表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Load of Store 生産職で魔王は倒せますか?  作者: 漆黒の炎
The Love of One’s Life
25/32

君に伝えたい

 私、西園寺陽菜は、出逢った瞬間から、鬼宮秀人を愛しています。

 

 秀人は幼い頃に私を助けた白馬の王子様。それだけではなく彼を最初に見た時に、心の奥底から私の情熱が溢れ出していた気もします。きっとこれが一目ぼれです。


 ですが、私は本心を悟られないように、彼に全く興味のない役を演じてしまいました。それが日に日にエスカレートしてとうとう私は拗らせました。


 愛しているのに、真逆の態度をとってしまうのは、とても辛くて悲しい毎日でした。もう1人の自分が秀人に冷たく接している間に、私は私の中で想いを募らせていったのです。


 今考えたら、もっと素直になるなり、可愛らしい女の子を演じれば良かったと後悔しています。


 

 そんな私が秀人を心配して、異世界について行くという素直な決断をしました。異世界に着いて来た理由は、秀人と遠く離れてしまうかも知れない不安と、私の直感が異世界に行くべきだと判断したからです。


 

 しかし、異世界に行くと、悪い予感のひとつが的中しました。案の定、秀人は同世代のお淑やかな、私とは正反対の美少女と距離を縮めています。


 平静を装っていますが、心が張り裂けそうです。『たった一人だけの友達』そのポジションは私だけのものだったのに、これからはシェアしなければいけません。異世界に来てたった数分で、私の唯一の肩書き(きぼう)が消失しました。私には素直になれない自分を納得させる要素がもうありません。


 不安と焦りが態度に現れないよう必死で楽しいを演じました。

 

 本当はドラマが始まる来月までは、私の気持ちを伝えるのを我慢していました。


 でも、もうその余裕はありません。もし仮に秀人が愛する人を見つけてしまったら、私は秀人を友達として応援する事でしょう。せめてそうなる前に、この想いだけは打ち明けたいのです。


 このまま、私の想いを勘違いさせたまま、振られもせずに、失恋するのだけは絶対に嫌です。


「ユノさんはなんだか自分と似ている気がします。それにユノさんと話すととても楽しいです。俺には同世代の友達がいませんから、こういうのは憧れていました。」


「げほっ。」


  思わず吹き出してしまいました。何それ。私はもう友達とすら思って貰えていないの。確かにそっけない態度や乱暴な言葉を多用していた私が悪い。けど、好き過ぎて逆に意識しちゃうんだから仕方ないじゃない。


 先程の問題発言を気にもせずに、秀人はユノさんと楽しそうに笑っています。好きな人が楽しそうにしているのだから、本当は見守ってあげたいです。ですが、私の頭とは別に心が叫んでいます。私じゃない女の子とそんなに仲良くしないで。きっと秀人がユノさんを好きになるのはもう時間の問題です。


 ……私の想像を遥かに超えたスピードで秀人の春がやって来ました。


「ユノさん。俺も最初にあなたに出逢えて、この国が好きになりましたよ。これからも仲良くして下さいね。」


「げほっ。」


 また吹き出してしまいました。秀人は今なんと? ユノさんの事を好きだと言いませんでしたか?


 もう限界です。今、私の気持ちを伝えるしかありません。


 ドラマのヒロインを秀人を想って演じた事だけ伝えれば、それだけで秀人は理解するでしょう。


  モデルだって役者の道だって、私の行動は全て秀人の気をひく為だけに選んだ道です。それがどんなに茨の道だったとしても、私はプライドを捨ててでも、這いつくばってでも挑戦していたと思いました。実際にドラマ撮影前、演出家寺本次郎さんの特訓はとても厳しく、何度も人格を否定され続けてきました。


 そのおかげで良いドラマに繋がったと思います。私の想いは、あのドラマさえ見てもらえば、秀人にも届くと確信しています。


「ねー。秀人。この手紙をあとで読んでくれない。大切な事が書いてあるの。……でも、私がいる時に見ちゃ駄目よ。」

 

 泣きたい。私はまたやってしまいました。なんでそれを今すぐに見てって言えないんだろう。


 ユノさんを好きになった後では、もう遅いのに。

 

 そして私はまた演技を続けます。目の前の異世界が新鮮で、それを楽しんでいる演技です。私がこの旅について来て良かったのだと秀人にはせめてそう思って貰いたい。なんだか、そうしなければいけない気がします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ