19--自分の勝ちとでも言いたそうな顔をしているじゃないか
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俺が彼女の仲間を攻撃したせいか、彼女は気が立っているようだった。俺もまたよくわからないことに巻き込まれたせいで、動揺していた。俺は牙を瞬時に確認した──彼女は牙が常に俺を中心としているのに気づいていなかった。牙の向きを彼女に合わせ、これでもかとヤケクソで攻撃を怒涛のように繰り返した。彼女の体に攻撃が当たる度に彼女の顔を見ると、口は開いたまま、そして俺から離れるまで、白目は向きっぱなしになっていた。
俺たちはそのまま底へと落ちていっていた。精霊は気を失っていたが、手は固く握り締められていた。俺は手の甲を見つめ、彼女を捕まえる準備をした──
すると突然水が動き始め、白い一筋の光が入り込み、俺は何も見えなくなった。泡が俺の周りを囲み始め、上へと押し上げられるような確かな感覚を感じた。
「ぶはぁ!」
水面に上がると同時に息を思い切り吸い込むと、身体中に恐ろしいくらいの冷たさが駆け抜けた。
目はまだよく見えていなかったけれども、何かの手が俺の身体をつかんだ感覚はあった。その指が俺の上半身を抱き抱えると、まるでボールのように地面に放り投げられた。
地面に叩きつけられ、ゴロゴロと転がり、あと少しで他の池に落っこちるところだった。
これまで生きてきた中で一番というくらいに、俺の息は上がっていたが、しばらくすると視界がクリアになってきて、水位が上がってきている池の前にいるアンサイとゴブラが見えた。
(ちくしょう──)
俺は自力で立ち上がり、剣を手にしたまま、池に急いで戻った。
「邪魔をするのはどなたかしら──」
水柱のようになった水の後ろから、周囲にとどろく声が響いた。
一瞬遅かった。俺はすでに飛び上がり、水柱に向かい剣を振りかざしていたのだから。
大きな手が剣の行手を阻み、つかんだ──その瞬間、重力なんかないみたいに、俺の体は宙に浮かんだ。
「前例なき者! もう止めじゃ! やりすぎじゃ──」
水がカーテンのよう左右に分かれると、紫の触手のような髪をした青白い顔が半分だけ見えた。金色に輝く目は軽蔑のまなざしで俺を見続けている。俺も負けじとギロリとにらみつけた。
彼女の手から逃げようと俺は牙を配置させた。彼女はどうやら俺の攻撃をこれっぽっちも予想してなかったらしい。目を丸くした彼女に向かい、俺はニヤリと笑うと、彼女に向けて攻撃をしかけた──
「くそ、なんなんだよ!」
しかし、俺が狙うところすべてに、透明な水の円盤のようなものが現れ、牙が撃ったショットはことごとく跳ね返されていく。撃ち込んでも撃ち込んでも、他の円盤に当たるだけだ。攻撃を仕掛けている間に跳ね返された弾は15個。俺の周りを飛び交っている弾が、最終的にどこに向かうのか──言われなくてもわかったような気がした。
水のカーテンがすべて開かれた時、そこにいる精霊は姿を表した。
(自分の勝ちとでも言いたそうな顔をしているじゃないか)
その自信に満ちた美しい女性は、きらめく金銀の宝飾品を身にまとい、気高い眼差しをしていた。跳ね返された15の弾が俺を次々に襲うことがなければ、俺はぼーっと彼女に見惚れたままだったろう。
俺は意識をどうにか保ってはいたが、池のふちギリギリまで追い込められていた。跳ね返ってくる弾は威力を増していたのだ。
「池の偉大なる精霊よ、我々の不躾をお許しくだされ」
アンサイは大きな声で懇願し、小さくなったゴブラは俺の元に駆け寄った。
「あなた様と話をさせてはくれまいか」
「まぁ、小さな白ヘビでは? こちらに近づいてきてくださいますか?」
その精霊は答えた。
カーテンの後ろから、そこに隠れていた魅惑的な精霊が姿を見せた。月の光に照らされた海の色をした青い肌、夜空に浮かぶ星たちのような宝飾品を身にまとった女性だ。しかし、彼女の下半身は水に浸かったまま、そしてその上半身は一階建ての家くらいの高さがある。俺の上半身が挟み込まれるくらいの大きさをした胸には、銀色のビキニ以外はほぼ身につけていなかったが、ビキニで隠せている部分なんてほんの一部だけだった。
俺の視界にはもう彼女しか入っていなかった。
彼女の引き締まった腹筋、胸の深い谷間、そしてネックレスに飾られた首。さらに視線を上にやると、深海の色をした唇、きらめく金色の点が三つ入っている頬、金色の美しい目を縁取る、濡れたような長いまつ毛。
はっきり言ってしまうと──彼女の御姿を拝めたおかげで、意識がほんの少し保てていたのかもしれない。
彼女は触手のような髪をふわりと振り払い、視線の先を俺からアンサイへと変えた。
「私の仲間を痛めつけてくれましたね──」
「お前さんの方ではやつを水底へと引きずり込んでくれたではないか」
アンサイは言い返した。
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