お留守番はトラブル多め! 1
時を戻して、碧たちがダンジョンに潜り始めた頃――。
こんにちは、翼です!
今日はお姉ちゃんたちがダンジョンに行っている間、翼はルトちゃんたちと一緒に家でお留守番することになりました!
さて、今の翼が何をしているのかというと……
「……むぅ、またナイトメアゴブリンだよ」
「えー、また~!? これでもう13枚目だよ!! こんなに買ってるのに、シークレット全然出ないね、ルトちゃん」
「ほんとだよね。……ほんとに入ってるのかな?」
居間のテレビの前で録画したアニメを見ながら、ルトちゃんと一緒に『吸血騎士リリー』のキャラクターカード付きお菓子をたくさん開けていました。
そして、食べ飽きたウエハースはそのまま食べずにお皿に積み上げて、中に入っているカードだけを2人で確認していきます。
食べ飽きたお菓子は、あとで凛お姉ちゃんにあげる予定です。
もう60個くらい買ったのに、シークレットが全然出ません! リリーの限定色違いバージョンと、特製フィギュアが当たるシリアルコード付きカード、どっちもまだ出てないの!
……はぁ。今月のおこづかい、ほとんど使っちゃったのに、全然当たらないなぁ。
空になったお菓子の袋をゴミ箱に入れながら、そんなことを考えてしょんぼりしていると――
「にゃーお」
庭の方から、のんびりと誰かを呼ぶような猫の鳴き声が聞こえてきました。
この声は、この家の裏山に住んでいるミャーさんの声です。
「わかったー。ありがと、ミャーさん!」
「にゃ~」
すぐさまルトちゃんが返事をすると、ミャーさんものんびりとした鳴き声で応えてきました。
「いいなぁ、ルトちゃん。動物ともお話できて。ミャーさん、なんて言ってたの?」
「洗濯物、乾いてるって」
ルトちゃんは動物や魔物と話せるから、正直ちょっと羨ましい。
ルトちゃんと一緒に洗濯物を取り込むために庭に出ようとした時、突然、ルトちゃんの動きが止まりました。
「どうしたの?」
「いや、ちょっと……あの二人に目を離しても大丈夫かなって」
「……あはは、心配だよね」
ルトちゃんと話しながら視線を向けた先では――
「ああ、きよ姉さん。それは進化して取らないと」
「しゃ!」
「え? うそ、そんな手があったの!?」
大きな蛇の清姫ちゃんと、ルトちゃんの妹でスライムのイクスちゃんが、ノートパソコンを囲んで夢中でゲームをしていました。
まず、スライムのイクスちゃんはルトちゃんの妹で、フィギュア作りが得意な子です。前にルトちゃんと一緒にソファで昼寝したときの様子を再現した、自分そっくりのフィギュアを作ってくれたのは嬉しかったんだけど……作るなら、もうちょっと別のシーンでもよかったんじゃないかなって、ちょっと思ったりします。
次に清姫ちゃん。もともとは普通の蛇だったのが、魔物に変化した存在で、頭がとってもいいんです。お兄ちゃんたちがいない間は、テレビドラマを見ながらお酒を飲んだり、翼がルトちゃんに貸した漫画を読んだり、時には姿を消して街をぶらついたりしているみたいです。
前に一度だけ、お兄ちゃんの家に忘れ物をしたとき、わざわざ学校まで届けに来てくれたことがあったんだけど……授業中にいきなり現れるのはやめてほしかったな。みんな、すっごくビックリしてたから……。
……でも、お兄ちゃんの家にノートパソコンが来てからの清姫ちゃんは、すっかりパソコンに夢中で、ほっとくと1日中ずっとやっているみたいです。で、それを見かねたお兄ちゃんが、「パソコンは1日3時間まで」って制限をかけたらしいです。
そして今日、翼たちがダンジョンに向かうお兄ちゃんたちを見送りしている時に、お兄ちゃんから「自分が家にいない間、ルトちゃんと翼で清姫ちゃんがちゃんと制限時間を守っているか見張ってほしい」とお願いされました。お兄ちゃんにお願いされたからには、しっかり清姫ちゃんを見張ります!
……でも、見送りのときに見たイクスちゃんの“何か企んでる顔”、あれが忘れられません! 絶対何か企んでいます。
「洗濯物を取り込んでいる間、シホちゃんに見張ってもらう?」
ルトちゃんにそう尋ねながら、シホちゃんを見れば、日が当たるソファーで気持ちよさそうに昼寝をしている。
ハーピィーのシホちゃんは、ルトちゃんの一番下の妹なはずなのに、背も高くて大人顔負けのスタイルを持っています。けど、お兄ちゃんにまだまだ甘えたい甘えん坊です。
「うんん。あんなに気持ちよさそうに寝てるシホを起こすのはかわいそうだよ」
「そうだよね。二人で素早く終わらせて戻ってくればいいだけだもんね。ちょっと離れるだけだから、時間もそんなにかからないしね」
そうルトちゃんと話しながら、2人で洗濯物を取り込みに行くんだけど、洗濯物を取り込んでいる最中に、畑の草むしりをすることをルトちゃんが思い出して、2人で草むしりを始めたんだけど……気が付けば1時間経っていて、急いで家に戻ってみれば――
「ピーザ、ピザピザ、ピーザピザ」
「しゃあ♪」(タンッ! タ、タタンッタ!)
陽気なリズムを口ずさみながら踊るイクスちゃんと、机を尻尾で叩きながら、机の上で上機嫌に体をくねくねさせて踊っている清姫ちゃんがいて、パソコンの画面には『ご注文ありがとうございました』の文字が映っていた。
なんと、清姫ちゃんとイクスちゃんはパソコンで大量のピザをネット注文していたのだった。
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