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22--荒野の風

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「わからん……時間と共に記憶が消えていく」

心がどんどんと荒れた海のようになっていくのを感じた──アンサイの感じている希望が消えたような闇夜の世界。俺が、自分の世界が完全に終わったと感じた時に経験した気持ちと同じものだった……聞くべきじゃなかった──アンサイはすっかり動揺していた。

「あ、知ってるかと思っただけだよ、気にしないで……マーセイドは風が教えてくれたって言っていたじゃん。これって普通にあることなのか?」

話が変わったことで、アンサイは気を取り直したようだった。声の調子も何だか良さそうだ。答えを知っているっていうのは、アンサイにとって嬉しくなることなんだろう。

「フリンジワイルドのゾーンというものは、あまり動きがないところじゃ。とは言え、風か……風というものは変化をもたらすもの──これは紛れもない真実じゃ。風が運ぶものとは、そういうことを見聞きした精霊のささやきじゃ。ニュース、噂話、秘密、また聞きしたもの……大小あるじゃろう……風が吹かん時には、フリンジワイルドの精霊たちは大人しくなっておる。ある種のトランス状態じゃな。あのマーセイドだって、ぼうっとどこかを見つめ、あらぬ方向を見て我を忘れる時もあるじゃろう。自我を失くすという恐ろしい状態に陥ろうともな……フリンジワイルドでの時間の経過ははっきりとわかっておらん──自分がどのくらい生きているのか知っている精霊がいるかも疑わしいと、この者は思っておる」

「アンサイもフリンジワイルドの力で、時間だけが淡々と過ぎていったことがあったのか?」

「そうじゃ、残念ながらな……どれだけ長い間、岩の上でじっとしていたのかなんてわからん……しかし時間は取り戻せんのじゃ──この者は今では変化をもたらす者と一緒におるしな」

アンサイは俺に少しだけきつく巻きつき、顔をちょっと寄せた。

「……俺はずいぶん重要な役割なんだな、荷が重いぜ」

「そんなふうに言ったわけではないぞ……この者が心から望んでおるのは、前例なき者の成功じゃ」

「そうだな、わかってるよ……」

俺は深く息を吸い込み、のしかかっている重い気持ちを息と共に吐き出した。

「まずはマーセイドの石を見つけて、俺たちが彼女を代わり映えしない生活から救い出せるってことを証明しないとな。アンサイ、何か計画はあるのか?」

俺はあたりを見回し、ずっと森の中にいたことを確認した。

「木ばっかり、他には何もないね。どこに行ったら珊瑚礁を思い出させるような石が見つかるんだろう?」

「……この先からはこの者の知識が及ばないかもしれん……だが、直感で思うことはある」

「それを教えてくれ」

火を消しながら俺は言った。

「ある現象によって、フリンジワイルドの至るところには隠れたところがある──ダンジョン、そう呼ばれておるところが──」

「ちょ、ちょっと待った」

俺の興奮が頂点に達した。

「そこには罠もあるけど、奥底深ーくにはお宝が眠ってるってやつだよね?」

「そ、そうじゃ……ダンジョンのことを知っていたのか? ダンジョンがどんなものか、もう人間に広まっておるのかの?」

「うん……子供ならだいたいダンジョンがどんなものか知ってると思うよ」

(子供ならダンジョンズ&ドラゴンズとかPRGで遊んでるだろうし)

「説明が要らんとは楽ちんなことじゃな。それでは進んでいこうではないか、チャンスはダンジョンの中にあるはずじゃ。それかフリンジワイルドの奥へとさらに進むか──今の力でできることをやろう。次のレベルに到達する前にな」

そんな会話をし、火が消えたので、俺は再び歩き始めた。アンサイは戻り道がわかると言ったため、マーセイドのゾーンに戻れなくなるなんて心配はあまりなかった。

「まずはダンジョンを見つけないとな──何か知っていることがあるのか?」

「残念じゃが、何もわかっとらん」

「よし、じゃあ昔ながらのやり方を試すしかないな……あのさ、ところで、砂漠のゾーンでボスに勝ったら何が起こったんだ?」

「この者もよくわからんが、ボスに簡単に勝てるようなレベルには到達しとらんじゃろう。もしも前例なき者があいつを従属したいと言うなら、レベル10になってから挑むのが賢明じゃな」

「わかったよ、早く倒し──」

「やぁぁああああー!」

甲高い叫び声が辺りに響いた。ここに来てから聞いたこともないような高い声、しかも怒ったように叫んでいる。アンサイと俺は同時にお互いを見た。ゴブラも、俺の髪をつたい目の前に顔を出してきた。そうだ、まだゴブラは外で遊ばせたままだったのだ。

「アンサイ、ちょっと見てこないか!」

「この者も気になっておる。急ぐぞ」

俺たちの休憩時間はこうして終わった。フリンジワイルドの奥地へと向かって、俺たちは駆け出した。


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