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ニセモノ花嫁は真実の嘘をつく  作者: シェリンカ
第六章
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「なるほど……」


 リリーアの話に耳を傾けながら、フィオレンツィオはすぐに、馬に乗る準備を始めた。

 鞍を置いて手綱を付け、厩舎の外へ連れ出しながら相槌を打ってくれるので、いいのだろうかと思いながらも、リリーアは馬上に押し上げてもらい、飛び乗ったフィオレンツィオと共に城の通用門へ向かう。


「黙っていてすみませんでした……」


 湖の畔で出会った男の話をし、謝ると、フィオレンツィオは軽快に馬を歩ませながら答える。


「いや、話してくれてありがとう……おかげで、騎士団の連中が交代で休めそうだ……」

「え……?」


 どういう意味だろうかとふり返るリリーアに、着せた自分の外套のフードを深く下げ、顔が見えないようにしながら、フィオレンツィオは、城内を行き来している騎士たちに次々と声をかける。


「どうやら、賊の目的は王族方の暗殺ではないようだ……複数犯でもなく、おそらく単独の犯行……俺が行方を追うから、お前たちは通常の警備に戻っていい……もともと夜警の任になかった者は解散」

「はっ!」


 バラバラと走り去っていく騎士たちの中には、自分もお供すると申し出る者もいたが、フィオレンツィオが笑顔で断った。


「逃げた先に確証があるわけじゃない。少し見回って、俺もすぐに帰ってくる……それとも、俺じゃ頼りないか?」

「とんでもありませんっ!」


 騎士は背筋を伸ばして踵を打ち鳴らし、胸に手を当てて、フィオレンツィオに頭を垂れた。


「お気をつけて!」

「ああ」


 橋を渡って城外へ出ると、徐々に馬の走る速度を上げていくフィオレンツィオに、リリーアは今さらながら問いかける。


「一緒に行ってくださるのですか?」


 フィオレンツィオの声は愉快そうに弾む。


「きみを守るのは俺の役目だからな」


 それは、コンスタンツェ姫の護衛という意味なのかと思っていると、思いがけない説明が足される。


「姫君の身代わりをしてもらう代わりに、きみの素性を調べる約束だった……手がかりがなく、すっかり頓挫していて申し訳ない限りだが……そのメモを送ってきた男が、きみの正体を知っていそうだというなら、もちろん俺が、確認につきあう」

「…………ありがとうございます」


 馬は王都を抜けて、街道へ出ようというところで、フィオレンツィオはますます速度を上げる。


「ひょっとすると、これでお別れになるかもしれないし……」

「え……?」


 なにやら不穏な言葉が聞こえたような気がして、リリーアは聞き返したが、フィオレンツィオがもう一度言い直してくれることはなかった。

 二人を乗せた白馬は、月明りの下、あの湖のある丘までの道を、疾走した。


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