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入学試験後のお疲れ会 1

入学試験も無事に終わり、試験の途中で玲次との模擬戦があり、その映像がテレビで全国放送されたりと、今日一日でいろんなことがありすぎて大変だったけど、僕は無事に終わってホッとしていた。


時刻はすっかり日が沈み、時計は午後七時を指している。入学試験が無事終了したお疲れ会の準備をするために、僕は台所でトントンと包丁でリズムよく野菜を切りながら料理をしている。


今日は家族のルトと大切な恋人たち、そして雛の妹の翼ちゃん以外に、2人のメンバーが後から遅れて合流する。詠美さんと梢さんだ。2人はそれぞれの仕事が終わり次第、僕の家に来る予定だ。


僕はいつもよりさらに賑やかで楽しそうなこれから始まる夕飯を楽しみに思いながら、支度を手伝ってくれる空ちゃんたちと一緒に、夕飯の準備をみんなで手分けして進めている。


「碧君、お皿が足りそうにないんだけど他にはない?」


雛が僕に尋ねてくる。


「それなら、ちょっと待って……はいこれ」


僕はクイーンスライムの姿で料理をしており、フライパンで野菜を炒めながら料理をしつつ、髪の毛の部分から触手を出して洗い物を同時に進行している。さらに追加で触手を出し、奥にある戸棚から取り皿を棚から出して雛に渡す。


始めは触手の操作に苦労したが、今では細かい作業も同時にできてしまう。触手を器用に使っていく様子を見て、感心した雛は僕に素直な感想を述べる。


「最初は奇妙な光景で驚いたけど、もうすっかり慣れてしまったわ。本当に便利そうね、その身体」


最近、料理をする時はクイーンスライムの姿になり、複数の触手を器用に使いながら料理することに味を占めてしまった。


「実際便利だしね、この身体。いろんな作業が同時にできるから、使い終わった油もこの身体で消化できるし」


テーブルに料理を運ぶために来ていた、料理を受け取りに来た上機嫌の空ちゃんが顔をニコニコさせながら話に加わる。玲次の一件が片付いて、空ちゃんの肩の荷が下りたようだ。


「本当に家事が好きだよね、碧お兄ちゃん。お兄ちゃんだけじゃない。家事のためにスキルを器用に使うのは、『聖女』の浄化スキルも家の掃除に使うくらいだし。でも、その考えができるお兄ちゃんだからいいんじゃない。スキルの使い道が、戦うことだけの力じゃないって思えたし」


会話を聞いていた僕のスキルの使い道を褒めてくれる空ちゃんに、雛も納得して頷く。


「そうね。碧君はこうして普段から家事をしているからこそできる考えよね。……でも、それと同時に女子力で負けている自分が情けないわ」


肩を落として落ち込む雛に、空ちゃんは励ます。


「大丈夫ですよ、雛お姉さま。まだこれからじゃないですか、一緒に頑張りましょう」


「……空ちゃん。ありがとう」


感動した雛は空ちゃんに抱き着いて、親睦を深めたようだ。


「碧いっち。飲み物が足りなそうだから、凛と一緒に買いに行ってくるっす」


飲み物がないことを心配した千香が、台所の入り口から顔を出して僕たちに告げる。さっきまで勉強が苦手な千香は入学試験での筆記試験で頭をフル回転させて憔悴していたが、元気を取り戻している。


「それならルトや翼ちゃんのお菓子も買ってきて、それと梢さんと詠美さんにお酒に合うおつまみも一緒に。今日は2人とも飲むって言ってたから。……はいこれ」


僕は触手を伸ばして壁に掛けてあるカバンから財布を取り出し、千香にそのまま渡す。


「了解っす。ほら、凛。行くっすよ」


千香は僕に元気よく返事をすると、後からこちらにのんびり歩いてきた凛の背中を押して外に向かう。


「は~い。じゃあ、行ってくるの~。いろんな飲み物を買って混ぜて飲むの~。楽しみ~」


どうやら凛はいろんな飲み物を買って混ぜて飲む気だ。廊下から外に向かって小さくなっていく凛ののんびりした声に、千香はダメ出しをする。


「飲み物で遊んじゃダメっス」


外に向かっていく千香と凛の会話に、僕たちはお互い顔を合わせて苦笑いをしたのだった。

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