表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
143/170

みんなのステータスの確認-古土 雛編-

「うちのステータスを見ても笑わないでよ。味気ないっていうか……地味なスキルだけだから」


 雛はそう言いながら、自分の髪の毛先をいじりつつ、不安げに僕たちを見た。


 みんなで雛のステータスカードを覗き込んだ。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


古土 雛


レベル 15

職業  採取者

スキル 地形順応 精密採取 自然の導き 採掘職人 身体強化


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


スキル


【地形順応】

 険しい地形や森林でも移動しやすくなる。


【精密採取】

 壊れやすい素材を傷つけずに回収できる。


【自然の導き】

 希少な素材の場所を直感的に察知できる。


【採掘職人】

 良質な鉱石が手に入りやすくなる。


「飛騨君が見たら、絶対羨ましがるスキルだね」


 僕は雛のステータスを見て、なるほどと納得した。『採取者』という職業には、採取物を傷つけずに回収できる効果があるらしい。


「なるほど、これなら雛が採る素材がいつも綺麗な理由も納得だ」


 僕が何気なく独り言を呟いて頷いたのを、雛は違う意味に受け取ってしまったみたいだ。


「やっぱり地味だよね……。それに、戦えないし――自分の身を守ることもできない……。あのクソ玲次が私たちを囮にして、碧君に助けられるまでの数分間、嫌というほど思い知らされたわ」


 雛は、僕が救出するまでの時間を思い出したのか、少し肩をすくめながら、力なく笑った。心なしか最後の方は、わずかに涙声だった。


 雛の震える手を見て、胸が締め付けられる。こんな顔、彼女には似合わない。僕は迷わず、そっと優しく両手を包み込む。


「……碧君?」


 彼女を安心させるように、僕は雛と見つめ合いながら真剣に話した。


「……そんなことないよ、雛。すごく役に立つスキルばかりじゃないか。たとえ戦闘スキルがなくたって、その分、戦闘は僕が頑張ればいいだけなんだから」


 僕の言葉に続くように、空ちゃんたちも声を上げる。


「そうですよ、雛お姉様。合同ダンジョン探索までに間に合うかわかりませんが、お姉様専用の武器を作ってみせますから」


「そうッスよ、雛っち。雛っちは自分のスキルを地味だと思ってるみたいッスけど、そのおかげで魔物の素材を売ったお金で翼ちゃんの治療費を稼げたじゃないッスか」


「雛は自分のスキルに誇りを持ったほうがいいの~」


 僕たちの言葉に、雛の表情が少し和らぐ。

戸惑ったような顔をしていたが、やがて、ふっと小さく笑った。


「……ありがとう、みんな」


 その笑顔を見て、僕も安心した。すると、雛はふいに僕の後ろへ回り込み、まるで引っ付き虫のように無言で抱きついてきた。


「ひ、雛?」


 びっくりして振り向こうとするが、柔らかい感触が後頭部を包み込んだ。

雛の腕が僕を逃がさないようにしっかりと回され、そのままぎゅっと抱きしめてくる。

ほんのり温かい体温が伝わってきて、少し照れくさくなった。


「……ちょっとだけ、こうしててもいい?」


 小さな声でそう囁かれたら、拒む理由なんてない。僕は軽くため息をついて、そっと雛の手に自分の手を重ねた。


「みんなが見てる前だけど、いいの?」


「……うん。今回だけ」


 そんな僕たちの様子を見て、空ちゃんたちはニヤニヤしながらこっちを見ているが、今は気にしないでおこう。


 クラスメイトたちも、僕と雛が恋人同士だということはもちろん知っているし、普段から他の恋人たちといちゃつく姿も見慣れている。だからこそ、こうして雛を優しく慰めている様子を見ても、特に驚きはないのだろう。


 それどころか、僕が誰に対しても変わらず大切に接しているのを知っているからか、どこか感心したような雰囲気すら漂わせながら、気づかないふりをしてくれているようだった。


「雛の気持ちが落ち着いたところで、次は千香の番でもいい?」


「もちろんいいッスよ、碧っち」


 僕は雛の手を握ったまま、次は千香のステータスカードを確認する。


 机に置かれた千香のステータスカードを覗き込んだ瞬間、思わず目を見開いてしまった。


「『副官』……? すごくユニークな職業だね。一体どんなスキルが使えるの?」


 僕がその言葉を口にすると、千香は苦笑いを浮かべながら困ったように頭を掻いた。


「実は雛よりも自分の方がヤバいッス。なんせ『身体強化』以外スキルを使えないッスから」


「えっ……!? マジで!?」


 千香の話を聞いて、驚きのあまり、つい教室にいるにも関わらず叫んでしまった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ