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とある雑誌記者の突撃取材の代償 2

「おいっ! おいおいおいっ! まじかよっ! 何でこんなところに魔力草が生えてんだよ!」


 俺は今、灰城碧の家にさっさと突撃取材をして終わらせようとしていたのだが、ふと道の途中でヤギが無我夢中で食べていた物を見て、思わず叫んでしまった。


 魔力草――主に魔力が溢れているダンジョン内にしか生えない薬草だ。食べると苦味のある少し癖の強い味が特徴だが、その味に癖になる人もいるらしい。驚くべきはその効果。名前の通り魔力を含んでおり、飴に加工して口に含めば徐々に魔力が回復するという優れものだ。しかも、ダンジョンでしか採取できないため、葉っぱ一枚だけでも相当な価値がある。


 そんな金になる薬草がそこら中に生えているとなれば、やることは一つだ。


「あはははっ! 取り放題だぜ! これは全部俺のもんだ!」


 笑いながら辺りに生えている魔力草を手当たり次第に鞄に詰めていく。鞄がパンパンに膨らんでもまだ足りない。周囲にはまだまだ魔力草が生えており、笑いが止まらなかった。


「ただ取材に来ただけのつもりが、とんだ儲けもんだぜ! 一体いくらになるんだ! 最高だぜ、灰城碧!」


 実は、山口五郎が前回の取材で問題行動を起こした原因は、その手癖の悪さにあった。前回の取材では、ダンジョンから戻った冒険者にインタビューしながら、彼らの魔物素材をこっそり盗もうとしたのだ。それを目撃され、会社から自宅謹慎を言い渡された経緯がある。


「……ん?」


 視線を感じて顔を上げると、辺りは異様な静けさに包まれていた。まるで時が止まったかのように、動物たちの鳴き声一つ聞こえない。むしろ、怒りを含んだ視線が全身に突き刺さるようで、監視されている気分だった。


「なんだよ、お前ら。人間様に文句でもあんのか?」


 俺は苛立ちながら手を振り、動物たちを追い払おうとする。だが、動物たちは動かないどころか、低い唸り声を上げ、俺を睨み続けている。


「何だ、その目は。人間様に逆らおうってのか? なら、これでも食らってみるか!」


 俺は手の平の上に鋭い氷の塊を出現させ、動物たちに向けて威嚇する。


 実は、こう見えて俺は氷魔法を使える冒険者だ。本気を出せばAランク冒険者にだってなれる実力がある。だが、ダンジョンでの素材集めや他の冒険者とのやり取りに嫌気が差し、今の出版社にスカウトされた。そこで記者として働きながら、冒険者たちが持ち帰る素材を取材中に盗む方が楽だと考え、行動してきたのだ。


「じゃあ、お望み通り、人間様に立てついた報いを受けさせてやるよ!」


 そう叫び、動物たちに向けて魔法を放とうとした瞬間、突然霧が立ち込めた。睨みつけていた動物たちの姿は、霧に飲まれて消えてしまった。


「ちっ! なんだよ、この目障りな霧は!」


 苛立ちながら、俺は無差別に氷魔法を放った。



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