入学試験後のお疲れ会 2
お疲れ会の準備が整い、机にはこれでもかと思えるほど、さまざまなジャンルの料理が美味しそうな匂いを漂わせていた。
後は詠美さんと梢さんが到着するのを待つ間、テレビを見るために電源を入れると、また僕と玲次が戦っている動画が映されていた。テレビに僕が映っている変えられない現実を思いながらソファーに横になってため息をつく。
数えるのも馬鹿らしくなるくらいに、ニュース番組を見るたびに僕と玲次の模擬戦の映像が取り上げられて、しばらくは街に買い物に行けないんじゃないかと思えるくらいに僕は悩まされていた。
そんな様子の僕を雛は苦笑いしながら少し空間が空いているソファーのふちにちょこんと座り、寝ている僕を見下ろしながら話す。
「生放送で全国に中継されてたもんね、無理もないよ。しかも、今度はきめ台詞つきので。……でも、うちたちは嬉しかったよ。碧君のカッコイイ所が見れて、ますます好きになって良かったと思えたし、……だ・か・ら」
雛はそう言ってソファーで横になっている僕の身体の上に重ねるように横になり、雛の全身の温もりを肌で感じながら受け止める体勢になる。雛の吐息が聞こえるくらいに顔が近くなり、突然の雛の行動に僕の心臓がドキドキしていると、雛は僕の耳元に囁きながら頬にチュッとキスをする。
「苦労ばっかりしている碧君為に、少しでも元気になって貰うように、うちなりの元気のおまじない」
雛は自分でやって恥ずかしくなったのか、僕に強く抱きつき、胸に顔を埋めて見せないようにしている。
僕たちの様子をテーブルに座って眺めていた空ちゃんと千香と凛の3人は微笑ましく見つめていた。
「あ~いいな~。私も今度機会が会ったらやってみようかな。今やっても意味ないだろうし」
空ちゃんは羨ましそうに呟いて、自分の目の前にある唐揚げを指でつまんで食べる。
「碧っちに膝枕してもらうのも癖になるっすよ。またやってもらうっす」
ニコニコと微笑んで身体を小さく揺らしながら千香は喋る。余程前に僕がした、膝枕が好評だったらしい。
「私は~、思いついたこと全部やって欲しいの~。例えば~、恋愛映画のワンシーンの再現とか~」
のんびりとした口調で凛は握りこぶしから順番に人差し指から開いて僕とやりたい事を妄想しながら数えている。
皆の希望を叶えられるように頑張ろうと決意する僕に玄関の方から玄関を開く音が聞こえる。
詠美さんと梢さんの話し声が聞こえながらこちらに向かってくる足音に、雛は慌てて僕から離れて顔を真っ赤にしながらテーブルの席に座る。
その慌てた行動を見ていた千香は雛に呆れたように喋る。
「雛っち、そんなに慌てる必要ないっすよ。身内だけなんだからもっと甘えてもいいんすよ」
空ちゃんも千香の考えに賛成のようで。
「そうだよ、雛お姉さま。したいことをやらないと後で、絶対に後悔しますよ。碧お兄ちゃんに今後どれだけの人数が増えるかわからないんですから」
空ちゃんの発言に僕は抗議する。
「増えないと思うけどな~、想像できないよ」
そんな事を僕が言っている内に、詠美さんと梢さんが部屋に入ってくる。
「皆さんどうしたんですか?」
詠美さんは僕たちの場の空気を感じ取ったのか、僕たちに尋ねる。
「何だい?今後の人生相談かい?だったらあたしたちも混ぜてくれないと」
梢さんは呑気に笑いながら喋る。
空ちゃんが代表して詠美さんたちに喋る。
「碧お兄ちゃんが今後何人の彼女ができるか話してたんだよ」
詠美さんは微笑みながら喋る。
「家族が賑やかになっていいじゃありませんか。私は何人でも構いませんよ」
梢さんは僕達に向けて手を払いながら呆れた様子で喋る。
「そんなの考えるだけ無駄無駄。入学前でこの人数だから考えるだけ損だよ。じゃあ、パーティーを始めようじゃないか」
梢さんの話から今後の話の決着がつき、僕はソファーから身体を起こす。
「じゃあ、僕は2階からルトと翼ちゃんを呼んでくるね」
僕はソファーから立ち上がり、2階でアニメを見ているルトと翼ちゃんを呼びに行ったのだった。