古土雛サイド1
「だからもう無理だって!!周りが安全な内に撤収するよ。うちらの攻撃じゃ倒せない、囲まれたら終わりだよ!!」
うちは倒れたまま茫然としている最上の体を起こしながら怒鳴る。
このダンジョンは、広い空洞の洞窟型で、先程の魔法の衝撃音で音が反響して響き渡り、他の魔物も集まりつつある。
「雛!前からメタルアルマジロが3体来たッス」
「後ろからも天井にスモールスパイダー2体!!もうやばいの~」
スモールスパイダーは文字通りの小さい蜘蛛型の魔物だが、常に群れで行動し、吐き出される糸には微弱な麻痺毒がある、普段は臆病で近づいて来ることもないが、先程の衝撃音で興奮してるようだ。
うちの為に一緒に来てくれている、親友達が焦りながら、言ってくる。
「二人はこの馬鹿を連れて先に逃げて、うちがおとりになる」
「何言ってんの馬鹿!!雛を置いて行けないッス!」
「そうだよ!!おとりならこの馬鹿にやらせればいいの!」
親友達はそう言ってくるが、小さく頭を振って、否定する。
「こんな馬鹿でも、今まで稼がせてもらったんだ、そんなことをすれば、こいつと同じになっちゃうじゃん……嫌だようちは、だから早く行って」
「じゃあ、有難くおとりになってもらうか」
逃げるように促した時、茫然としていた最上がうちの足に目掛けてファイヤーボールを放ってきた。
「ゔっ!!最上……あんたって奴は」
足にファイヤーボールが当たり、ひどい火傷の激痛に耐えながら、最上を睨む。
「おとりになってくれるんだろ、俺様の為に」
親友達は最上の行動に抗議する。
「なんてことするッスか最上!!うっ……」
「そうなの!最っ低……」
最上は抗議する親友達の腹部を素早く殴り、気絶させる。
「悪いな、お前達もおとりになってくれ、俺様の為に、一緒なら寂しくないだろ」
最上は魔物がいないまだ通れる通路を通りこちらを振り返ることもなく駆け出して行った。
気絶している親友達を壁際に避難させ、魔物に背中を向け親友達を抱きしめ盾になる。
まだ目を覚まさない親友達に呟く。
「……ごめん、千香、凛、巻き込んで」
魔物達が目の前に迫り諦めて目を瞑ったその時。
「よいちょっと~~」
場違いな可愛らしい声と共に、魔物が倒され、進行を止めた。
「……え、一体何が」
目を開けて、うちを助けてくれた声の方に顔を向けると、そこには鍬を振り下ろしなが魔物を倒していく、肌がコバルトグリーンの少女がいた。
「ルトその調子だよ、あっよかった~、間に合って……あれ?、ひょっとして古土さん?」
「そうですけど……あなたは誰?」
先程の少女と容姿が似ていて、姉妹を思わせる、うちよりも年下であろう少女に訪ねる。
「やっぱり分からないか、話したことはないけど、同じクラスだよ、僕だよ灰城碧」
うちは以前の灰城君との外見の容姿の違いに思わず大声が出る。
「えぇ~~~~~~!!灰城、全然別人じゃん」
先程のピンチとは違う衝撃で、うちは頭を混乱させるのだった。