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結菜と恋人になった後 5

「うし、結菜のことも解決出来たし、京子を呼び出すために嬢ちゃんたちにも魔力を使わせたしな、その分も含めて改めてお礼に上乗せしねーとな。……この、へたってるバカはほっとけ」


 梅花さんが振り返った先には、未だに床に崩れたままの辰則さんがいた。


「ぎょうご、わじのぞんざいっでいっだい……」


 辰則さんは京子さんにぞんざいに扱われたことがショックで立ち直れておらずガラガラ声でブツブツと独り言を呟いていた。梅花さんはそれを気にせず話し続けている。


「あの~、梅花さん。結菜の件が無事に解決したことで僕たちは満足してるんですけど……」


「いいや駄目だぜ碧。それじゃあ、恩を受けた獅子蕪木組としての面子が立たねぇよ。あたしらを恩を返さない恥知らずにするつもりかい? だから、ここは獅子蕪木組の為を思って素直に受け取ってくれればいいんだよ、それがお互いの為だ。さて、何がいいか……」


(……恩を返す為か、そう言われると断りづらいかな)


 僕はそう心の中で思いながら、悩んでいる梅花さんを見ていると、僕の後ろでまだ体調が戻っていない空ちゃんが気持ち悪そうに顔を青くしながら手をあげる。


「あ~、それなら、碧お兄ちゃんの家の周辺の土地を安く購入したいかな、私が土地の所有者を調べたら『獅子蕪木不動産』ってなってたから獅子蕪木組が経営してるんだよね? う~、目が回る……」


 空ちゃんは僕のとなりに移動しながらする発言に、確か道沿いに『獅子蕪木不動産』と書かれている小さな看板があったこと思い出す。


「うん? そうなのか事までやっているのかい、結菜?」


 梅花さんは首を傾げながら結菜に聞くと、彼女は顎に手を添えて考え込みつつ答える。


「……ええ、確かに獅子蕪木組は不動産も経営していまよ梅花様。他には解体業とか小さなホテル経営など大小様々です」


(へぇ~、色々幅広くやっているんだね。凄いな獅子蕪木組)


 僕は結菜の話を聞いて、そう思いながら感心しているが、梅花さんは見るからにため息を吐いて落ち込んでいた。


「はぁ~……。まさか、あたしが築き上げた歴史ある獅子蕪木家が商売を始めるなんてね……時代の流れを感じて、落ち込んじまうよ」


 肩を落として落ち込んでいる梅花様に結奈が梅花さんの手を握りながら励ます。


「そう落ち込まないでください、梅花様。これからは、あたしがアニキたちと一緒にダンジョンで活躍してランクを上げ、獅子蕪木家の名誉を回復させていきます。そして、ランクを上げると同時に魔力も鍛えて、梅花様やお袋が一日中この世に留まれるように頑張りますから。」


「……本当かい結菜!? その言葉、忘れるんじゃないよ! いや~、なんて出来た子なんだい、あたしは嬉しいよ。あたしと京子二人を同時に召喚しながら一週間この世に留まるように頑張ってくれるなんてね」


 梅花さんは先程の落ち込んでいる様子が嘘のようにケロリと代わり、結菜にさりげなく一日を一週間と言い直して無茶な要求をし始める。


「え!? 二人同時に一週間!? 一日だけならまだしも、1週間は流石に無理じゃ……」


 怖気づいてしまう結菜に梅花さんは結菜の両肩に手を掴みながら詰め寄って、更に彼女に追い打ちをかける。


「今さっき、お前はあたしに頑張るって宣言したじゃねぇか。一日なんて言わずに、一週間と大きな目標を掲げた方がいいだろ。まだ始めてもいないのにうだうだ言うんじゃねぇ! わかったら返事!!」


「は、はい!! わかりました梅花様!! あたし死ぬ気で頑張ります!!」


「良し! いい返事だ結菜、頑張ってくれよ」


 梅花さんはニヤリと笑みを浮かべて結菜の頭を乱暴に撫でてながら応援し、話を聞いていた僕たちの方に顔を向ける。


「それじゃあ、話に戻るが……うちが所有している土地を安く買いたいんだったな、だったら碧の家周辺にある獅子蕪木組所有の土地をタダでやることにするよ。はい、決定」


「よかったですね、アニキ」


「え!? 周囲の土地全部タダですか!? いったいどのくらいあるの!?」


 パチパチと結奈が拍手を送り僕が慌てて叫んでいる中で、一番喜んでいたのは、後ろで千香の介抱をしていたルトだった。


「やった~!! これでたくさん野菜や果物をもっと作れるぞ~」


 ルトが嬉しそうに飛び跳ねながら踊る声に正気に戻った辰則さんが話を聞いて、梅花さんに抗議するのだが、『話に参加しなかったお前が悪い』と一蹴されて落ち込む辰則さんに申し訳なかった僕は、そっと辰則さんを魔法で治療して、獅子蕪木組の一連の騒動も、これでひとまず終わりを迎えたのであった。


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