた。
「う~ん、お母さん、ごめんなさい。この子の言ってること、わからないよ」
「ルトでもわからないか。う~ん、これは困ったぞ」
流石のルトもスケルトンの言葉はわからないようで、僕たち二人は首を傾げて悩んでいると、スケルトンの体から魔力のオーラが立ち昇り、やがて細い糸のように纏まり、魔力の糸は僕の方に伸びてきて僕の額に接触すると、頭の中で渋い深みのある年老いた男性の声が聞こえてきた。
『失礼いたします、突然の無礼をお許しください。私は獅子蕪木結奈様に仕えているセバスと申します』
スケルトンはそう言って僕たちに丁寧に頭を下げ、その振る舞いはまるで洗練された執事のようだ。
「いえ、気にしていませんから。僕は『灰城碧様ですね、存じています』……そうなんだ」
自己紹介しようと名乗ろうとしたが、セバスはこちらを知っているようだ。
「お母さん、この子の言ってることわかるの?」
「ルト、僕の手を握って」
ルトにはセバスの声は聞こえていないようなので、僕はルトの手を繋いで接触すればセバスの声が聞こえないか試してみる。
『初めまして、ルト様、セバスと申します』
「お~、聞こえるよ。セバスって言うんだね。初めまして、ルトって言います」
『これはどうもご丁寧に。やっと私と話ができる方がいらっしゃって安心しました。突然ですみませんが、この老骨の願いを聞いていただけませんでしょうか?』
「老骨ってセバスさん、あなたの骨の部分は魔力でできてるんでしょ?」
「そうだよ、セバスさん、スケルトンなんでしょ?」
『ふぉふぉふぉ、場を和ませるためのスケルトンジョークでございます。』
「ジョークって、それで、セバスさんのお願いとは何ですか?」
僕たちを和ませるために言ったセバスのジョークに僕とルトは態勢が崩れそうになるが、気にしたら負けだと思った僕は本題に入ることにした。
『……どうかお願いです。獅子蕪木組の方たちを助けていただけないでしょうか』
セバスさんは膝を折って祈るように僕たちに頭を下げるのだった。