みんなのステータスの確認-最上 空編-
普段なら放課後の教室は次第に静かになっていくが、今日は合同ダンジョン探索の話し合いで賑わっていた。
「あ、此処なんて俺たちに最適な場所じゃないか……」
「そこはここが沼地になっているから危険よ……」
僕の近くのクラスメイトたちは、机に広げたゴブリンのダンジョンの地図を指でなぞりながら作戦会議をしていた。
シホは迎えに来てくれたルトとイクスに預け、ひと足先にブルーちゃんのいる広場へ向かった。ブルーちゃんは、卵から孵ったシホに会いたくてそわそわしているらしい。
さて、僕たちもお互いのステータスを確認しようか。昼休みのときと同じように机を並べ、ステータスを確認する準備をした。
「最初は誰のステータスから見る?」
「はーい! じゃあ、まずは私のステータスを見せますね」
僕がみんなに問いかけると、空ちゃんが手を上げて元気よく答え、自分のステータスカードを皆に見えるように並べた机の中心に置いた。
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最上 空
レベル 18
職業 開発者
スキル 発明の祝福 設計眼 量産技術 身体強化 忍び足 嗅ぎ分ける
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スキル
【発明の祝福】
月に一度、低確率で画期的な発明を生み出す。
【設計眼】
物体を見ただけで構造や欠陥を分析できる。
【量産技術】
自分の発明品を短時間で大量生産できる。
【忍び足】
足音を抑え、移動時の振動や気配を最小限にする。
【嗅ぎ分ける】
特定の匂いを嗅ぎ分け、人物・物質・魔物を探知できる。
「称号は恥ずかしいから、ひ・み・つ♪」
空ちゃんは人差し指を振りながら小悪魔的な笑みを浮かべる。
「へえー、うちたちとあんまりレベル変わらないのね。空がステータスカードを作ってるって聞いたからもっとレベルは高いと思ったわ」
「レベル20以上いってると思ってたッス」
雛と千香が空ちゃんのステータスカードを見て意外そうに言葉を漏らす。
「そんな時間なんてありませんよ、お姉さま方。1秒でも早く碧お兄ちゃんのところに帰る為に、ステータスカードの開発と研究に集中してましたからね――レベルを上げてる暇なんてありませんよ!!」
空ちゃんはキリッとした表情で胸を張る。
「やっぱり愛の力ってすごいの~」
「ラブ、パワー」
その話を聞いた凛とスージーの2人は、お互いの手を合わせてハートマークを作った。
「えへへ……もう、からかわないでくださいよ~」
2人にからかわれ、空ちゃんは両手で頬を押さえながら、上半身をくねらせて恥ずかしそうにする。
僕も空ちゃんの思いを聞いて、思わず顔を赤らめた。
まあ、称号を隠すのはいいとして、僕には彼女のステータスで気になることがあった。
「空ちゃん、今回は皆のステータスを知りたいだけだから称号については無理に聞かないけど――この『忍び足』と『嗅ぎ分ける』……? これも『開発者』のスキルなの?」
「えっ……?」
僕の質問に空ちゃんは一瞬呆けた顔をして、自分のステータスカードを確認すると、手をあたふたさせながら焦り出した。
「も、も、もちろんだよ、碧お兄ちゃん! け、研究のために足音を立てないようにしたり、匂いを……えっと、嗅いでたりしてたら……いつの間にか……!」
「ふーん……そうなんだ……まあ、今は深く追求しないでおくよ」
「ふぅ……」
僕がそれ以上追求しないことを伝えると、空ちゃんは明らかにホッとした様子で胸を撫で下ろした。
「じゃあ、次はうちがみせるわ」
みんなが空ちゃんのステータスを確認し終え、一息ついたところで、雛が財布からステータスカードを取り出した。




