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博士と問題児魔道具ーオレちゃんに自由を!ー

 ケースから取り出された銃型の魔道具は、やんちゃな兄ちゃんみたいな電子音声で、不満げに空ちゃんに文句を言っていた。


 その電子音声は――たぶん、イクスの声を元に作られたものだろう。


 僕たちは、ただそのやり取りを呆然と見守るしかなかった。


『まったくひでぇぜ、博士。ただちょっと暇つぶしに博士のスマホを遠隔操作して、動画見たりゲームしたりして遊んでただけなのによぉ。なのにオレちゃんをケースに閉じ込めるとかさ~』


「勝手に動画配信サイトやアプリゲームでアカウント作って、私のウォレットから課金するからでしょ!? 動画サイトはプレミアムプランで登録するし、アプリに30万課金って馬鹿じゃないの!?」


『いいじゃん、ちょっとくらい! 博士は腐るほど金持ってんだし~。……てか博士のあのカオスな部屋に、オレちゃんを一日中放置する方がどうかしてるぜ?

それに博士は胸がまな板みたいにペッタンコだから心もケチくさくなるんだよ。もっとこう、ドーンと構えろっての。せめて胸だけでも立派だったら、心にも余裕が――』


「~~~~っ!!! うっさいわ!!!」


 空ちゃんはおもむろに魔道具を地面に置くと、両手でケースを持ち上げた。


『ちょ、ちょっと! 何をする気だ、博士!』


 焦った様子で尋ねる魔道具に、空ちゃんは満面の笑みで見下ろしながら答えた。


「何って、持ち上げたんだから、あとは振り下ろすだけでしょ?」


『ま、待って博士! 話し合おう!? それに、人に暴力ふるっちゃダメって親に習わなかったのか!!』


「アンタ、人じゃないから問題なし!!」


『ぎゃあああああっ!? やめてぇぇぇ!! 反省するから、それを振り下ろすのはやめてぇぇぇ!! オレちゃんのカッコイイボディに傷がついちゃうぅぅぅ!!』


 泣き叫びながら必死に懇願する魔道具に、空ちゃんは呆れ顔で問いかけた。


「……なら、もう勝手に私の携帯で課金して遊ばないって誓う?」


 そう言いながら、空ちゃんはそっとケースを地面に下ろした。


『くぅぅぅ……誓います。で、でも博士。ネット動画を見たり、無課金で遊ぶくらいならいいでしょ?』


「私が寝てる間なら、やってよし」


『やった~! 博士、話せる~♪』


 動画やゲームの許可を得た魔道具は、嬉しさのあまり、つい余計な一言を漏らしてしまった。


『さっすが博士。胸は小さいけど心は広かったんだな!!』


 その一言で、空ちゃんの動きがピタリと止まった。


「……やっぱり、お仕置きが必要みたいね……」


『え?』


 おもむろにスマホを取り出すと、空ちゃんは魔道具がやり込んでいたゲームアプリのデータを操作し――削除を始めた。


『ぎゃあああああっ!? オレちゃんの大事な生徒たちとの思い出がぁぁぁ!!』


 魔道具の泣き叫ぶような悲鳴が、ダンジョンの奥深くに響き渡っていた――。


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