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Mission Start: スージーズ・アサルト! 2

「スーちゃん、ゴーレムたちだけで大丈夫なの?」


「もち。スージーズはだてじゃない」


 凛が心配そうにスージーさんに尋ねると、彼女は親指を立てて自信たっぷりに応えた。


 逆三角形の陣形を組んだゴーレムたちがゴブリンに向かって突進し、お互いの距離が一気に縮まっていく。戦闘が始まろうとした、その瞬間――ゴーレムたちの見事な連携プレーが、ぼくたちの目の前で繰り広げられた。


 なんと、ゴブリンが目前まで迫る中、先頭を走っていた“にっこり顔”のゴーレムと“目尻の下がった”ゴーレムの2体が立ち止まった。向かい合ってお互いの両手をしっかり握り、腰を落として足場を作る。すると、その手に足をかけた“怒った顔”のゴーレムを勢いよく打ち上げた。


「ギャアッ!?」


 口を開けて驚愕しているゴブリンたちの頭上を、“怒った顔”のゴーレムが飛び越える。そして――『ズザザァァー!!』という重量感のあるスライディング音を響かせながら、見事に着地した。


「ギャア!? ギャイ!?」


「ギィー……」


 ゴブリンたちは突然、ゴーレムたちに三角形の隊形で包囲される。恐怖に体をビクビクと震わせながら、パニックに陥った彼らは、密集して震えながら武器を構え、せわしなく視線を右往左往させていた。


「……」(チャキッ)


 ゴーレムたちは一斉にナイフを構えた――が、


「……ギャア?」


「ギャイ?」


「あれ?」


「……動きが止まったッスね?」


 ゴーレムたちは、ナイフを構えたままの姿勢でピタリと動きを止めた。


 ゴブリンたちはしばらく首を傾げ、動きが止まったゴーレムたちを見ると、


「……ギャア? ギャ、ギャッギャッギャッ!!」


 バカにするような表情でゴーレムたちに指を向けながら高笑いを始めた。


「……ギャア」


 そして、ゴブリンの1匹が、笑いながら一歩を踏み出し、武器をもつ手元を緩めて油断した――その瞬間。


ヒュンッ!! 「ギャアッ!!」(バタッ……)


 そのゴブリンの死角に立っていた“にっこり顔”のゴーレムが、つい先ほどスージーさん本人が見せてくれたように、ワイヤー付きのナイフを使って油断して高笑いしていたゴブリンの首筋めがけてナイフを投げつけ、一瞬で止めを刺した。


 そして、まるでかっこつけるように、片手でワイヤーをくいっと引き上げる。すると、ゴブリンに刺さったナイフが放物線を描いて空中に舞い上がり、ゴーレムはそれを華麗に『パシッ』と音を立ててキャッチする。


 まるでアクション映画のワンシーンを見せられているようだった。


「ゴーレム……すっご」


「……外見だけを真似てるんじゃないのね」


 空ちゃんと雛が、ゴーレムの動きに見入って小声でつぶやいた。


 どうやら、スージーさんの作ったゴーレムは、外見だけでなく、彼女自身の身体能力まで再現しているようだった。


 そして“にっこり顔”のゴーレムが攻撃を仕掛けたのと同時に、他の2体のゴーレムも一斉に動き出した。


タタタッ――ゴスッ!!


「ギャー!!」


 “怒った顔”のゴーレムは助走をつけて跳び上がると、ゴブリンの顔面めがけて渾身の右ストレートを叩き込んだ。


 相手を吹き飛ばすように倒すと、そのまま馬乗りになって容赦なく拳を振り下ろし続ける。


「ギャア! ギャイ……ホゴッ!?」


「ウ゛ゥー!?」


「……」


 “目尻の下がった”ゴーレムは、2匹のゴブリンの口に手を無理やり突っ込むと、口の中に入った部分だけを土に戻して気道を塞ぎ、その直後に手を再生させて、ゴブリンが土を吐き出せないように口元を強く押さえつけ、息の根を止めようとしていた。


「ギイッ!! ギイッ!!」(ゴスッ!! ゴスッ!!)


 そんなゴーレムの背後では、最後に残った1匹のゴブリンが“目尻の下がった”ゴーレムの背中に向かって、棍棒をがむしゃらに叩きつけていた。必死に仲間を助けようとしていたのだ。


「……」


 だが、痛覚もなく、内部がただの土と魔石で構成されたゴーレムには、一切通用しなかった。仲間を助けることは叶わなかった。


 そして最後に残ったゴブリンも、三方向から同時に繰り出されたゴーレムたちのナイフによる刺突によって、倒されるのだった。


 静寂が戻った森の中、ナイフを鞘に収めたゴーレムたちはスージーさんの前に整列し、揃って敬礼をした。


「「「コマンダー、ミッションコンプリートであります!!」」」(ビシッ!!)


「んっ、おつー」


 お面のように固まったその表情は変わらないままだったが、それでもぼくたちには、彼女たちがどこか誇らしげに見えたのだった。



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