問題冒険者の捜索2
「……見つかりませんね」
僕の呟きに、ルトと森崎さんが答える。
「いないね~」
「いませんね。それが余計に心配です。手遅れにならなければいいのですが」
魔物達を倒しながら、問題の冒険者を捜索するも、なかなか見つからない。
問題の冒険者達は余程自信があるのか、もう奥の方に来ている。
「……ひょっとしたら、他の冒険者に魔物を狩られてしまって、仕方なく奥の方に進んで行ったのかも知れませんね」
「そうですか、僕が思うに、負け続きの姿を見られたくないだけなんじゃ」
ルトは地面に転がっている小石を数個拾い、天井に潜んでいた数匹の小さな蜘蛛型の魔物に向かって投げる。
「おかあちゃん、えいみおねえしゃん、ゆだんしちゃだめでしゅよ」
落ちて来た蜘蛛型の魔物に、僕は慌てて素早くとどめを刺す。
「ごめんルト、気がつかなかった」
ルトがいなかったら危なかったかもしれない。
「ごめんねルトちゃん。これはスモールスパイダーですね。普段は臆病で襲ってくることはありません、ただ大きな音に敏感なので気を付けてくださいね」
「気を付けるにしても、こんな所で大きな音を出す事態なんてあるんですか?」
「……それがいるんですよ、このレベルのダンジョンまでこれる冒険者は大体、自分に自信が付き始め慢心している方がほとんどで仲間と騒ぎながら突き進み、天井にいるスモールスパイダーの糸に捕らえられ、動けなくなり、そこに他の魔物に襲われて亡くなるケースもあります」
「いるんですね、そんな人達が」
「そうですよ、碧君が慢心していた時は私が注意しますから……もっとも今こうしてちゃんと注意を聞いてくれるので心配はありませんが、いるんですよ実際、私の隣にいる受付の娘にナンパして次の日には無くなっていたって話、見てませんか?ダンジョンの入り口に横にある注意事項の看板」
「ああ、そういえば何かあった気がします」
「ほんとうはこのダンジョンのようなCランクに近いダンジョンも資格を取った冒険者に限定させたいのですけど、それをやると今度は魔物が溢れだす危険性がありますから、何とも言えないんですよね」
森崎さんと話をしていると遠くの方で冒険者の怒鳴り声が聞こえて来た。
「……ようやく見つかりましたね」
「ええっ、まさかこんな奥まで来ているとは」
3人で怒鳴り声が聞こえる方に向かって行くと、今度は悲鳴が響き渡る。
「急ぎましょう」
「ええ、間に合えばいいのですが」
「おかあちゃん、ルトがさきにいってくるの」
「えっ、待ってルト!!」
僕の返事を待たず、ルトは先に行ってしまった。
「ルトちゃん早いですね、あっ」
問題の冒険者がいる魔物が群がっている場所を、僕達は発見する。
僕は安全確保のために、素早く森崎さんに結界を張る。
「結界を張ったので動かないでください、では行ってきます」
「行ってらっしゃい、ご武運を」
魔物の群れに向かって行きながらルトを探すと驚愕した。
ルトはメタルアルマジロの背を踏み台にしながら弾むように跳んで行く。
「ちょっ、危ないってルト」
ハラハラしながら他の魔物を倒しながら後を追う。
「よいちょっと~~」
やがてルトは、問題の冒険者まで迫っている、メタルアルマジロの頭に、鍬で可愛らしい声と共に振り下ろし、間一髪の所で助ける。
「ルトその調子だよ、あっよかった~、間に合って……あれ?、ひょっとして古土さん?」
「そうですけど……あなたは誰?」
同じクラスなのにやっぱり分からないか、見た目が全然違うし、話したこともないし、わかっていたことなのにちょっとショックを受ける。
「やっぱり分からないか、話したことはないけど、同じクラスだよ、僕だよ灰城碧」
古土さんは、僕をじっと見つめた後、驚いた表情で口を開いた
「えぇ~~~~~~!!灰城、全然別人じゃん」
古土さんは僕に指を指しながら、今度は驚愕した様子で叫ぶのだった。