始まった高校生活
今日から授業が始まり、午前中は普通の一般的な授業を行い、午後からは上位の冒険者になるための必要な知識を得るための座学や実技、そして、実際の上位のダンジョンで活躍している冒険者を月に一度この学校に来てもらい、上位ダンジョンでの立ち回りなどの講義など、上位の冒険者を目指す僕たちにとって今まさに貴重な三年間が始まる矢先、朝のホームルームから場違いな教師が口元がだらしなく緩みまくり、スキップしながら上機嫌で教室に入ってくる。僕たちのクラスの担任教師であり、つい将来結婚の約束をしてしまった、蓮華先生だ。
入学式が始まる直前、僕に無理やりキスをして気絶させ、そして、その謝罪の後に会ったその日に僕に迫真の演技でプロポーズをして僕を騙し、つい返事をしたがために蓮華先生と将来を約束してしまったのだ。
「は~、うへへ、世界が輝いて見えるぜ。う~い、生徒諸君、おはよう。今日から上位の冒険者目指して頑張って行こうな。(チラッ)……ムフフ。それじゃあまずは~……」
蓮華先生は、入学式と同じ服装のジャージ姿にアンバランスなコートを羽織っており、違うのは入学式の時は不機嫌なオーラを纏って入って来た時とは違い、今日は真逆で、上機嫌で頬が緩みっぱなしのだらしない顔だ。先程から教室に入って来た時から、チラッと僕の方に視線を向けてにやけたりと視線が行ったり来たりと慌ただしい。
そんなだらしない表情で朝のホームルームを進めている蓮華先生の姿を見て、僕の左隣の席に座っている雛が呆れた様子でため息をつきながら、先生の話を聞いていた。
「……じゃあ、最後にこれだけは言っておくぞ。ここの高校に入学できたんだ。入学できなかった人たちに比べたらお前たちは運がいい、だから、ふざけないで全力で学べ、ここは普段学ぶことができない貴重な体験ができる学び舎だ、しっかり励めよ。じゃあ、これで朝のホームルームは以上だ」
話の最後に蓮華先生は決め顔で僕たちに向かって、カッコイイセリフを吐いてくるが、まだお互いの名前すら知らない僕を含めたクラスメイト全員が初めて『先生に言われたくないわ!!』という思いが一致した瞬間だった。
最初の朝一番の一般授業が始まるまでの短いの時間、僕の方に恥ずかしそうに顔を下に向けて俯き、手を後ろに組みながら蓮華先生に呼び止められる。
「あ、あ、碧、ちょっといいか……。これ……私の携帯番号とメールアドレス、気軽にメールしてくれたら嬉しい……」
蓮華先生は恥ずかしそうに僕に段々と小さくなって掠れていく声で、ポケットからノートの切れ端に連絡先の書かれたメモを取り出して、僕におずおずと差し出す。
(……あれ?ちょっと先生が可愛いく思えて来たぞ)
僕は初めて会った時とは違う印象の蓮華先生のギャップに戸惑いながらメモを受け取ると、蓮華先生は両手で顔で隠して、恥ずかしそうに教室を出ていった。
そんな僕と蓮華先生との微笑ましいやり取りの様子を、クラスメイトたちがニヤニヤしながら目撃し、羞恥心に悩まされた僕は、自分の席に座り、冷静を装いながら授業に使う教科書をカバンから取り出し、準備をして気を紛らわせることにした。でも僕の頭の中は、先程のギャップのある先生の表情が忘れられず、午前の授業中の間も先生の様子を思い出しながらぼんやりとしていた。