プロローグ
初心者です、のんびり投稿します。
拙い文章ですが完結出来るように頑張りたいと思います。
よろしければ、いいねを押していただけると嬉しいです。
灰城碧 ほんの数年前、世界中の至るところに突然ダンジョンが現れた。それと同時に、ダンジョンから現れた魔物が人々を脅かし、世界は未曾有の危機に直面した。しかし、ある人物が開発したステータスカードの存在によって状況は一変した。
このステータスカードにより、一部の人々にRPGゲームのような『ステータス』が存在することが確認されたのだ。人々はステータスを獲得した者たちを冒険者と呼び、冒険者たちは自分が覚醒した職業のスキルや魔法を巧みに使い、魔物たちを討伐していった。最終的に、世界は冒険者たちによって守られ、人々は誰もが冒険者を目指すようになったのだ。
そんな『ダンジョン時代』と呼ぶべき世の中で、僕、灰城碧はとあるダンジョンに潜り、必死に冒険者を目指していた。
ここは、ステータスを獲得した初心者が最初に挑戦する、簡単な初心者用のダンジョンで、出現する魔物は最弱のスライムしか存在しない。ダンジョンの中は見渡す限りの荒野が広がり、地面は歩きにくく、たまに巨大な岩がぽつんと存在する。
「くそ~………なんでレベルが上がらないんだよぉ」
僕は独り言を呟きながら、地面を這い回るスライムに向けて、小剣を両手で構えた。剣先をプルプルと震わせつつ、体重を乗せてスライムに刺し込むように倒れ込む。息を切らしながら、やっとの思いでスライムを討伐した。
スライムは、ステータスを覚醒したばかりの初心者でも簡単に倒せるが、僕はある事件の後遺症で常に体が衰弱していて、スライム一匹を倒すのも容易ではない。
「はぁ~、はぁ……。よし、今度こそ」
僕は息を切らせ、汗だくになりながらスライムの魔石を回収し、ポケットからステータスカードを取り出す。レベルが上がっていることを祈りながら確認するが、表示された数字は変わらなかった。
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灰城碧 レベル9
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「レベル9のまま……グスッ」
自分のレベルが上がらない現実に、僕は涙をこぼし、ステータスカードを強く握り締める。
(冒険者学校の入学試験まで時間がないのに……。あと少し……あともう少しで、何でレベルが上がらないんだ!)
入学試験はあと二週間後に迫っていた。普段このダンジョンにはほとんど人が来ないが、今日は違っていた。
「やっぱり、ここにいたのか、灰城。まだ冒険者になろうと必死にスライムを倒してんのかよ」
突然現れた、幼馴染の最上玲次が、僕を見つけると、ニヤニヤと笑みを浮かべながら近づいてきた。
玲次は、僕と同じ歳には思えないほど大柄で筋肉質な身体をしており、髪は金髪に染め、鋭い野性的な瞳をしている。肩には僕に見せびらかすように長剣を担ぎ、防具はピカピカで使い込まれているにもかかわらず傷一つない。
そんな自信に満ちた玲次とは対照的に、僕はある事件がきっかけで容姿が変貌し、髪は腰まで伸びた灰白色の白髪。体は瘦せ細り小柄な体格で、目は死んだように濁った赤い瞳。肌は体中の至る所で薬では治せない爛れがあり、応急措置として包帯を巻いて凌いでいる。武器は使い古された刃先の欠けた小剣。防具は傷だらけで留め具もギシギシと音を立て、いつ壊れてもおかしくない。
「お前に冒険者になる資格なんてあるわけないだろ! とっとと諦めて、永遠に俺の荷物持ちになれよ」
「嫌だ! 僕は冒険者になるんだ!」
僕は玲次に向かって絞り出すような声で叫び、必死に抵抗した。
「お前が冒険者を目指すって言ってもよ~。お前はレベル以前に貧弱な身体でスライムすらまともに倒せないじゃねぇか。おまけに使えないハズレ職業が覚醒しちまったんだよなぁ~。ご愁傷様」
玲次に馬鹿にされ、僕は俯いた。何も言い返せなかった。確かにステータスを獲得はしたが、ハズレ職業に覚醒してしまったからだ。
「お前の職業が何なのか、俺にもう一度教えてくれないかなぁ~」
玲次は僕を馬鹿にしながら、わざとらしく耳をほじくる仕草をして問いかけてくる。
「……女騎士」
歯を食いしばって玲次に答える。そう、僕は男でありながら女性限定の職業に覚醒してしまったのだ。
「そうだったなぁ~。今、思い出したぜ。わり~、わり~、本当に笑っちまうぜ」
玲次の悪びれない態度に、僕は歯を食いしばりながら必死に怒りを抑えた。
「俺様は魔法剣士に覚醒して歴代最速のレベル25。そして、貧弱なお前は成長できないレベル9。灰城、これが俺様とお前の絶対的な力の差だ。これを見ろ」
玲次はそう言うと、僕たちの視線の先にある、十メートルはありそうな大きな岩に近づき、剣を振り下ろしながらスキルを叫ぶ。
「スラッシュ!!」
玲次がスキルを叫びながら剣を振ると、刀身が眩い光を放ちながら輝き、切りつけられた大岩は砂埃を噴き上げながら綺麗に縦に割れ、轟音を立てながら左右に倒れる。
「……どうだ? 灰城」
玲次は僕に向き直り、スキルも使えない僕に現実を叩きつけて追い打ちをかける。
僕のステータスカードにもスキルが表示されているが、女性限定の職業のせいで使うことができない。スキルが使える時は黒字で表示されるが、僕のスキル表示はずっと灰色のままだ。
「スキルを使えば、こんなことだって簡単にできるが、スキルも使えない惨めなお前は、せいぜい入学試験が始まるまで無駄な努力を続けるんだな。ア~ハッハッハッ~!」
玲次はそう言って高笑いし、入り口の方へと歩き去っていく。
「畜生、チックショォォォ~~~!!」
僕は膝から崩れ落ち、涙が止まらなかった。