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緊張の入学式 5

「う~ん、どうしようかな。簡単に許してしまうのもなんだし」


「碧君、ここはきちんと罰を与えるべきなの。碧君がやらないなら私がやるの。みんなで華々しい入学式を迎えるはずだったのに、それを台無しにした先生に相応の罰を与えるの。結果的には碧君は代表挨拶には間に合ったからよかったけど、……もし間に合ってなかったら、先生にはどんな大人でも泣き叫ぶ地獄のお仕置きをするの」


「ちょっと落ち着こう、凛」


先程の出来事を思い出して僕はつい叫んでしまったが、気絶して時間が経っているせいか、思い出してももうどうでもよくなっていた。だけど、凛はかなりご立腹のようで、先程から雰囲気が怖い。今も土下座している先生を鋭い目つきで睨みつけながら見下ろしている。空ちゃんたちも言葉には出さないが、土下座している先生を囲むように立って見下ろしていた。


僕は目の前で未だに土下座をしている先生に頭を悩ませると、夏美さんと佳代子おばあちゃんが教室に入って来た。


「凛さんから携帯に連絡が来たときはびっくりしましたよ。……葉隠蓮華さん。まさか初日でやらかしてしまうなんて」


他の教室に移動する最中に、凛は携帯でどこかに電話していたが、夏美さんに連絡して呼び出してくれたようだ。


夏美さんは呆れた様子で、僕の前で土下座をしている先生をため息を吐きながら見下ろしている。どうやら担任の先生の名前は葉隠蓮華というらしい。


「梢ちゃんからの紹介で来てもらったんじゃが、こうも早く問題を起こされてはのう、これから先が心配じゃわい」


佳代子おばあちゃんも心配そうに話しながら、僕と凛の近くに来て、夏美さんと並んで蓮華先生を見下ろす。


蓮華先生は夏美さんたちの言葉を聞いた後、土下座を止めて顔を上げ、僕に指を向けて苦し紛れの言い訳を始める。


「夏美さん、学園長、マジすんません。だって、しょうがないでしょ!この子を見てくださいよ!こんなに可愛くて小さい男の子の合法ショタが存在するんですよ、早めに唾つけとかなきゃ取られちゃいますよ」


蓮華先生は床に何度も拳をぶつけて主張すると、夏美さんはそんな先生を見ながらため息を漏らす。


「……だからって会ったその瞬間にやらなくてもいいでしょうに。それに貴方は、仮にも教師でしょう」


「そうじゃよ、蓮華先生。ちょっと焦りすぎじゃないかの。そんなに焦っている理由はなんじゃ」


佳代子おばあちゃんが蓮華先生の必死さに疑問を持ち尋ねてみると、蓮華先生はポツポツと話し出す。


「だってよ、一緒に婚活に悩んでた梢の奴が『ごめ~ん、蓮華、理想の彼氏ができたわ。蓮華も頑張ってね』って電話で自慢してきやがった。同じ冒険者の彼氏が欲しかった私は、同じランクの冒険者に当たってみても、顔がいいだけのゲス野郎か自分に酔いしれてるナルシストしかいないんだぜ。だったらもう上位の冒険者を目指している、若くて有能な冒険者の年下の彼氏をゲットするしかないって……。そしたら私の理想の相手がいるじゃないか。我慢できるかよ」


しょぼくれながら悲しそうに話す蓮華先生に、話を聞いていた空ちゃんが、おずおずと僕に指を向けながら気まずそうに話す。


「あの~、蓮華先生。その梢さんの彼氏は先程貴方が唇を奪った碧お兄ちゃんですよ」


「…………え、梢の彼氏」


「え~と、まだ正式には彼氏彼女ではないですけど、将来は約束してます」


僕は少し照れながら喋ると、蓮華先生は口を開けて固まる。


「あ~、固まっちゃった。そりゃびっくりしますよね。まさか理想の相手が同じだったなんて、うちが同じ立場でもそうなりますよ」


「むぅ~、ちょっと蓮華先生に同情するっす。でも無理やり碧っちにキスしたのも先生ですし」


「同情するけど、だからって無理やりは良くないの。碧君はそのせいで気絶して、危うく必死に練習した代表挨拶がダメになるところだったの」


先生に同情して雛たちの雰囲気が和らいでいると、蓮華先生のポケットから携帯の着信音が聞こえ、先生はポケットから携帯を取り出し着信相手を見ると、携帯の画面を僕たちに見せる。着信相手は梢さんのようだ。


僕たちは無言で頷き、電話を出るように許可すると、蓮華先生は電話に出て携帯を床に置き、みんなに声が聞こえるようにスピーカーのボタンを押した。

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