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お留守番はトラブル多め! 5

 あのピザ注文大作戦から二時間――待ちに待った瞬間がやってきた。


 ピンポーン。


『まいどー! ピザベース砂遊岩でーす! ご注文のピザをお届けに上がりました!』


 古びて低い音になったインターホンが鳴り終わると同時に、玄関から勝ち気な女性の声が響いた。


「きたーーっ!! はいはーい! 今行きまーす!!」


 待ちに待ったピザの到着に胸を弾ませたボクは、元気よく返事をしながら椅子から立ち上がる。

 足の裏をつるつるに変えて、まるでアイススケートでもしているかのように床を滑りながら、ルンルン気分で玄関へ向かった。


 その途中、わざとらしく拳を突き上げて意気揚々と出ていくと――


「……っ、い、イクスぅ……!」


 ルトお姉ちゃんがボクの顔を見ながら、悔しそうにぐっと唇を噛みしめた。


 なぜルトお姉ちゃんがそんな顔をしているのかといえば――もちろん、ピザの注文をキャンセルできなかったからだ。


 ――ボクときよ姉さんがピザの注文を完了させてからの三十分は、本当に大変だった。


「イクスー!! 待ちなさーい!!」

「やなこった~!!」


 ボクはスライムボディの特性を最大限に活かして、パソコンも携帯も、それから固定電話までぜーんぶ体の中に取り込み、ルトお姉ちゃんにキャンセルされないよう家中を走り回った。

 途中で翼ちゃんまで参戦してくるという修羅場もあったけど……。


「そーれ、こちょこちょこちょっ!!」

「あはは、や、やめてっ!」

「く、くすぐったいよぉ!」


 その時は体から無数の触手を伸ばして、二人を足腰立たなくなるまでくすぐり攻撃!


「くっくっくっ、残念だったね――あでゅうっ!!」


 ルトお姉ちゃんたちが笑い転げているすきに、まるで宝石を盗み出した怪盗のようなセリフを残してその場を離脱。

 そんな攻防を何度も繰り返した結果――


「……はぁ、はぁ……もう、だめ。降参……」

「……笑いすぎて、力が入らない……」


 床に寝転がったルトお姉ちゃんたちがようやく諦め、ボクは見事、勝利をもぎ取ったのだ。


 ……ただ、不満があるとすれば、ボクが必死で逃げ回ってる横で、きよ姉さんは援護もせず、途中から来た佳代子おばあちゃんと酒盛りを始めちゃったこと。

 あれは、ちょっとムカッとした。


 そんなことを思い出しながら玄関にたどり着き、扉を開けると――


 『ピザベース・砂遊岩』と書かれたエプロンをかけ、迷彩柄のバンダナを頭に巻き、大量のピザ箱を抱えた女性が立っていた。


 その女性はボクの顔を見るなり、ニコッと笑って言った。


「よっ、初めまして! スージーの母ちゃん、砂遊岩咲だよ。さっそく注文してくれてありがとね!」


 ――注文品を届けてくれたのは、スージーお姉さんの母親、砂遊岩咲だった。


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