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羽根の色は、つながりのしるしーはじめまして、おばさんー

 教室に忘れ物を取りに行ったあと、御影さんたちと知り合ったりして、ここに来るまでずいぶん時間がかかってしまった。


 夏美さんと話しながら、みんなが待っている広場に到着すると――。


「きゅう、きゅあ♡」


「……ぎゅぅぅ」


 卵から孵った我が子に嬉しそうに頬ずりしながら声を弾ませ、まるで磁石にくっついた金属のように、ブルーちゃんはシホにべったりと張り付いている。


 そして、そんな彼女にあからさまに不機嫌な声を上げ、うんざりしたような顔をしているシホ。


 そんな二人の姿が目に入った。


 たとえるなら――知らない親戚のおばちゃんにベタベタ触られているような感じだろうか。


 ……本当に、実の産みの親であっても孵化の瞬間に立ち会っていなければ、赤の他人になってしまうんだね。


 生みの親に対して嫌そうにしているシホの姿を見ながら、目の前で実際に起きているハーピィ社会のシビアな現実を目の当たりにする。その一方で、ブルーちゃんが嬉しそうにシホに接している様子を見れば見るほど、彼女の孵化の場面に一緒に立ち会わせてあげられなかったことが、僕の胸を少し痛ませた。


「夏美さん、あそこにいるのがシホです」


「あらあら、ルトちゃんから話は聞いてましたけど、随分と大きな子なのね」


 そんなことを思いながらシホとブルーちゃんの方へ歩いていき、夏美さんにシホを紹介していると、シホが僕に気づいた。


「きゅあっ!!」


「きゅっ!?」


 僕の声に反応したシホは、ぴったりくっついていたブルーちゃんをぐいっと振りほどき、勢いよく僕の胸に飛び込んできた。


「きゅぅぅー……」


 一方のブルーちゃんはというと、振りほどかれたショックからか、悲しげな声をあげてうなだれていた。


 すると、遠くで見守っていたブルーちゃんの主人・飛鳥(あすか)こはね先輩と、他の魔物たちと遊びながら様子をうかがっていたルトの2人が駆け寄ってきて、ブルーちゃんを励ました。


「ブルーちゃん、元気出して、ね」


「きっと母さんが、シホとの仲をなんとかしてくれるよ」


 ルトがそう言ってブルーちゃんを励ましながら、僕に視線を向ける。


「きゅぅぅ~」


 僕はその視線に頷き、撫でられてご機嫌なシホに優しく話しかけた。


「あのね、シホ。ブルーちゃんも君の産みの親だから、仲良くしてほしいな。ほら、シホの翼の先端とか青くなってるよね? ブルーちゃんがシホの卵を産んで、魔力を送ったからだよ」


「きゅ? きゅ~……」


 シホは自分の翼の先端をじっと見つめたあと、うなだれているブルーちゃんに近づき、


「きゅっ、きゅきゅ」


 と短く鳴きながら、いやいやながらも片翼を差し出した。


「……あはは」


 そして、ブルーちゃんの傍で聞いていたルトが苦笑い。


 この後、苦笑いしたルトの様子が気になったので、あの時シホはブルーちゃんになんと言ったかと尋ねてみたら――『よろしく、おばさん』って言ってたらしい。


「きゅあ~♡」


 そして、シホが自分から歩み寄ってくれたことで元気を取り戻したブルーちゃんは、再びシホに抱きつき、嫌がるシホを無視してこれでもかと頬ずりをして、自分の娘にたっぷりの愛情を降り注いだのだが――。


「きゅっ!? きゅ、ぎゅぅぅ!!」


 もはやルトに訳してもらわなくても分かるほど、明らかに「は、離せ!」と言わんばかりに、頬ずりしてくるブルーちゃんの顔を自力で引き離そうとするシホ。


 そんな二人の親子の交流を、ブルーちゃんが満足する下校時間のギリギリになるまで僕たちは見守ることにした。


 ――その頃、他のみんなはと言えば。


「よし、完成」


「「「お~」」」


 イクスが二人の様子を写真さながらのスケッチを披露して、その場にいた全員を驚かせていた。

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