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17--マジで楽なモードで人生を生きてるって感じだよ!

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さぁ、レッスンの始まりだ。数々の小さなゾーンを渡り歩いてきたアンサイと俺の力の試し時だ。俺には気づいたことがある。いろいろなタイプの精霊を仲間にしておくと、楽に攻略できるゾーンもある。ゾーンによっては俺たちが力を発揮できないようにするデバフが加えられたり、そこを歩き回るだけでもしんどくて大変だったりすることもある。


けれど、例えば俺たちが暗黒属性を持つ精霊を快く受け入れてくれそうなゾーンを行く場合、仲間であるちびっ子ゴブリンが手助けしてくれる。こいつは暗黒属性を持っているからね。


もしもこれがゲームだとすると、ゾーンを進むには、そこに相性の良いパーティの仲間を連れていく必要がある。こんなことを考えているうちに、他にも気づいたことがある。バリアのようなものがあるゾーンもいくつかあり、そこに入るには十分なレベルに到達していないといけない。これってまるでゲームそのものだ。


アンサイが口を酸っぱくして言ってきたことがある。有望者は仲間にする精霊の属性には注意しなければならないと。例えば、暗黒属性の精霊ばかりを仲間にしているやつが、光属性の精霊を一体仲間にしたとする。すると、有望者を含め元々いたやつと新しい精霊はうまくやっていくことができない。なぜなら、有望者自身が暗黒属性に馴染んでしまっていて、光属性の精霊とは衝突してしまうからだ。こうなってしまうと、どちらの属性の精霊も、永遠に完全なポテンシャルを発揮することができなくなるという。


もしもすべての属性を集めたいとなると、ちゃんと考えた上で調整することが必要になる。とは言え、ひとつの属性だけを集めると、その属性に関連した能力を高めることができるという利点もある。


しかし、アンサイは、第一の階層のこの段階で、ひとつの属性ばかりを集めることは避けるべきだと強く思っている。


***


フリンジワイルドの奥地へとひたすら進んでいる道の途中で、アンサイはこう言った。

「前例なき者よ、仲間にした精霊を長い時間外に出しておく時は気をつけるのじゃ……」

アンサイはかわいいちびっ子ゴブリンのことを言っていた。ゴブラと名付けられ、俺の頭の上に乗っている。

「大丈夫だって、アンサイ。見てみろ、幸せそうじゃないか。俺の髪で遊んでるんだぜ。そっとしといてやれよ」

「問題はお前さんの体力じゃ。そいつを外に出しておくだけで、お前さんの体力は削られていく。確かにこの者は、仲間にした精霊をしばらく外に出したままにしておく練習をしろとは言ったが、お前さんはそいつを外に出しているだけではなく、小さくしたままにもしているんじゃ──」

「つまりどういうことなんだよ、アンサイ」

「あのな、前例なき者、お前さんはいつもよりもずっと速いスピードで体力を消耗しているんじゃ。何かあった時のためにも、体力は必要なのじゃぞ」

「疲れたら元に戻すよ」

「その時は手遅れかもしれん」

「そんなことないって。俺は自分の限界をわかってるから。ちょっとぐらい疲れてたって数時間は走れるよ」

「……ならよろしい」

アンサイは仕方がない、という感じで答えた。

「お前さんは体力的には優れとるからの、余計なヴィタイを使わんでも大丈夫じゃろう。俊敏性も大したもんじゃ。なぜそうなったのか、理由を聞いてもよろしいかな?」

「昨日のこと? 俺、ここに来る前はさ、24時間敵に命を狙われてるみたいなところで生きてたんだよ。残飯となけなしの水を漁って、感染の痛みに四六時中苦しめられてさ。そんな状態でも、生きたいという思いは消えなかった。俺たちを襲うモンスターのほとんどは脳みそなんかなさそうなやつらばっかでね。そいつらは本能のまま俺たちを襲ってくるけど動きは鈍い、だからやつらの視界に入るのをわざと待って、ギリギリでかわすってのがよくある戦法なんだ。そこでやつらが命でも落としたらラッキーって……つまり、足が速かったら、裏をかいてやることができるんだ……やつらがバカで本当に助かったよ」

「感染の痛みによってお前さんが不利になることはなかったのか?」

「うーん……ないね……どっちかって言うと、思考をクリアにしてくれたかな。呼吸するのもしんどいくらいにもなるけど、失敗する恐怖みたいなものとか断ち切ってくれてたよ。集中力を高めてくれてたんだよね──とは言え、人生をとんでもないくらいに大変なものにもしてくれてたけど」

「それで、今は痛んだりせんのか?」

「全然ナシ! マジで楽なモードで人生を生きてるって感じだよ!」

「この者は幸運じゃな、生か死を問われるような経験をした者と出会えたんじゃから……だがな、気を抜くでないぞ。気はつけておいた方がいい」

「そうだね、注意はしとく。俺たちは運命共同体──忘れないでおくよ」

一歩進むと雰囲気は一変した。空気がひんやりとし、周囲は青みがかった色合いを帯びたものになり、木の根元から伸びている花々は光を放っていた。俺たちの頭上にあるキラキラした点は星だろう。また新しいゾーンに入ったに違いない、しかし、今回はいつもよりも何だか変な感じがした。


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