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ルトの一日 15

「それで、空お姉ちゃん。どうして母さんの髪の毛が宝物なの?」


「ふっふっふっ、ルトちゃん、今から面白いものを見せてあげる」


 私は試験管の中の神秘的な母さんの透明な髪の毛から目が離せず、目を輝かせながら空お姉ちゃんに尋ねると、空お姉ちゃんは私の手からそっと試験管の上部分を摘まんで抜き取った。


「さぁ、この試験管に取り出したるわ、碧お兄ちゃんの神秘的な透明な髪の毛!」


「え……手品風?」


 空お姉ちゃんはまるで今からマジックショーをするかのような喋り方で、大げさに試験管の中から母さんの髪の毛を取り出して見せた。その様子に、私の頭の中でテレビのマジックショーのお決まりのBGMが流れ始める。心なしか、空お姉ちゃんが頭に被ってる母さんのパンツが帽子に見えてくる。


「いい、ルトちゃん。今からこの髪の毛に魔法をかけるよ。いち、にの、さん!」


 空お姉ちゃんが母さんの髪の毛を私の目の前に見せながらカウントダウンを言い放つと、私は目を見開きながら言葉を失った。


「……え!? 母さんの髪の毛が光った!? しかも銀色じゃなくて黄色!?」


 なんと、母さんの透明な髪の毛が黄色に光っていたのだ。


「どお、ルトちゃん。驚いたでしょ? 碧お兄ちゃんの髪の毛に魔力を流すと、髪の毛が光るんだよ。しかも、魔力を流す人によって髪の毛の光る色が違うんだよ。すごいでしょ?」


「うん! すごい、すごい! 私もやってみたい!」


 私はすっかり眠気が吹っ飛び、わくわくしながら空お姉ちゃんから母さんの髪の毛を受け取り、自分の魔力を注いでいくと、私の手の中の母さんの髪の毛は自分の肌の色と同じエメラルドグリーンの輝きを放った。


「どお、ルトちゃん? これでなんで私が碧お兄ちゃんの髪の毛を宝物って呼ぶかわかったでしょ?」


「うん。空お姉ちゃんが母さんの髪の毛を宝物って呼ぶ理由がよくわかった……でも、母さんの髪の毛が光るなんて、よくわかったね」


 私が空お姉ちゃんに母さんの髪の毛が光る切っ掛けを聞くと、お姉ちゃんは自分の頭を掻いて苦笑いしながら、気まずそうに答えた。


「いや~、それがね。お兄ちゃんの髪の毛が光るって知ったのは、実は最近なんだ」


「え? そうなの?」


「うん、そうだよ。切っ掛けは、私が国の依頼で作った魔道具に魔力を流していた時のこと。ふと気づいたら、服の袖に付いていたお兄ちゃんの髪の毛がピカッと光ってたんだよね。……で、初めて碧お兄ちゃんの光る髪の毛を見た瞬間、つい魔物だと勘違いしちゃってパニックになっちゃって、思わず国に依頼されて作った大事な魔道具を、壁に向かって全力でぶん投げちゃったんだよね……。いや~、あれは本当に恥ずかしかったな……」


 そうして空お姉ちゃんの恥ずかしいエピソードを聞いていると、お姉ちゃんは自分で言ってて恥ずかしくなったのか、珍しく顔を真っ赤にさせながら慌てて自分の荷物を抱きかかえて立ち上がると。


「それじゃあ、ルトちゃん、まだ、お兄ちゃんのことについて話してあげたいことは山ほどあるけど、もう遅いからまた今度ね。お休み!」


「えっ!? ちょっと、空お姉ちゃん!? 行っちゃった……」


 空お姉ちゃんは私の返事も待たずに、洗面所からそそくさと出て行ってしまった。


 私はその後ろ姿を見送りながら、「空お姉ちゃんにも恥ずかしくなることがあるんだな……」と密かに微笑む。


 その夜、母さんの光る髪の毛の秘密についてもっと知りたいという気持ちが高まり、なかなか寝付けなかった私は、人生で初めての寝坊を経験するのだった。


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