結菜と恋人になった後 2
「う~ん……、学校にいる間の条件の取りやめか……」
辰則さんは目を瞑り眉をひそめ、両腕を組んで唸る。部屋にはしばしの沈黙が訪れる。
「……はい、このままでは結菜が可哀想です」
「あたしからもお願いだよ、親父……もう、クラスで一人ぼっちは嫌なんだよ」
「でもな……クラス全員がステータスを持ってるんだろ? もし、何か事故が起きて、結菜に何かあったらと思うと……」
僕と結菜の訴えに、辰則さんは渋い顔をしながら答え、その辰則さんの物言いに傍で僕たちの話を静かに聞いていた梅花さんが援護をしてくれる。
「辰則……あたしも学校での結菜の様子を傍で見てたんだけどさ……あれは酷いわ、とっとと止めさせな、心配し過ぎなんだよ」
「……でもよご先祖様。結奈は京子が残してくれたわしら獅子蕪木組の宝なんだぞ、万が一何かあったら…あの世に逝った京子に合わせる顔がねえ」
そう言って未だに渋って認めようとはしない辰則さんにしびれを切らした梅花さんが呆れ果てながら。
「頭の固い奴だねー辰則……それならあたしにも考えがある。おい、嬢ちゃんたち、ちょっと魔力を貰うぞ」
梅花さんが僕の後ろで並んで座っている空ちゃんたちに近づき、順番に彼女たちの肩に手を置いて魔力を吸い取っていった。そして、指を鳴らすと、梅花さんのそばに新たなスケルトンが召喚され、瞬く間に黒い炎に包まれて姿を現したのは、結菜に似た黒髪の長いポニーテールをした大人の女性だった。
「久しぶりだね、あんた……それに結奈も元気だった?」
現れた女性は辰則さんと結菜にそう言って顔を綻ばせながら尋ねると、二人はポカンと口を開いて驚き、ゆっくりとで女性に近づき。
「え……きょ、京子」
「お、お袋」
「ふふふっ、なによ二人そろって変な顔して」
女性は二人の驚く様子にクスクスと笑うと、辰則さんと結菜は女性に抱き着いて号泣する。
「きょ、京子~~!! わしはお前とまた会えるなんて嬉しいぞ~!!」
「あたしもだぜお袋~~!! 会いたかったよ~!!」
僕たちがいるのに、二人は子供のように号泣しながら女性に抱き着いており、抱きしめられた女性は困った顔をしながらも、二人を優しく包み込んだ。
「……もうっ、あなたも結奈も泣かないでよみっともない……私も二人にまた会えて嬉しいですよ」
三人が感動の再会をして抱き合っている最中に、梅花さんは僕たちの傍に来て深いため息を吐き、号泣している二人の代わりに、僕たちに紹介してくれた。
「ふぅ……埒が明かないから本人に来てもらったよ。もう話を聞いてもう分かっていると思うが、あの人は辰則の嫁であり、結奈の母親の京子だよ」
なんと、現れたのは結菜のお母さんだった。




