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2.迷子


これは、数年前に体験した話。


私は、大学を卒業して、ある小売業に就職した。

就職した会社は、転勤があるところで、私は半年間の研修期間を終えて、地元を離れて××県の○○市の店に配属されることとなった。


慣れない土地、慣れない仕事、周りには家族も友達もいない。

そんな状況のなかで、私は寂しさを紛らわし早くこの地に慣れるために休みの日は、家の近所を散歩したり近くのショッピングモールに行ったり、なるべく外にでるようにしていた。


そんな風に過ごしあっという間に1年が経ったある休日。

こちらでの暮らしにも慣れて、近所は大体把握できたから少し遠くまで足を運んでみようと思い立ち、散歩にでることにした。


車も持っておらず、自転車も買っていなかった私の移動手段は徒歩のみ。昼頃に家を出て、目的を決めずに歩き出す。


その日は良い天気で、ゆっくりなにも考えずに歩いていた。歩き始めてしばらくして、ふと、大通りにある白い花束が目についた。あぁ、事故があったんだ…そう思ったが、すぐにそちらへの意識はなくり歩みを再開した。


1時間位経って、お腹がすいてきたので、近くにあったショッピングセンターに入り食事を済ませた。


一休みして、もう少し歩こうと思って、また散歩を再開した。この先は行ったことがないなぁと思いながら思うままに進み、細い道を曲がってみたりしながら歩みを進める。


少しして、本屋を見つけた。

欲しい新刊がでているかも知れないと、店に入り店内を物色する。しばらくして、満足した私は店からでる。


外に出ると、暗くはなっていないものの、陽が傾き始める頃に差し掛かり始めたので、私は家に帰ることにした。


だが、知らない道をなにも考えずに選んでいた影響で、ここからどうやって家に帰るかわからない……。


家から2時間近く離れた場所まで歩いていたので勘だけを頼りに帰るのは難しいと思い、地図アプリを開いて帰り道を検索することにした。


スマホで音楽を聴きながら、地図アプリの案内通りに歩き始める。歩き始めて、40分ほど経ち陽が沈み始め辺りが薄暗くなってきた。


しまった、散歩しすぎたなぁ。

片道2時間弱歩いているのだから、帰りも当然2時間弱かかる。残り1時間ちょっとは歩かなくてはいけない計算だ。

だが、まだ自分の見慣れた道に出ない。

完全に暗くなる前に帰りたかったが難しそうだと思いながら歩みを進めていく。


なんでこんなに知らない道しかないんだ…もう少し進んで大通りの道に出れば見覚えがあるとこにでるのか?あー、ルート選択を間違えたなー…なんて考えながら進んでいく。


そうしてるうちに辺りは街灯の少ない細い道になっていく、暗くなってきたことで心細くなり、このルート案内は本当にあってるのか?不安になりと地図アプリを再度読み込みしてみたりルート確認してみるが、現在地は正しくその道を通るように指示されている…。


聴いている音楽を明るい曲調のものにして、

不安を押さえつつも、歩みを進める…。


少し経って、ルート案内上は次の角を曲がったらそこからいつも通る大通りにつながる道順となっていたので、やっと知っている道にでる!と嬉しくなって少し早歩きでその道を進む。


角について、やっと大通りに!と曲がった瞬間、私は呆然とした。


曲がった先は道ではなく、草が生い茂る空き地だったのだ。

地図アプリでは、確かに道になっている。


どうして?

ドッと冷や汗がでる。


草の生い茂り具合や、辺りの様子からしておおよそ数年は確実に放置されているであろう空き地だ。

もしかして、本当は道になるはずだったが開発が進まず放置された場所が間違って表示されたのか?

それともただのバグか?


わからない。

辺りはすっかり暗くなり不安になっている、私は焦って地図アプリを閉じて再度検索しようとする。


ところが、地図アプリを閉じることができないではないか。


ルート変更もできず、アプリを消すこともできない

それどころかスマホのホーム画面にも飛べない。


何がどうなってるんだ、どうして?どうして?と焦る気持ちばかりでてくる。


次の瞬間。


バーーーンッと大きな音が響いた。

イヤホンで聴いていたはずの音楽が急にスマホ本体から大音量で流れ始めたのだ。


私はさらに焦る、音を消そうとしても消えない。

どうして?イヤホンは繋がってるのに本体から音が鳴っているのも意味がわからないし、おかしな挙動をするスマホに恐怖と苛立ちと焦りばかりが募る。


ここに居てはいけない。

そんな気持ちが沸々と湧き出てきて、とにかく移動しようと辺りを見回す。

引き返そうにも、地図アプリは動かないので違う道を見つけなければ、焦りながら暗くなった辺りを確認していく。


そして、空き地の向かい側に大通りにつながる小道を見つけた。空き地と道を繋ぐところは大きく窪んでいたが、空き地を突っ切りそのを乗り越えれば、出れないことはないだろう。

本当なら足を踏み入れずに引き返したいが、とにもかくにも、ひと気のあるほうへ…知っている道がある方へ出たかった。


私は音楽が鳴りっぱなしのスマホを握りしめ、覚悟を決めて走り出す。


草が邪魔だ、舗装もされてない…

だけど、ここから出なければ。


力の限り走る。


距離にしたら50mほどだろうが、その時の私にはそのわずかな距離が永遠に思えるくらい長く感じた。やっとの思いで空き地を突っ切ると舗装された細い道へたどり着いた。


途端に、スマホから流れていた音楽が止まった。

ビクッとしつつ、私は後ろを振り返ることはせず、ひたすら光がある方へ歩く。


少しして、見慣れた大通りの道に出た。


車がいる…、人が歩いてる…!

ただそれだけなのに、私はその場に座り込んでしまうんじゃないかと思うくらいに安心して力が抜けた。


スマホを見ると

地図アプリは強制終了しており、普通のホーム画面になっていた。

いくつか操作してみたが、普通に使える。


なんだったんだ…

そう思いながらも、少し小走りで家に帰った。


ただのスマホのバグだったのかもしれない、たまたまが重なっただけかもしれない。だが狐に化かされたような出来事に怖くなり、その日はお風呂に塩を入れて浸かり、早めに寝た。



その後、同じようなことが起こることはなかったが

その地に住んでいる間、私は空き地があった方へ散歩にいくことは無かった。




おわり。



これも一部フィクションを混ぜてますが、

90%くらい私が体験した実話です。

実話なのでオチはないです。

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