集合時間と着信音
「今の時間は……13時20分か。よかった、これならここから歩いて行っても集合時間に間に合うよ」
さっきの玄関でのごたごたのせいで、間に合うかちょっと不安だったけど、大丈夫そうだ。
携帯で時間を確認して安心し、そのことをみんなにも伝えた。
「そう、ならあとはゆっくり歩いて行きましょ。凛、ミネラルウォーター出してくれない?」
「りょーかいなの~。はい、どうぞ」
「ありがと」
雛は、凛のリュックから取り出されたミネラルウォーターのペットボトルを受け取り、一口飲んでから、凛に返した。すると、凛の携帯から独特な電子音声の着信音が鳴り響いた。
『Master, you have received a message』(マスター、メッセージが届いています)
その着信音の正体は、僕の声を加工して作った電子音声だ。昔の魔法少女アニメに登場するサポートアイテムに憧れていた凛が、空ちゃんに頼んで作ってもらったものだった。
最初、空ちゃんは首をかしげながら凛の話を聞いていた……んだけど、結局、凛に巻き込まれる形で僕たち全員でそのアニメを夜通し一気見することに。そして、すっかり感化された空ちゃんがノリノリで電子音声を制作した。今では、僕たち全員の携帯が、誰かの声を加工した電子音声を着信音にしている。ちなみに、僕の携帯の着信音は詠美さんの声を加工したものだ。
さすがにそのアニメみたいにAI機能を携帯に勝手に付けるわけにはいかないので、空ちゃんは暇な時間にそのアニメを見ながら『このアニメのようなサポートアイテムに近い自作の携帯を作る』って僕たちの前で力強く宣言していた光景を僕はよく覚えている。
「碧君、集合場所にしてたダンジョンの入り口が混雑してるから、近くの公園で待ってるって。スーちゃんからメールがきたの~」
「……ああ、やっぱり混んでるのか。こんなことなら、僕たちがスージーさんの家に迎えに行く形にした方がよかったかな」
「過ぎたことはしょうがないッスよ、碧っち。……それにしても、やっぱりみんな考えることは一緒ッスね……」
「……授業の一環とはいえ、自分たちの将来がかかっているんだから仕方ないわね」
高ランクの冒険者を目指している僕たちにとっても例外ではない。
ランクの高いダンジョンに入れば当然、魔物の強さや危険な環境により命の危険も増すが、その分見返りも大きい。
魔物から取れる魔石や素材、ダンジョン固有の薬草や鉱石は貴重で、年々、それらを取り扱う企業が増えていることもあって需要はさらに高まっている。
さらに、Cランク以上のダンジョンに挑む冒険者は注目されやすく、名声を得るだけでなく、功績次第では税の優遇や免除といった特典も受けられるのだ。
将来やダンジョンの話をしながら、僕たちはスージーさんが待っている公園へと向かった。
そして、公園に到着してスージーさんを探していると――
コンッ、コロコロコロ……
「お嬢ちゃん、うまいね~」
「ああ、たいしたもんだ」
「てれる」
ゲートボールをしている老人たちに紛れているスージーさんを発見し、僕たちはそのままダンジョンへと向かっていくのだった。




