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みんなのステータスの確認-三島 千香編-

「『身体強化』のスキル以外、全部グレー表示になってる……」


 千香が『身体強化』以外のスキルが使えないという事実に僕は驚きを隠せなかった。


「いやー、面目ないッス」


 あははーっと苦笑いしながら頭をぽりぽりとかいて申し訳なさそうに答える千香。


 そんな千香を見ながら僕は、千香のステータスカードに視線を落とす。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


三島 千香


レベル 14


職業  副官


スキル 士気鼓舞 指令伝達 索敵眼 忠義の盾 身体強化


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


スキル


【士気鼓舞】


 味方の士気を高め、味方全員のステータスを一時的に強化する。


【指令伝達】


 距離や環境に関係なく、自分の声を味方全員に届けることができる。


【索敵眼】


 周囲の生命反応を察知し、一定範囲内の敵の数や位置を把握できる。


【忠義の盾】


 危険に陥った上官の目の前に転移できる。



 千香の職業『副官』のスキルを見てみると、味方の強化、情報伝達、索敵、のサポートに特化したスキル構成のようで、後々の高ランクダンジョンに挑戦するさいに彼女のスキルはとても頼もしく見える。

そして、条件は厳しいけど転移系のスキルも使えるというから驚きだ。


 ……たしか、転移系のスキルを使える人って全世界で3人しかいないと以前ネットのニュースで書かれていた気がする。それに、味方を強化できるスキル持ちもそんなにいなかったはずだ。


 僕はそんなことを思い出しながら、再び千香のステータスカードのスキルの欄を見返した。


 普通ならはっきり表示されるスキル名が、灰色になっている。


「千香はスキルが使えるようになる条件って分かってるの?」


 ステータスカードから顔を上げて、千香に尋ねてみると、彼女は顔を真っ赤にして恥ずかしそうに下を向いた。


 あれ? 僕、おかしなこと言ったかな?


 僕と千香の話を聞いていたみんなと一緒に首を傾げると、千香は顔を伏せたまま、恥ずかしそうに両手の人差し指を何度も突き合わせながら、ぼそぼそと話し出した。


「もちろん条件は分かってるッス。条件は2つあって、1つはクリアしてるッス……よ。後足りないのは職業名からわかる通り、上官とかいかにも上位職名の人の前に跪いて宣誓すればいいだけッス。碧っちなら新しい職業を獲得できるから、焦らずに気長に待てばいいと思ってたッス」


「たしかに僕なら新たに職業を獲得できるから、可能性はあるね」


 今、僕が獲得できる職業を頭に思い浮かべた。


 新たに獲得できる職業の中で、千香のスキルを解放できる可能性があるとすれば『ハートの女王』だけだ。


 ハートの女王……か。僕の持っているほぼ全部のポイントを使えば何とかギリギリ獲得できるけど、いかにも悪党って感じで、悪いイメージが強すぎるんだよな……。


 女王ってついてるくらいだから、千香のスキルを解放できる可能性があるが、『ハートの女王』っていかにもゲームや物語で悪役として登場しがちだから獲得するのをためらってしまう。


「僕が新たな職業を獲得するのはいいとして、もうクリアしているもう一つの条件って何だったの?」


 僕は千香に既にクリアしてる条件が気になって彼女に尋ねるのだが、この質問がいけなかった。


「……碧っち。ちょっとこっちに来て欲しいッス」


 顔を赤らめた千香が教室の隅に移動して、僕だけを手招きしながら呼んできた。


「みんなには言いずらいこと?」


そう千香に尋ねると、彼女は無言で頷いた。


「碧っちにだけ特別に教えるッス。そもそもこの『副官』って職業。たぶん、たぶん、ほかの人が自分と同じ職業を持ったとしても、スキルを解放できないと思うッス」


「え? どうしてそう思うの?」


「それは……その~、上位職の前で宣誓する以前に、スキルを解放できるのは、お互いを信頼する心と深い愛情が結ばれた異性としか解放できないみたいッス――ちなみに自分が条件を知ることができた切っ掛けは、その、ほら、ブルーちゃんから卵を譲ってもらう前に、2人で色々と激しく動いたじゃないッスか?」


「……? 激しく動いた?」


「もう、とぼけないで欲しいっす。夜のプロレスごっこのことッス」


「おぅ……」


 千香の突然の発言に思わず変な声が出てしまった。


 ……確かに千香とはそういうことをしてるけど、それがスキル解放に繋がったのか……。

でも、普通そんな条件、気づけるはずないんじゃないかな。


 思春期真っ只中の僕たちは当然、ルトが寝た後にやることをやっていた。


 入学試験後のパーティーの夜、我慢の限界だった詠美さんに流され、大人の階段を登ったのが始まりだった。


 それ以来、ブルーちゃんから卵を譲ってもらうまでの間は、空ちゃん以外の雛、千香、凛と週替わりで過ごし……詠美さんは毎週木曜の夜に泊まり、翌朝にはフラフラしながら朝食を作るのが日課になっていた。


 卵を孵す間は一切禁止していたが、シホ誕生を機に解禁。今後の体力が心配だが、深く考えるのはやめておこう。


「碧っちと愛し合ってしばらく経ったその後に、何となく自然と分かったッス」


「えぇ……、じゃあ、それまでは何にもわからなかったってこと? 条件厳し過ぎない?」


「ホントにノーヒントだったッス。だから、たとえ条件がクリアできたとしても、2つ目の条件に合わなかった時点でお終いっス」


 千香は僕にそう言いの終えると、自分の席に座り「うー、恥ずかしいッス」といいながら机に顔を伏せて、足をバタつかせる。


 普段からは想像できない千香のそのあまりの恥ずかしがる姿に、どんな話か気になっている空ちゃんが僕に視線を向けてきた。


 やばい、空ちゃんがニヤニヤしながらこっちを見ている!


「さ、さあ! 次は凛のステータスカードを見せてもらおうかな!」


 俺は慌てて強引に話を逸らした。


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