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スケルトンに導かれ 1

久しぶりに飛騨君と再会して、飛騨君のクラスの悩みを聞いて別れた後、空ちゃんたちと合流した帰り道、僕たちは晩御飯のすき焼きの材料を買いに、家の帰り道にある近くのスーパーに立ち寄っていた。


冒険者学校に通うようになってから、空ちゃんたちのご両親の許可を得て、定期的に僕の家に泊まりに来るようになっていた。


僕が、両親のいない雛以外のみんなのそれぞれの両親に挨拶しに行くと、笑いながら「娘をお願いします」と、きちんと了解も得ているが、凛を溺愛している凛の父親だけは血走った目で僕を見ていて、凛が「将来を誓ってくれた碧君と結婚できないならお父さんとは二度と口を利かない」と宣言され、凛のお母さんからは「……ふふふ、私と二人になる時間は要らないのかしら~」と言って娘に嫉妬した凛のお母さんが、凛の父親の頭にフライパンで殴っていたが、大丈夫だったのだろうか。


「米と醤油と油揚げと木綿豆腐と……」


僕は食品カートを押して、商品カゴの中に家に足りないものを思い出しながら商品を入れて呟いていると、僕と隣で並んで歩いて聞いていた雛と千香が、足りないものを商品カゴに入れてくれる。


「白ネギもなかったわよ。やっぱりすき焼きには白ネギがないと始まらないわよ」


「糸こんにゃくも捨てがたいっす。あと、まいたけも入れたいっす。それから……」


千香は自分の食べたい具材をカゴに入れていき、カゴの中に入りきらず山盛りになる。


「母さん、私、このグミ食べたい、いい?」


ルトが遠慮がちに五十円で売っている小さなグミの少量しか入っていない袋を持ってくる。


「そんな少ししか入ってない袋でいいの?翼ちゃんと一緒に食べるんでしょ?」


僕の疑問に返事をしたルトの言葉に、ハートを射抜かれる。


「うん。初めて食べるグミだから、美味しかったら次は普通のサイズを食べるよ。それに、母さんが作ってくれたご飯の方が美味しいから……」


「……ルト」


ルトが照れながら僕に話してくれることに、喜びの感情を抑えられなかった僕は、顔が盛大ににやけて頬が緩み切ってしまう。


「親バカね」


「親バカっすね」


雛と千香が僕とルトのやり取りを見て微笑ましく見ていると、お菓子コーナーから戻ってきた凛と空ちゃんは手に新たな買い物カゴを持ってきており、遠慮しているルトとは違い、いろんなお菓子の袋でパンパンに買い物カゴに詰めてきた二人が上機嫌になってにやけている僕の顔を尋ねてくる。


「碧君、良いことあったの?顔が緩み切ってるよ~」


「碧お兄ちゃんが大好きなチョコクッキーのお徳用サイズ見つけたよ~って、どうしたの、その顔?」


「い、いや~、ルトが恥ずかしがりながら僕の作るご飯が美味しいって言ってくれたからね。そりゃあ、つい嬉しくなっちゃうよ」


そんな風に僕は照れながら頭を掻いて凛と空ちゃんに言っていると、すっかり顔なじみになったスーパーの店員のおばちゃんが困った顔で僕たちに話しかけてきた。


「ねぇ、あんたたち、冒険者学校に通ってるんだったわよね。ちょっと、助けてくれない?」


「どうしたんですかおばちゃん?何か困りごと?」


「ちょっと、困ったことになってね~、ちょっと、ついて来てくれるかい」


空ちゃんが代表しておばちゃんの話を聞くと、おばちゃんは僕たちを端にある薬局コーナーの方に連れてくると、薬局コーナーの列が見えない手前で止まり、僕たちに小さな声で話しかける。


「あんたたちと同じで今年から冒険者学校に通っている獅子蕪木結奈ちゃんっていう、獅子蕪木組って所のヤクザの一人娘の子がいるんだけどね、その子が骸骨の魔物……スケルトンって言うんだっけ?その子がスケルトンの子をいつも連れて買い物に来てくれるんだけど、今日はいつもと違ってスケルトンの子だけが一人で買い物に来てるんだけど、さっきから薬局のコーナーから何かを探しているようで、その場所から離れないのよ~、話しかけても『カカカ』って歯を鳴らして、何を言っているか分からないし、あなたたちでどうにかしてくれないかしら?ほら、あなたたち、そ~と覗き込んで見てよ、あそこにいる骸骨の子よ」


僕たちがそ~っと隅から薬局のコーナーを覗き込んで見ると、そこには「セバス」と刺繍されたエプロンを身に着け、腕に買い物袋をぶら下げながら顎に手を添えて首を傾げ、いかにも困ったような素振りを見せているスケルトンがいた。

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