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眠るシホと登校日 

 登校時間になり、戸締りをルトとイクスに任せて、先に家を出た。集合場所にしているコンビニで空ちゃんたちと合流すると、僕は挨拶を交わしながら話を切り出す。


「おはよう、みんな。ついにハーピィーの卵が孵ったから紹介したかったんだけど……」


 ふと背中に意識を向けると、抱っこ紐で背負ったシホが口元によだれを垂らしながら寝言をつぶやいて爆睡していた。


「すぴー……むにゃむにゃ……きゅ~……」


 シホを空ちゃんたちに紹介するつもりだったが、朝食後すぐに眠ってしまったため、卵のときと同じように彼女を背負ってここまで歩いてきた。


 家の静かな場所とは違い、学校に近づくにつれて人が増え、車の音や通行人の話し声などが賑やかになっていった。途中でその騒がしさにシホが目を覚ますかと思ったが、まったくそんな様子はなかった。


 ここまで来る途中、通学路沿いの平屋に住む、ルトとイクスが会うたびによく飴をくれる近所のおばあちゃんに「これが、あの卵から生まれた子かい? 随分大きな子だね」と目を見開いて驚かれたり、通学途中の小学生たちから「僕たちよりも大きいのに、何でこの子はおんぶされてるの?」と疑問を投げかけられたりと、他にもいろんな人に声を掛けられて大変だった。


「ほほ~、この子の顔はブルーちゃんにそっくりだけど、やっぱり碧お兄ちゃんの魔力の影響を受けて髪は銀髪なんだね。それで、碧お兄ちゃん、この子の名前はなんて言うの?」


 空ちゃんは感想を漏らしながら、眠っているシホの頬を指でつんつんと突き、僕に名前を尋ねた。


「シホって言うんだよ」


「へ~、シホちゃんって言うんだ~」


 そう言いながらも、頬を突く手を止める気配はない。そのせいか、シホが小さく身をよじるようにしながら「きゅうぅぅ~……」と寝苦しそうな声を漏らした。


「空ちゃん、シホが嫌がってるからほっぺを突くのをやめてあげて」


「……もうちょっとだけ」


 そんな様子を見かねた雛が、少し眉をしかめて空ちゃんを止めに入る。


「空、シホちゃんが嫌がってるでしょ。やめなさい」


「あはは、こんなにぐっすり寝てるから、ちょっとイタズラ心に火がついちゃって」


 空ちゃんは片手で頭を掻きながら、舌を出して「てへっ」と笑った。その無邪気な仕草に、思わず苦笑してしまった。


「それで、碧っち。授業中、シホちゃんはどうするつもりッスか?」


 千香が首を傾げながら尋ねてくる。


「シホちゃんを背負ったまま授業を受けるつもりなの~?」


 凛も続けて質問する。


 僕は背中で眠るシホの寝顔を見て、思わず微笑んだ。


「ちょっと迷惑になるかもしれないけど……」


 そう言いながら、シホの頭をそっと撫でる。


「目を覚ましたときに僕がいなかったら、シホが不安になると思うから、このまま背負ったまま授業を受けることにするよ」


 僕がそう答えると、千香はニコッと素敵な笑顔を見せて答えた。


「碧っちらしい答えッスね。何かあったときはもちろんサポートするッスよ」


 凛ものんびりとした口調でもしもの時に協力を申し出てくれた。


「シホちゃんのためにもそれがいいと思うの~。もちろん私も協力するの~」


 二人の質問に僕はそう答えると、空ちゃんと雛が感想を漏らした。


「……さすが碧お兄ちゃんだね、男なのにすっかり母親目線だよ。ルトちゃんとイクスちゃんを甘やかして育ててるだけあるね」


「そうね~。でもそこが碧君らしくていいんじゃない。ほら、そろそろ移動しないと授業に間に合わないわよ」


 そんな話をしながら、僕たちは学校に向けて歩き出した。シホが揺れないよう気をつけながら、僕は慎重に一歩一歩進んでいくのだった。



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