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入学試験7

僕と玲次は会場の中央で正面から向かい合っていた。


玲次は余程自信があるのだろう、先程から木製の長剣をポンポンとリズムよく手で軽く弾いて、ニヤニヤしながら僕を見て嘲笑っていた。


(僕が強くなっていることを玲次は全く信じていない。公衆の面前で僕が惨めに敗北する姿を想像して、楽しみにしてるんだろう)


観客席で心配な表情でこちらを見ている飛騨君たちに、僕は、笑顔で軽く手を振って、大丈夫と伝える。


「観客席に手を振るたぁ、随分と余裕があるじゃねーか灰城」


「そうだね。でも玲次は僕と違って余裕がないじゃなか、さっきまで、ビクビクと怯えてさ」


挑発してきた玲次に対して僕は逆におちょくるように煽る。


「う、うるせえ!相手がお前なら余裕だ。せいぜい俺様を楽しませろよ灰城」


そう言って玲次は長剣を構えて真顔になった玲次を見て、僕は思う。


(もはや言葉は要らないってことか、それなら僕も)


玲次に今まで馬鹿にされてきた僕の職業『女騎士』だけで戦うと自分自身に誓って、剣の剣先を上にして、騎士の様に構えて静かにその時を待つ。


審判役をすることになった藤原さんが、無言で構えを取っている、僕達を見て模擬戦の始まりを告げる。


「いい、これは模擬戦なんだからね、致命傷になる攻撃は絶対にしないこと、では始め!」


開始と同時に玲次は、一直線に僕に向かって長剣を構えながら突っ込んで来て、その勢いを利用して長剣を流れにのせて、僕の長剣を持っている腕に振り下ろす。


「まずこれで片腕を貰うぜ」


玲次はきっと本気で僕を痛めつけようとしているのだろうが、先程の藤原さんとの動きに比べるとかなり遅く感じた。僕はその場で動かず、玲次が狙っている片腕だけを動かし、相手の長剣に合わせるようにして防いだ。


止められると思わなかった玲次は、唖然として固まった。


「おい、なんで俺様の攻撃が止めれるんだよ、……しかもその場を動かずに」


「玲次、何をしているの、そんな固まっていたら反撃しにくいじゃないか真面目にやってる?」


僕の軽い挑発で我に返った玲次は僕に後ろに少し飛んで距離を取り、再び、切り込んでくるが、その遅すぎる動きに僕はわざと当たらないギリギリの距離でかわしながら挑発する。


「玲次、本気でやってよ、最初の勢いはどうしたの?」


挑発されて、怒り心頭の玲次はがむしゃらに剣を振り回しながら叫ぶ。


「くっそぉぉぉぉ!!調子にのるんじゃねぇぇ!!」


がむしゃらに剣を振り回してくる玲次の攻撃に、もはや模擬戦などと呼べるものではなく、ただの1人の少年が暴れているだけの暴漢にしか見えなかった。


僕は、自分の職業『女騎士』に意識を向けると頭の中で剣術の体の動かし方が自然と流れ込んでくる。


「玲次、今度はこちらからいくよ」


僕は、これまでにあった過去の戦いで洗練されてきた動きを更に最適化し、自分でも驚くほど流れるように、そして優雅に、まるで演武をするかの如く、玲次に次々と剣の猛襲を浴びせていく。


防ぐことのできない玲次は、僕の剣の猛襲を受け徐々にボロボロになっていく。


「はぁ……はぁ……何だよ、その動きは、全然動きが見えねぇぞ」


距離を取って僕は攻撃を止めると、息が上がってボロボロの玲次に対して、僕はわざとらしく質問する。


「僕の動きについてこれないの?玲次は本当にレベル25なんだよね?」


僕が玲次にした質問で、審判をしていた藤原さんが思い出したかのように玲次に話す。


「そうだった、忘れていたよ、最上玲次!空からの伝言だよ。ステータスカードを見ろってさ」


「空から伝言?ステータスカードを見ろって……なんじゃこりゃ!嘘だろ!」


玲次は空ちゃんの伝言が気になるのか疑問に思いながらステータスカードを取り出して自分のステータスカードを覗くと表示された内容に衝撃を受ける。


最上玲次 男


レベル 10


職業 剣士


スキル スラッシュ 


称号 笑われ者 罪人者


称号 


笑われ者 数回に一回の確率でスキルを失敗する。


罪人者 自分の罪を清算するまでレベルが上がることはなく経験値も入手出来ない。



「この俺様がレベル10で剣士!?魔法剣士だったはずだ!スキルもスラッシュしかない、なぜだ!」


手の平を僕に向けて魔法を放とうとする玲次だが。


「ファイヤーボール!ファイヤーボール!どうして出ないんだよ」


玲次の手からは魔法は発動することはなくただ叫び声だけが会場に響く。


何度も僕に向かって叫んでいる玲次に、藤原さんは止めを刺す。


「まだ空からの伝言は終わってないよ。……たしか、バカ兄貴が使っていた魔法は元々、碧お兄ちゃんの力だからちゃんと本人に返そうね……だってさ、よかったな、返せて」


藤原さんの空ちゃんからの伝言を聞いた玲次は、叫ぶのをやめてその場で膝から崩れ落ちて唖然とする。


「俺様が使っていた力が灰城の力だって、…嘘だ、そんな、嘘だ!!」


頭を抱えて否定する玲次に、藤原さんは玲次に尋ねる。


「もう試合は棄権するかい?それとも続ける?」


「続けるに決まってるだろ、魔法が無くたって俺様は強いんだから、……何故なら」


玲次はポケットから小さなギザギサした棘が全体を覆っている赤色の石を取り出す。


その石を見た瞬間、藤原さんは真剣な顔で玲次を止めるように説得する。


「それは爆発石!?まさかここで爆発させるの!今すぐやめなさい!」


爆発石は衝撃を与えると広範囲に爆発する、一般の冒険者は持つことを禁止されていて、過去に暴発して事件になるケースが多発したため禁止指定物に認定され、所持することを深く禁止された。


「流石にこれはAランク冒険者でも焦るか、そうだぜ、これは小さいが爆発石だ。でもこれぐらいの大きさでも会場を吹き飛ばすには十分だぜ。あいつに貰ったやつなのが頭にくるが、ここで負けてこれから惨めな最後になるくらいならここで!!」


玲次は爆発石を地面に叩き込もうと腕を振り上げるが、振り下ろす寸前で僕が腕を掴み爆発石を取り上げるが爆発石はゆっくりと赤く光りながら点滅を繰り返していく。


「もう遅いぜ、もう誰にも止められない、みんなここでおさらばだ。ハッハッハッハッ!!」


やけに自暴自棄なった玲次は高笑いをして勝利を確信しているが、僕はそれを許さない。


「使うことはないと思っていたけど、……仕方ないよね」


点滅している爆発石を両手に包み込んで、僕は新しく手に入れた力を使う。


「魔物化、クイーンスライム!!」


そして、僕は全身から輝きだし、新たな姿に変身した。


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