ルトの一日 1
「ふぁ~……」
私は日が昇り始めると同時に目を覚まし、欠伸をしながら布団から起き上がり、瞼を擦った。
「う~ん……よし! 今日もがんばるぞ!!」
ググッと大きく背伸びをして体を覚醒させると、パジャマ姿から着替えて一階に降りた。そこでは、妹のイクスが居間の机で趣味のフィギュア制作に没頭していた。イクスはスライムという魔物で、睡眠を取る必要がないのだ。
「……あ、ルトお姉ちゃん、おはよう。ちょっと待って、もうすぐで完成だから……」
イクスは私に挨拶しながらも手を止めることなく、熱心にフィギュア制作を続けていた。
暇を持て余していたイクスが、たまたま深夜番組で見たプラモデルやフィギュアの紹介番組がきっかけで、暇つぶしに始めたフィギュア制作。しかし次第に物作りの楽しさにのめり込み、今では私たちの相部屋にフィギュア専用の棚があり、数えきれないほどのフィギュアが並んでいる。フィギュアの八割は、母さんの日常生活を再現したジオラマで、見ていて飽きないし、どこか安心感がある。
「おはよう、イクス……これまた随分と大きな母さんのフィギュアだね。本当に生きてるみたいだよ」
私は挨拶をしながら彼女の元に近づき、今彼女が作っているハーピィーの卵を背負いながら料理する母さんのフィギュアに驚き、まじまじと見つめた。
「空お姉ちゃんに母の大きいフィギュア作りを頼まれたんだ……よし、あとは先に作っておいた台所のジオラマのセットにこのフィギュアを配置させてっと完成!! 母の日常生活メガフィギュアシリーズ第一弾タイトルは『母の料理風景』だよ。ちなみに母が背負っているハーピィーの卵の部分は着脱できるようにしたんだよ凄いでしょ!!」
「わー凄いねイクス!! それじゃあそろそろ畑のお世話をしにいこっか」
「はーい」
楽しそうに私に説明しながらはしゃぐ妹の姿を微笑ましく思い、優しく妹の頭を撫でて、二人で庭の畑へと歩き出した。
そして、イクスと二人で二時間の間畑の世話をしていると、手に暖かい濡れタオルを持った母さんが私たちを呼びに来た。
「おはよう。ルト、イクス朝食が出来たよ」
「おはよう、母さん」
「母、おはよう!! ねぇ母、ボクが作った作品見た? 凄いでしょ!!」
「うん、もちろん見たよイクス。凄く良くできていたね。……フィギュアの背中に背負っている卵の部分が取れるようになっていて驚いちゃったよ」
母さんは私たちに近づくと、暖かい濡れタオルで畑仕事で汚れた顔や手を優しく拭き取ってくれる。以前は母さんが浄化スキルで顔や手を綺麗にしてくれていたけど、少し前にテレビで放送していた家族のドキュメンタリー番組を見て、その暖かな家族の交流を見て、母さんに甘えたくなった私たちの頼みで、スキルを使わずにタオルで顔などを優しく拭いてくれるようになった。
そうして私たち二人は母さんと家に戻って朝食を食べると、学校に行く母さんを見送って、朝食の後片付けを済ませて、家の鍵を閉めるとイクスと二人で手を繋ぎながら冒険者組合に向かった。




