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ルトの一日 12

 母さんのおかげで佳代子おばあちゃんの逃亡を阻止することに成功した後。


「それじゃあ夏美さん、みんなが待っているので僕たちは失礼しますね」


「夏美さん、さようなら」


 母さんが夏美さんに軽く頭を下げて挨拶を交わすのを見て、私もそれに倣って頭を下げる。


「……ええ、二人ともまた明日。私はこれから気絶しているこの人に、じ~っくりと話を聞いてもらわないといけませんから」


 私は、冷酷な笑みを浮かべる夏美さんの挨拶を聞きながら、ちらっとその脇に抱えられた佳代子おばあちゃんを見る。


「………」


 気絶している佳代子おばあちゃんは、まるで荷物のように夏美さんに片手でがっちりと抱えられており、くの字にだらりと力なく垂れた両手両足が空中でぷらぷらと左右に揺れている。その様子をちらりと見て、私は母さんと一緒に学園長室をそっと後にした。


 私と母さんが広場に到着すると、母さんが私の持っていた紙袋を代わりに持ってくれた。


「それじゃあルト、僕は向こうにいる先輩方と話してくるから」


「うん、わかった」


 母さんはそう言って、広場の隅に設置されているベンチに座って談笑している空お姉ちゃんたちと上級生の先輩たちの方へ向かって行った。


 私はというと、広場で仲良く集まって遊んでいる様々な種類の友達の魔物たちに軽く呼びかけながら向かっていると、私の声に気づいたイクスとブルーちゃんが、すぐにこちらに向かって来た。


「もう、ルトお姉ちゃん、やっと来た! 今日は来るの遅かったけど、何かあったの?」


「ピュィ! ピュピュイ!」(ルト! 来るの遅い!)


 いつもより遅れて来た私を心配して首を傾げる妹のイクスと、自分の翼を大きく広げて「遅い」と抗議するハーピィーの友達、ブルーちゃん


「ごめんね、二人とも、佳代子おばあちゃんが逃げようとしたから来るのに時間が掛かっちゃった」


 二人に謝りながら、私はイクスと離れてからの出来事をかいつまんで説明していくと……。


「……ルトお姉ちゃん、次からは僕も一緒に佳代子おばあちゃんを見張ろうか? 話を聞いてるとお姉ちゃん一人じゃ大変そうだし」


「ピュ! ピュイ! ピュピューイ!! ピュア!! ピュイ!!」(ルト!! わたしも手伝う!! 佳代子おばあちゃんっていうのは、前にここに遊びに来たあのちっこい人間だよね!! 私なら捕まえるの楽勝だよ!!)


「ありがとう、二人とも。じゃあ次は三人で佳代子おばあちゃんを見張ろうね」


「了解!」


「ピィ!」(まかせて!)


 三人で佳代子おばあちゃんを見張ることを約束していると、母さんが私たちに手を振って呼ぶ声が聞こえてきた。


「ルト~、イクス~、そろそろ帰るよ~」


「はーい、わかったよ、母さん! 今行くー! ……イクス、今日はもう帰る時間だって」


「う~い、わかった」


 まだ遊び足りない様子の妹は、自分の手を頭の後ろに組みながら名残惜しそうに私に渋々返事を返し、私とイクスはブルーちゃんや広場にいる他の魔物の友達に別れの挨拶をする。


「ブルーちゃん、みんなまた明日!」


「じゃあね、バイバーイ!」


 そして、挨拶を済ませたあと、私とイクスは沈んでいく夕日を見ながら、手をつないで仲良く母さんのもとへ向かうのだった。


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