入学試験2
次の会場に進んだ僕が待っていたのは半円状の大きな机が階段状にそれぞれに均等に設置されている。大学の講義で使われているような教室だった。
僕の指定された席は一番後ろの中心に近い場所になっていた。
(みんなの様子はどうかな)
辺りを見渡し探していると、最初に最前列の席に四方木さんを見つけた。
どうやら試験が始まるまで退屈のようで、先程から頭が前後左右に揺れて船をこいで眠りこけている。
二番目に三島さんの姿が確認できた。
三島さんは空ちゃんに書いてもらった対策ノートを見て、自分が間違える問題の場所を復習してギリギリまで頭に叩き込んでいるようだ。
空ちゃんと古土さんは別の試験会場のようだ。
(よし、僕もがんばるぞ)
僕は試験の準備をして、筆記試験が始まるまで目を閉じて静かにその時を待ち、試験に望んだ。
※
筆記試験の終了を告げるベルが鳴り響き、僕は自分の満足な出来にホッと一息をついた。
解答用紙を回収した試験管の男性が受験生に聞こえるようにマイクを使って話す。
「筆記試験はこれで終了です。次の試験は上位の冒険者との模擬戦です。前の席から順番に呼びますので、呼ばれるまでその場で待機してください」
(一番最後の席だから呼ばれるまで、だいぶ時間が掛かるな、どうしよう)
呼ばれるまでの時間までどうしようか悩んでいた僕に右隣にいた受験生の男子学生に声をかけられた。
「まいったね、模擬戦なんて緊張しちゃうよ、君はどう?」
「上位の冒険者との模擬戦なんて滅多にないので、どちらかと言えば楽しみですね」
僕の答えを聞いた相手は尊敬するような表情で僕を見ていた。
「すごいね君、模擬戦が楽しみなんて、僕はたまたまテイムできたオオカミ型の魔物がいるんだけど自分では戦うのはからっきしで。ごめん、名乗らないで。飛騨直哉っていいます」
彼の見た目は筋肉質ではない瘦せ型の体型で小さなレンズの眼鏡をかけている。
「灰城碧です。いいんじゃないでしょうか戦闘が苦手な冒険者がいても、戦闘以外の分野で力を付けていけばいいんじゃないですか」
「ありがとう。そう言ってくれるお陰で少し気持ちが楽になったよ。灰城君はダンジョンで薬草や鉱石採取に興味ないかな?」
「もちろんあるよ。Cランクダンジョンからは薬草の知識が合って助かったて話を冒険者組合で聞いていたから、鉱石も魔力を帯びている物を使って、日常生活に役立つアイテムも日々、研究されてるらしいし」
「よかった~。この話をすると、大抵バカにされるんだ。そんな、ちまちま採取するより魔物を倒して素材をはぎ取れって、いざ必要になった時にだけ『お前の力が必要だ』なんて都合のいいこと言って無理やり僕を連れて行こうとするんだから」
その光景を思い出しているのか飛騨君は疲れ切った表情で肩を落としている。
「でも勇気を出して灰城君に話しかけてよかったよ。こうして理解してくれる人がいて、良かったら友達になってくれない」
「もちろん。僕も君と友達になりたいと思っていたんだよろしく飛騨君」
飛騨君を握手を交わし、呼ばれるまで僕たちは、いろんな話をしながら楽しい時間を過ごした。