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ニセモノ花嫁は真実の嘘をつく  作者: シェリンカ
第七章
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「それで? 私の目を盗んで部屋を抜け出し、こっそり会いに行ったという相手が、その男ですか?」


 厭味たっぷりにドナテーノに問いかけられ、リリーアは体を縮こまらせながら頷いた。


「そうです……すみません……」


 ドナテーノはリリーアの部屋で、リリーアの座る椅子とフィオレンツィオの座る椅子の間を、ゆっくりとした歩調で何度も行き来しているのだが、フィオレンツィオもリリーアと同じように、恐縮した顔をしている。


「悪い、ドナテーノ」


「悪いじゃすまないんですよ!」


 ドナテーノがフィオレンツィオの前で足を止め、シャツの袖を捲りあげているフィオレンツィオの腕に、傷薬を塗り始めた。


「大きな怪我がなかったからよかったようなものの……護衛もなしに二人きりで出かけるなんて……!」


 憤懣やるかたなしといったふうのドナテーノに、フィオレンツィオは笑いかける。


「お前を呼びに行ってたら間に合わないと思ったんだ……」

「もっとご自分の立場を自覚してください!」


 叫んだドナテーノが、その勢いのまま、くるりとリリーアへ向き直る。


「あなたもですよ!」

「ごめんなさいっ!」


 フィオレンツィオは悪びれもせず笑っているばかりだが、リリーアは何度もぺこぺこと頭を下げる。

 その真摯な姿に、ドナテーノもようやく溜飲が降りたらしい。


 今度は、二人とはまた離れた場所にある椅子に、後ろ手に縛られて座っているルカへ、冴えた目を向けた。


「それで……あなたは何者です?」

「…………」


 ルカはドナテーノの質問に答えるどころか、彼を見もしない。


 湖からの帰路も同じだった。

 フィオレンツィオが様々なことを尋ねても、ルカは一切口を開かなかった。

 唯一声を発したのが、実は記憶を失ったのだとリリーアがうちあけた時で、「なんだよ、それ……」と驚きの呟きを零した後、絶句してしまった。


 ルカならば、おそらく本物のリリーアについても知っているだろうに、これでは教えてもらえそうにない。


「どうします?」

「そうだな……」


 ドナテーノとフィオレンツィオは相談しあった末、ルカが何か隠し持っていないかをよく確認して、少しの時間、リリーアと二人きりにすることにした。


「俺たちがいたらできない話もあるだろうから……」


 フィオレンツィオはルカに笑顔を向けながらも、リリーアには念を押す。


「何かあったらすぐに呼んでくれ。扉の外にいる。いいな?」

「はい」


 二人が部屋から出ていくのを見送り、リリーアはルカへ近づいた。

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