緊張の入学式 4
「……ん、ここは」
僕はぼんやりと意識を取り戻しながら呟き、辺りを見回して自分の状況を確認してみると、パイプ椅子に座らせられていたようだ。
前の方を見ると、今まさに佳代子おばあちゃんが演台で挨拶をしている。
『……じゃから、これから入学するにあたって注意事項を……』
(……今は、入学式の途中か。いつの間に眠ってしまったんだろう、駄目だ、思い出せない)
僕が頭を抱えて何で眠ってしまったのか思い出そうとしていると、空ちゃんたちが僕が意識を取り戻したことに気づき、皆が安心した様子でほっと胸をなでおろした。両隣に座っている空ちゃんと凛が僕の顔色を伺いながら小声で話しかける。
「碧お兄ちゃん、ちょうどいいタイミングで気が付いて良かったよ。ちょうど次が新入生挨拶だよ」
「目が覚めて良かったの~。さっきのことは野良犬に噛まれたと思って忘れたほうがいいの」
「さっき?実はまだ何でこうなったのか思い出せないんだ。何かが急に近づいてきてそれから~……」
僕が小声で思い出しながら呟いて思い出そうとすると、凛が人差し指を僕の口元に置き唇を塞ぐ。
「今は思い出さない方がいいの。碧君は次の代表挨拶に集中して欲しいの」
優しい眼差しで話す凛に、僕は凛の目を見ながら頷いていると、佳代子おばあちゃんの挨拶が終わり、僕の話す番になった。
『それでは次は新入生代表挨拶です。新入生代表、灰城碧君前へ』
右側の壇上舞台近くの階段のそばで、小さな教卓の後ろに立ち、設置されたマイクで司会進行をしている夏美さんが僕を呼び、僕はそれに応えるように返事をしながら椅子から立ち上がり、先程佳代子おばあちゃんが立っていた舞台の演台に向かって行く。
僕は演台の裏にある小さな踏み台に上がり、礼をしてマイクに向かって喋る。
『春うららかな季節、こうして無事に入学できること……』
僕は緊張しながら代表挨拶を述べていき、話を終えて礼をして元の席に戻ろうとする時、保護者のいる席に視線を向けると、一番前の列に座っていたルトと詠美さんを見かけ、僕の視線に気づいたのか微笑みながら僕に向かって小さく手を振って答える。
こうして僕は、空ちゃんたちが座っている自分の席に戻り、やりきった達成感を抱きながら安堵し、無事に緊張した入学式を終えることができた。
僕たちはクラスに戻り、担任の女性教師が教卓の後ろに立ち、ビビりながらこちらを見ようともしないことに疑問を持ちながら最初のホームルームが終わり、クラスメイトが帰っていく中で、おずおずと顔を真っ青にしながら担任の女性教師が僕の前に歩いてくる。
「あ、あの、灰城碧君、ちょ、ちょっとよろしいでしょうか。ちょっとお話が……」
先生は両手の人差し指をツンツンと離したり、合わせたりしながら瞳があちこちに慌ただしく動きながら怯え、僕に話しかけてくる。
「はい?どうしたんですか先生。僕、先生に何かしました?」
「い、いや。何かしたのではなく、私がやってしまったと言うか……」
僕と先生の話に疑問に思い首を傾げていると、空ちゃんたちが先生を睨みながら僕の元にやってきて、空ちゃんが先生に向かって話す。
「さあ、先生。空いている別の教室に移動して、先生がやらかした事について話し合いましょうか」
空ちゃんは冷たい微笑みで先生を睨みつけながら話すと、先生は顔を真っ青にして頬を引きつらせながら返事をする。
「……りょ、了解です」
そうして僕たちは空き教室に移動し、先生は僕の前に来て床に顔をつけ、土下座をしながら話す。
「この度は申し訳ございませんでした~!!余りにも私好みの可愛い合法ショタで衝動が抑えられなかったんです。無理やりキスをしてすみませんでした」
「……キス?あ、あ~~!!思い出した」
僕は先生の謝罪の言葉で忘れていた記憶を思い出して、先生に指を指して叫んだ。