森崎さんの訪問/ルトのステータスカードの確認
時は巻き戻り、ルトと昼食を食べた僕はテレビを見ながらのんびりしていた時、自宅に森崎さんが尋ねに来たことから始まる。
「突然来てしまってごめんね碧君。実は冒険者組合からお願いがあって、訪ねさせてもらいました」
森崎さんが僕に頭を下げた。
「いいですよ、今日は特に用事はありませんから、空ちゃんもしばらく用事で来れないようなので、家でのんびりしていただけですから」
僕はそう言って、森崎さんにお茶を出した。
今日はルトと空ちゃんの初対面になる予定が、空ちゃんに急用が出来たようで、予定が空いてしまった。
森崎さんの突然の訪問に驚きはするも、僕は驚きよりも気になる事がある。
「けど、よく自宅の場所がわかりましたね。冒険者組合には住所は記載して無かったはずですが」
森崎さんは僕に、小さく微笑むと。
「ふふっ、相手の位置がわかるスキルを、最近使えるようになりまして、こうして訪ねることが出来たんです。条件付きですけど」
なんだろう、深く聞いてはいけないと本能が警告を鳴らす。
「スキルの事は聞かない事にします。それでご用件は?」
真剣な表情になった森崎さんがバックから一枚の紙を取り出して僕に見せる。
「最近ある冒険者チームが問題になっていまして」
「その冒険者チームは何をしたんですか?」
「あるダンジョンに潜っている冒険者の目撃情報で、挑戦をしては怪我をして、撤退し、数日を挟まずに無謀な挑戦を繰り返しているチームがいると報告が上がりまして、厳重注意をする為に現場で証拠を押さえるために、私とそのダンジョンに同行してほしいのです」
「もちろんいいですけど、他にも強い冒険者の方はいなかったのですか?」
「……ここ最近まで、碧君と梢さんしか親しい冒険者がいなかった私に、同行してくれる方がいると思いますか」
落ち込んで話す森崎さんに僕は慌ててフォローする。
「大丈夫ですよ。僕が森崎さんが困った時は力になりますから」
「あいがとう。そう言ってくれるだけで嬉しいです。それで、今日もその問題の冒険者達が潜っている様で、今からそのダンジョンに同行してもらえませんか?」
「わかりました。ちょっと待っていてください、ルトを起こしてきますね」
「姿が見えないと思ってましたがお昼寝をしてたんですね」
ルトは最近、縁側で少し陰になっている部分に顔を置き、自分よりも少し大きな大根の形の抱き枕を抱きしめながら、お昼寝をする事が日課になっている。
「ルトちゃんの寝顔を見てみたいので私も付いて行きます。」
2人でルトのいる縁側に向かうとそこには。
「すぴ~……う~ん」
大きな大根の抱き枕に抱き着き、よだれを少したらしながら、数匹の野良猫と寄り添いながら眠る我が家のお姫様がいた。
「かっかわいい」
スマホで寝顔を取りながらも、森崎さんは悶えている。
「ごめんルト、起きて。森崎さんとダンジョンに出かけるよ」
優しく揺り動かしながら起こす。
ルトは小さく欠伸をし、目を擦り起きながら僕に訪ねる。
「ふぁ~……だんじょんにいくの……えいみおねえしゃんと?」
「そうだよ。今日は無茶をしている冒険者に、森崎さんが叱りに行くんだ。
「そうなの、ごめんねルトちゃん起こしちゃって、2人で私を守ってほしいの。守ってくれる?」
ルトは胸を張り元気よく答える。
「るとがおねえしゃんをまもってあげりゅ。おねえしゃんは、わるいぼうけんしゃをしかって、ゆうひにむかっちぇはしるんだよね、てれびでおぼえまちた」
覚えたことを自慢するように喋るルトに、森崎さんは戸惑いながら答える。
「夕日に向かっては行かないかな、注意しに行くだけ」
「そうなんでしゅか……でもおねえしゃんはわたちがまもりゅ」
「お願いね、あと今日はルトちゃんにプレゼントがあります」
森崎さんはポケットから1枚のカードを取り出す。
「ルトちゃんのステータスカードで~す。大事にしてね」
「わ~い、おかあちゃんとおそろいだ~」
嬉しそうに僕の周りを駆け回る。
「さっそくステータスカードを見てみようか」
ルトからカードを受け取り、確認する。
灰城ルト 女
レベル 8
職業 農家
スキル 種作成 鍬術 植物鑑定 身体強化 同調
称号 灰城碧の眷属 甘え上手 母(碧)大好きっ子
職業
農家 農業系のスキルを獲得できる。
スキル
種作成 自分が食べたことのある野菜や果物の種を作成できる。
鍬術 鍬の扱いが上手くなる。
植物鑑定 視認した植物を鑑定することが出来る。
身体強化 常に身体能力が強化される。
同調 主の一定の距離内にいると、身体能力が上がる。
称号
灰城碧の眷属 灰城碧の眷属、灰城碧の獲得したスキルの一部が使用できる。
甘え上手 甘えることが上手の証、甘える時にだけ魅力が上がる。
母(碧)大好きっ子 母(碧)が大好きな証、一定の距離にいると体力が少しづつ回復する。
「えっ、もうレベル8なの早っ!!職業も獲得してるし、鍬術って何?身体強化と同調って、つまり僕の近くにいる限り強化されるの!!僕の眷属強化の称号の効果もあるし……うん、考えるのをやめよう」
「ルトちゃん強いですね。スキルがまさに親子って感じです。……周りから見たら姉妹にしか見えませんが」
「るとはつよいでしゅか?おかあちゃんのやくにたちましゅか?」
心配そうに近づいて来るルトに、頭を撫でながら答える。
「ルトは強いよ僕の誇りだよ。だけど、役に立つ立たないじゃないよ、大切な家族にそんなこと言わないよ」
「そうですよルトちゃん、家族なんですから、支えあっていかないと。私もいずれ家族になるのですから」
「あい!おかあちゃんも、えいみおねえしゃんも、だいしゅきです」
花の咲くような笑顔で言うルトになごみながら3人で問題の冒険者たちがいるダンジョンに向かうのだった。