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デパート屋上のアクシデント 2

こうしてキャラクターショーに出ることになった僕は、子供たちの夢を壊さないように全力で演技をする。


僕は子供たちに見えるように自分の立ち位置を気にしながら、戦闘員役の役者たちと事前に打ち合わせした通りに動き、剣を振り下ろしながら思う。


(よかった。四十分しか覚える時間がなかったけど、意外と覚えられるもんだな。え~と、次は……)


『くっ、おのれリリーめ。ならば、おい!お前たち、会場の子供を攫ってくるのだ』


キャラクターショー恒例の会場にいる子供たちから1人を選び、舞台に出演してもらい救出するイベントだ。出演したい子供たちが手を上げて必死にアピールしている。


流れてくるスピーカーの声に合わせて、敵役のミノタウロスの着ぐるみを着た役者が子供たちの方に手をかざすと戦闘員役の役者の人たちは2列目の通路側に座っていた女の子を連れて来た。選ばれた女の子は嬉しそうに僕に向かって『助けてー』と言いながら笑っている。


『はっはっはっ。これでこちらには手出しはできまい。お前たちやってしまうのだ!!』


今度は僕がやられる番になるので、戦闘員役にやられるふりをしながら後ろに下がって膝をつくと、主人公リリーの声がスピーカーから流れてくる。


『くっ、このままでは勝てない。どうしたら……』


女性スタッフの司会のお姉さんが、ショーが始まる前に子供たちに配られた主人公のリリーが使っている剣に似せて作られた小さいおもちゃの剣を手に持って会場の子供たちに向けて大げさに呼びかける。


「みんなー。このままではリリーがやられちゃうよ。みんなに配った剣を振ってリリーにパワーを送ろう!ほら、お姉さんの真似をして、せーの!」


会場の子供たちが一丸となってスタッフの司会のお姉さんと同じように懸命におもちゃの剣を振って真似するとパワーが送られてくるBGMがスピーカーから流れ、しばらくするとパワーを貰ったリリーの声が流れる。


『ありがとう、会場にいるみんな。これで戦えるよ。さぁ、覚悟しなさい、ナイトメアタウロス!!』


僕はリリーの声に合わせて会場の方に笑顔を向けて、チラッとルトたちの方に視線を向けると、空ちゃんが自分の口を片手で塞ぎつつスマホで動画を撮りながら、頬を膨らませて必死に笑いをこらえている姿が見える。


(……うん、空ちゃんは後でチョップだな。いけない、今は集中しないと)


余計な雑念が入って気が散ってしまったが、僕は最後のクライマックスに向けて摸造刀の剣先を敵役のミノタウロスの着ぐるみの役者に向けて、次のリリーのセリフがスピーカーから流れるまで待機するが、予定と違ってセリフが流れてくる様子がないことに僕は疑問を覚えると、舞台裏から男性スタッフが大きなスケッチブックのカンペに太字の黒のマジックで文字を書いて僕に見えるように掲げると、書かれていた内容に衝撃なことが書いてあった。


(……なになに、えっ!?音声データが壊れて再生できない!?こんな大事な場面で。僕は決め台詞なんて知らないぞ、……どうしたらいいんだ)


僕が悩んでいる様子を見たスタッフがカンペに書いて技名を教えてくれる。


(技名はわかったけど、このセリフを僕が大声で言うのか、……恥ずかしいな、でもこれを言わないと次に進めないし、よーし、こうなったらやけだ)


僕は敵役のミノタウロスの着ぐるみに向かって走り出し、人質役になっている女の子に当たらないように着ぐるみの肩部分を剣で切ったふりをして女の子を片手で支えて抱きあげて、リリーの決め台詞を叫びながら敵役のミノタウロスの着ぐるみに向かって、剣を振り下ろしながら叫ぶ。


「悪しき魂よ、この剣で浄化しなさい。ローズスラッシュ!!」


僕のセリフと共に爆発の音声が鳴り、舞台に設置してある装置から白い煙がシューと音を立てて立ち昇り、敵役のミノタウロスの着ぐるみを着た役者が床下の仕掛けで素早く退場すると、煙が晴れる頃には僕が倒したように見え、山場を乗り越え、後は流れるようにキャラクターショーは無事に終わり。乗り切った達成感に満足しながら一息ついた僕に、司会をしていた女性スタッフがまだ終わりじゃないことを告げられる。


「最後にリリーと一緒に写真撮影が出来ま~す。写真を撮りたい子は並んでくださーい」


そうして僕は子供たちと順番に写真撮影していく途中で事件が起こった。


「何の集まりだ~。おじさんも混ざろうかな~」


顔を真っ赤にさせた酔っぱらいのおじさんが乱入してくるのだった


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