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13--どうやって使うのかわかったぞ!

俺たちはこれまでとは違う森のゾーンにいた。ゴブリンのような姿をした精霊が六体、俺たちを取り囲むように走り回っている。黄色く光る奴らの目、黒いつなぎの服と革の帽子、そして手には斧――どうやって斧を手に入れたって? アンサイが言うには、生まれた時から持っていたんじゃないかって話だ。

「ちくしょう、何なんだよ!」

俺はギリギリのところでゴブリンを避けながら声を荒げた。

「動きが速いぜ!」

やつらの速さについていけずに、俺はすでにダメージを何度か受けていた――やつらは繰り返しダメージを与え、最終的に俺たちをミンチにしてやろうと目論んでいるようだった。

「前例なき者、心許なく腹を立てているのう」

「あいつらだけじゃないぞ、ここには他にも俺を懲らしめたいやつがいるみたいだな!」

俺のふくらはぎに噛み付いているゴブリンに向かって怒鳴りつけた。

「認めろよ、アンサイ、俺に仕返ししてるんだろ!」

「何を言っとるんじゃ、この者はただ単にお前さんの能力をもっと知りたかっただけじゃ。お前さんはどうやら、こいつらみたいにすばしっこくて連携した動きを取るのが好きな、ちびっこい敵とはやり合ったことがないようだからの」

「わかってるじゃん、アンサイ!」

アボミネーションのことを思い出した――小さいアボミネーションたち、例えば虫や憎たらしいチワワみたいな、今思い出しても反吐が出そうなやつらも時々群れで現れた。しかし、そいつらは連携した動きを取ることはなかった。捕まってしまえば殺されるのは間違いないが、やつらを撒くのは難しいことではなかった。だからこそ、このゴブリンたちは足が速いだけじゃなく頭の回転も速いってことがよくわかる。のろのろと動くミイラや大きな手足をした巨大ミイラよりも強い部類に入るのだろう。

「アンサイ、考えていたよりもダメージを受けてる――逃げるかどうか、判断してくれ!」

「やつらにずいぶんと手こずっているようじゃの……しかし、心配せんでいい――お前さんの今のレベルからすると、たいしたダメージではない」

「おいおい、冗談じゃないんだぜ、アンサイ!」

俺は大声を出して笑った。

「俺が痛めつけられるのを見たいってのか」

一匹のゴブリンが近づいてくるのが見えたので、顔を叩いてやった。そいつが目をこすりながら地面に倒れ込むと、他の五匹は飛び上がり、倒れたゴブリンを茂みの方へ引きずって行った。茂みの中からはやつらがぺちゃくちゃと何やらしゃべっているのが聞こえてきた――悪だくみしているんだろう。

「アンサイ、どうしようか?」

「前例なき者よ、ビリヤードを想像するのじゃ。その武器の誕生に最も影響を与えているのは、ビリヤードの動きじゃ」

「ビリヤードでどうやって戦えって……まぁ、やってみるしかないか!」

これはやつらが連携して動き出す前のチャンスだ。俺はビリヤード台を想像した。そこには、キューを持つ俺がいる。台の上には球がゲーム前のように配置されている。俺は白い手球をキューで突く。俺の手も同じように動かした。

すると突然、大きなうねりを感じた。まるで電流が流れたかのようだった。骨のようになっていたパーツが動き出し、バラバラと離れ始め、俺の目の前に浮かんだ。

俺は史上最大の笑顔を浮かべた。

「おーっしゃあ! やったぜ! どうやって使うのかわかったぞ!」

剣の柄を後ろに引き、ビリヤードの球が揃えられるのを再び想像した。すると浮かび上がったパーツが動き出し、再び剣に戻る。ゴブリンたちがまた飛び跳ねながら出てきたので、俺はビリヤード台の上で球がショットされるのを想像し、パーツを放った。今回は、突かれた球の位置を想像したので、パーツも同じ位置へと動いていった。パーツは俺が想像した通りの位置にいたが、これでは完璧とは言えない――パーツがそこに動いただけでは、どうにもならないのだ。

(パーツが動くだけではなく、攻撃を放てたら――どんなふうになるんだ――)

そう思った瞬間、俺の考えが反映したかのように、パーツのひとつからまるで拳銃のようにエネルギーの弾が撃たれた。

「よし! やったぞ! いけるぞ!」

ゴブリンたちは残像がわずかに見えるくらいのとてつもない速さでそこらを走り回っていた。パーツの位置を変えるため、いったんパーツを元に戻し、また放ってやった。

すると、ひとつの影が俺のほうに向かってきたので、ナンバー6から弾を撃った。何が詰まっているのかわからないけれど。

「キィィィィー」

小さなゴブリンが悲鳴を上げた。

他のやつらはノロマにもまだ攻撃を続けていた。俺はあらゆるパーツから休むことなくエネルギー弾をやつら全員に向かって撃ち続けた。今度は俺の反撃の番だ、やられた分はやり返してやろう。パーツはおもしろいように俺と一緒に動いてきた。俺か剣が真ん中となるように、俺が一歩動けば、俺が動いたのと同じ方向にパーツはきちんと一歩分動いてくれる。

「前例なき者、パーツを戻さないことには位置を変えることはできんのか?」

俺は手球がナンバー4のパーツに当たるのを想像し、剣の柄をキューのようにして突いた。パーツの動きはほぼ俺が想像した通りに動いた――まるでビリヤードの球のように――しかし、思っていたよりも遠くへ行ってしまう。もっとなめらかに動くようにしたつもりだったが、想像したようには動いてくれなかった。

「できそうにもない!」

ゴブリンが戻ってきた時に一気に反撃を喰らわすため、俺はパーツを戻し配置し直した。

「俺がこの武器を使えるのは、ビリヤードを想像した時だけだ。だけどさ、そっから弾も撃てるんだぜ――俺にはもうわかんないよ?!」

パーツを戻したのは、俺の後ろに輪っかの形を作るためだ。動きを揃え始めたゴブリンに向かってすべてのパーツからエネルギー弾を撃つと、ひとつ残らず命中した。

「あいつらは我々のスタミナをエネルギー供給源にしておる。ということは、前例なき者が底なし沼のようにスタミナを持っていることを考えれば、この者はまだ心配するようなことなどないと思うがの」

「それならいいけど……いや、それどころじゃない! たった今良い方法が思いついたぞ」

俺はパーツを戻し、アンサイを剣として握っているのを想像した。俺が剣を振れば、アンサイが襲いかかるといったように。なんと武器は俺の想像したように動いた。剣を振るとパーツは白いエネルギーでできたヒモのようなものによって繋がれ、伸びるようになったのだ。

剣を一振りすると、パーツは一匹のゴブリンの頭に巻き付いた。それを見た仲間たちはおびえだした。

アンサイが俺の体に巻きつき、首を締め付けているのを想像した。すると武器も同じように動き、ゴブリンの首に巻きついて締め付け始め、ついにその首をポロッと落としてしまった。

「ビリヤードは俺から、ヘビはアンサイから、ってとこだな」

「なるほど……まるで大蛇のようじゃ」

俺は武器からヴィタイを吸収し、足がすくんで動けないゴブリンたちの周りにパーツを放ち、エネルギー弾をこれでもかと撃ち込んだ。単なる思いつきだったが、こいつらをぶっ飛ばしてやることができると思ったのだ。

「我々はパーツを回転させて打ち込む方向を変えることができるからな。わかっておるな、前例なき者? 回転させるのはこの者がやるから任せておけ」


「助かるよ。でも――一匹か二匹、精霊を捕またほうがいいんじゃないのか? 確か、精霊と契約することが生き延びる道、とかじゃなかったっけ?」

「その通りじゃ」

攻撃を受けて身動きを取れなくなっているゴブリンを尻目に、アンサイは答えた。

「しかしな、躍起になってはいかん。我々は先々のことを考えておかなければ。旅は序盤じゃが、我々が注意せねばならん制限や配慮しなきゃならんことがあるのじゃ。そこらにいる下位の精霊をうじゃうじゃと早急に服従させるなんてことは、愚かな青二才のすること。そういうことをするやつらは気にするな、どうせ愚行がたたって後でどうしようもできなくなり、のたうち回る。この者はそうはなりたくないからな、早いうちに下位の精霊ばかりを集めるのはやめておきたい」


「わかったよ……じゃあ今は何したらいい?」

「下位の精霊を一匹服従させれば良い」


お読みくださりありがとうございます。


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