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入学試験が終わった後で4

『では、次の質問に入らせていただきます。今回の活躍も含め、さまざまな活躍をしている少年とはどのような人物なのでしょう?』


女性アナウンサーは、僕の話題に変わると楽しそうに話し始めた。


(佳代子おばあちゃん、変なことは喋らないでよ……不安だな)


僕の不安な感じを察した詠美さんが、後ろから強く抱きしめてくれる。


「碧君が不安な気持ちもわかります。お婆様はやるときはしっかりやる人です。……たぶん」


(本当に大丈夫かな)


心配になりながら僕はテレビを見ていた。


『……そうじゃのう。まず少年は話題になる前から真面目な努力家だったの。冒険者学校に入学できる最低条件のレベル10になるために、毎日一人でスライムを倒してレベルを上げようと努力しておったのじゃ』


『……え!? でもレベル10になるのは簡単なことだと聞いたことがあるのですが、違いますか?』


女性アナウンサーが驚いた表情で尋ねると、佳代子おばあちゃんは悲しそうに答えた。


『違わないぞ。詳しい話は国家機密のため教えることはできんが、今回少年が対峙した問題の冒険者にレベルを上げられないように妨害されたようじゃ。わしがこの事実を知ったのは、孫の詠美ちゃんの傷を少年が治してくれたあとじゃった。普通はあり得ないことじゃからの』


『え、妨害できるのですか?』


『詳しくは教えられんがのう。でも少年はその妨害から解放され、無事に冒険者学校の入学試験の条件をクリアして、街を救うことができたし、わしの孫の怪我を治してくれた。わしは少年に感謝しているわい。でも……わしはまだ心残りがあっての』


『心残りですか? どのような事でしょう?』


佳代子おばあちゃんは詠美さんの日記を引き出しから取り出してカメラの前に掲げる。


詠美さんは自分の日記が見えた瞬間、僕を抱きしめる力が強くなり、ここで余計なことを言えば僕が詠美さんの日記を読んでいたことがバレてしまうと思い、必死に耐える。


『これは孫の詠美ちゃんの日記なんじゃが、どうやら少年はまだ詠美ちゃんに手を出してくれんでのう。ひ孫ができるのを楽しみにしているのに。それで先程、少年に詠美ちゃんの日記を読ませて焚きつけたのじゃ。おぬしはどう思う? このくらいの年なら喜んで飛びつきそうじゃが』


『え~と、それは当人たちの気持ち次第じゃないでしょうか。それにまだ子供を作るには早すぎると思いますけど。いいんですか? テレビでお孫さんの日記を公開して』


『はっはっはっ。大丈夫じゃろう、詠美ちゃんなら今頃、少年に夢中で気がつかんじゃろう』


「佳代子おばあちゃん!!日記のことは秘密じゃなかったの!!」


僕はテレビに映っている佳代子おばあちゃんに向かって思わず叫ぶと、後ろから詠美さんが僕に尋ねてくる。


「碧君、私の日記を読んだんですか?」


「ごめんなさい。悪いと思っているんだけど、佳代子おばあちゃんに読めと脅されて」


僕は詠美さんに許してもらおうと必死に言い訳を考える。


「別に日記を読まれたことについては気にしてないですよ。私は碧君に隠すことなんてありませんから……ただ」


詠美さんは僕を正面に振り向かせ、周囲の冒険者たちが見ているにも関わらず、僕に顔を近づけて長いディープキスをする。


それを見ていた冒険者たちは喜びの声と、詠美さんを取られた悲しみの声が入り混じって辺りは騒がしくなる。


長いディープキスが終わり、僕の顔から離れると詠美さんは妖艶な表情で僕に言った。


「これで私のありのままの気持ちがわかったはず。空さんとも恋人になったようですし、もう我慢しなくていいですよね。……ふふ」


「お手柔らかにお願いします」


頭がぼーっとして何も考えられない僕に代わって、テレビから佳代子おばあちゃんの悲鳴が聞こえる。


『な、夏美、許してほしいのじゃ』


何かを叩く音と共に夏美さんが怒りの声を上げる。


『テレビの前で何てことするんですか。反省してください!!』


佳代子おばあちゃんの情けない悲鳴が聞こえる途中で映像は途切れた。


『……以上、森崎佳代子さんのインタビューでした。続きまして……』


何事もなかったかのように次の話題に移るニュースキャスターの声が聞こえる。


こうして僕はぐったりしている皆に合流して、家に帰っていくのであった。



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